2014年2月23日日曜日

リヒャルト・シュトラウス:オペラ『アラベラ』

リヒャルト・シュトラウスが、1929年から1932年にかけて作曲したオペラ。台本は、ウィーン世紀末を代表する作家、ホフマンスタール。

シュトラウスは、当初、『薔薇の騎士』のようなオペラを目指したが、ホフマンスタールの台本は、少し色合いが違った話だったため、両者の間には、完成までにギクシャクした関係があったという。

そのホフマンスタールは、このオペラの完成を見ることなく、1929年に亡くなってしまった。

ストーリーは、ウィーンの落ち目の伯爵家が、美しい娘を使って復活を願い、紆余曲折がありながら、最後は、男やもめのハンガリーの大地主と結ばれるというもの。

全体的な流れは、『薔薇の騎士』と似ているが、比べてしまうと、やはり『薔薇の騎士』の方が華やかな作品に仕上がっている。

第1幕と第2幕は、世紀末ウィーンの退廃的なウィーン貴族の生活が強調されて、やや興ざめするが、第3幕では、ある事件をきっかけに、一気に愛のテーマが全面に出て、シュトラウスの美しい音楽と相まって、感動的なフィナーレを迎える。

こまかくストーリーを見ていくと、さすが、ホスマンスタール。ウィーン貴族の実態がよく描けている。

主人公の伯爵の美しい娘、アラベラの妹、ズデンカは、いつも男の服装をしていて、自分が恋している男性からは、男と思われているが、この二人は最後には結ばれる。同性愛的な雰囲気が伺える。

落ち目の伯爵家のアラベラは、最後は、ハンガリーの大地主と結ばれるが、これは、オーストリア=ハンガリー帝国を象徴しているのだろう。

『薔薇の騎士』ほどの華やかさはないが、玄人好みのオペラ、といったところだろうか。

2012年5月のウィーン国立歌劇場での公演。指揮は、フランツ・ウェルザー=メスト。

2014年2月15日土曜日

ロッシーニ:オペラ『マティルデ・ディ・シャブラン』

ロッシーニが1821年に作曲した32作目のオペラ。若くして引退したロッシーニの作品の中では、湖上の美人、ランスへの旅などとともに、後期のものに含まれる。

女性嫌いで、粗暴な城主、コッラディーノが、美しい女性マティルデに心を奪われ、最後は、彼女の前に跪く、という、ロッシーニらしい、たわいのないストーリー。

ロッシーによる、場面場面に応じた素晴らしい音楽を、単純に楽しめる。

今から見れば、たわいのないストーリーだが、検閲制度の厳しい時代にあっては、どうしても、このような、当たり障りのない、恋愛もの、になってしまうのだろう。

最後に、暴君を跪かせたマティルデが、その勝利を高らかに歌い上げる。

”女性たちは、勝つために、支配するために生まれてきた!”

ある意味では、どんな政治劇よりも、過激で、真実を含んでいる内容、と言えるのかもしれない。

2012年、イタリアのペーザロでのロッシーニ・オペラ・フェスティバル2012での演奏。

コッラディーノ(テノール)役のフアン・ディエゴ・フローレスは、現在、その甘いマスクと抜群の歌唱力で、最も人気のあるテノール歌手の一人。

チャイコフスキー:オペラ『チェレヴィチキ』

チャイコフスキーが、1885年に作曲したオペラ。一度、1874年に鍛冶屋のヴァクーラとして完成させたオペラを、改作した。

チェレヴィチキとは、舞踏会で履く、豪華な靴のこと。幼なじみのオクサーナから、結婚の条件としてチェレヴィチキを求められたヴァクーラが、それを手に入れ、オクサーナと結婚する、というストーリー。

ゴーゴリの初期の作品、ウクライナ説話集『ディカーニカ近郷夜話』の中の『降誕祭の前夜』という話がベースになっている。

女性の母親が、魔女で、魔法を使い、村中の様々な男達を虜にしていく様子が楽しい。

第3幕では、エカテリーナ女王の宮殿で、美しいバレエと、コサックダンスが登場し、見る物を楽しませる。

第4幕の冒頭で、愛する恋人を待つオクサーナと、彼女の恋人の母親との二重唱の、哀愁を帯びたメロディーが、実に美しい。

文字通り、歌あり、踊りあり。ウクライナの農村の暮らしと、エカテリーナ女帝の宮殿の対比も面白く、エンターテイメントとしての出来が素晴らしい。

しかし、これまでは長く演じられず、知られざるオペラと言われていたという。

2009年11月の英国ロイヤルオペラの公演。

2014年2月10日月曜日

ストラヴィンスキー:バレエ音楽『ペトルーシュカ』

ストラヴィンスキーが、1910年から1911年にかけて作曲したバレエ音楽。はじめは、ピアノ用に構想していた曲だという。

1910年の火の鳥、1913年の春の祭典、という有名な2つの間に挟まれており、過激なその2作に比べると、大人しい音楽になっている。

物語は、魔術師の魔法で命を吹き込まれた、3つの人形。ペトルーシュカ、バレリーナ、ムーア人が、謝肉祭のお祭りで巻き起こす騒動を描いている。

第1部の中の、ロシアの踊り(Dansu Russe)が特に有名。

第3部のバレリーナの踊り(Danse de la Ballerine)のパートにも、印象的なメロディが登場する。

第4部の冒頭の、オーケストラが揃って奏でる音楽も、実に美しい。

主人公の3人の踊り以外にも、農夫やジプシーの踊りの部分もあり、それぞれの音楽が個性的で、オーケストレーションの巧みさと合わさり、聞く者を決して飽きさせない。

ストラヴィンスキーが、バレエ音楽の中で追求しようとしていたことが、よくわかる気がする。

1911年のオリジナル版と、ストラヴィンスキーが古典主義的な音楽を書くようになってからの1947年版がある。

ロリン・マゼール指揮、ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団による、ミュンヘンでの2012年9月の1911年版の演奏。

