リヒャルト・シュトラウスが作曲し、1935年に初演された3幕もののオペラ。
原作は、イギリスの劇作家ベン・ジョンソンの同名の喜劇の戯曲。
それをシュテファン・ツヴァイクがこのオペラ用に内容をやや変えて脚本にした。
シュトラウスは、長年に渡りホフマンスタールとコンビを組んでいたが、ホフマンスタールが1929年に亡くなってしまい、当時売り出し中だったツヴァイクを指名した。
しかし、当時のナチス政権はユダヤ人だったツヴァイクの名前をポスターから外そうとして、シュトラウスは猛抗議の末にその名前を元に戻させた。
シュトラウスはそれまでナチスとは良好な関係を保っていたが、この事件をきっかけに、その関係は悪化していったと言われている。
ストーリーは、ある事故をきっかけに、音に敏感になってしまったモロズス卿に、出入りの理髪師が相続金を目当てに”無口な女”を嫁にすることを誘いかける・・・というコメディ。
シュトラウスらしく、様々なパロディで構成されているオペラ。
女性は話好きというのが定番。なのに題名は”無口な女”。
問題を解決しようとする理髪師は、明らかに『フィガロの結婚』や『セビリアの理髪師』のフィガロのパロディ。
モロズス卿の甥が、自ら所属するオペラ団のメンバーと来訪するが、モロズス卿にとって美しいオペラ歌手の歌声は、単なる騒音。
他にも、シュトラウス自身の作品や、過去の名作からのパロディが満載だ。
しかし、時代はそうした”古き良き”ウィーン文化を受け入れる状況ではなかった。
オペラの上演は1935年の初戦後にほどなく上演禁止となり、ツヴァイクはイギリスに亡命した。
2025年7月、ベルリン国立歌劇場での公演から。指揮はクリスティアン・ティーレマン、モロズス卿にペーター・ローズ、家政婦にイリス・フェルミリオン、理髪師:サミュエル・ハッセルホルン、演奏はベルリン州立歌劇場管弦楽団。