ラヴェル:ピアノ協奏曲

ラヴェルが、1929年から1931年にかけて作曲した、唯一のピアノ協奏曲。作品としては、最後から2番目となる作品。

第1楽章は、アレグラメンテ(明るく、楽しげに)。何とも不思議な出だしで、一気に聞く物の心を鷲掴みにする。

ジャズのような、ラヴェルの出身、バスクの民族音楽のような、音楽。

ジャズの音楽と、ハープの奏でる幻想的な音楽が交差する。

第2楽章は、アダージョ・アッサイ。雰囲気は一転して、静かな、哀愁に満ちた音楽が続く。

第3楽章は、プレスト。現代音楽らしい、慌ただしい音楽で、一気にフィナーレを迎える。

3つの楽章が、全く違った個性を見せ、魔術師といわれるラヴェルの魅力が詰まった作品。

ピアノはアリス=紗良・オット、ロリン・マゼール指揮、ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団の2012年9月のミュンヘンでの演奏。

フォーレ:組曲『ペレアスとメリザンド』

ガブリエル・フォーレが、1898年に作曲した、戯曲用の音楽。正確には、フォーレは、骨子だけを作曲し、オーケストレーションは、弟子に任せた。

その後、その中から、5つの曲を選んで、組曲として編成した。

4番目のシシリエンヌ(シチリア舞曲)が特に有名。フォーレは、この曲をチェロとピアノの曲としても使っている。

全編、ハープが効果的に使われ、中世の童話の世界を、物悲しい、幻想的な音楽で表現している。

『ペレアスとメリザンド』という物語は、メーテルリンクが書いた戯曲で、中世の架空の国、アルモンドを舞台とした、ペレアスとメリザンドという二人の男女の、悲しい恋の物語。

フォーレのみならず、ドビュッシー、シベリウス、シェーンベルグなどが音楽を作っている。音楽家の創作意欲をかき立てる側面を持っている物語なのだろう。

2012年9月、ロリン・マゼール指揮、ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団のミュンヘンでの演奏。

2014年2月9日日曜日

ショスタコーヴィッチ:交響曲第15番

ショスタコーヴィッチが、1971年に作曲した最後の交響曲。

過去の自分の曲や、ロッシーニのウィリアム・テル、ハイドンの最後の交響曲『ロンドン』、ワーグナーのリングなど、他人の曲を、多く引用している。

第1楽章は、アレグレット。何とも言えない、この慌ただしい音楽は、いかにもショスタコーヴィッチらしい。

第2楽章は、アダージョからラルゴ。第1楽章とはうって変わって、沈鬱な印象で始まる。チェロの物悲しいソロが続く。そして、トランペットが悲しい音楽を奏でる。最後の方は、まるで消え入るような音楽。

第3楽章は、再びアレグレットだが、第1楽章とは、趣は大きく異なる。クラリネットの響きで、ややコミカルに始まる。

第4楽章は、アダージョからアレグレット。壮麗なオーケストレーションもあるが、最後のトライアングルや木琴の規則正しい、しかし寂しい、小さな音で、締めくくられる。

とにかく、複雑な、引用に満ちていて、ある意味で、ショスタコーヴィッチらしい交響曲。もしかしたら、実際の音楽を聴くよりも、楽譜を読んでいる方が、楽しめる交響曲なのかもしれない。

シャルル・デゥトワ指揮、NHK交響楽団の2013年11月の演奏。

ストラヴィンスキー:バレエ音楽『カルタ遊び』

ストラヴィンスキーが、アメリカン・バレエからの依頼で、1936年に作曲したバレエ用の音楽。

翌年の1937年に、ニューヨークのメトロポリタン歌劇場で自らの指揮で初演された。バレエの振り付けは、バランシンが行った。

ポーカーの三番勝負が行われるバレエで、音楽も3つのパート(ラウンド)から成り立っている。火の鳥のような前衛的な音楽ではなく、オーソドックスな内容の音楽。当時、ストラヴィンスキーは、古典的な音楽を中心に作曲していた。

各ラウンドの冒頭には、カードを配る共通の音楽が演奏される。

最後は、ハートとスペードが争い、ハートが勝利する、というストーリーになっている。

ダンサーは、トランプ1枚1枚に扮して、踊りを踊っていく。

シャルル・デゥトワ指揮、NHK交響楽団の2013年11月の演奏。

ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲第2番

ショスタコーヴィチが、ウクライナのヴァイオリニスト、ダヴィット・オイストラフの関連のお祝いに、1967年に作曲した、2番目のヴァイオリン協奏曲。

すでに、スターリンは亡くなっており、ショスタコーヴィチは、かなり自由に曲をかける状況になっていた。

第1楽章は、モデラート。出だしこそ、オーケストラが活躍するが、次第に、ヴァイオリンのソナタのような雰囲気になっていく。ダークな感じだが、しかし、メロディは物悲しく、美しい。

第2楽章は、アダージョ。第1楽章の雰囲気が、そのまま引き継がれ、ますますダークになっていく。果たして、これが還暦を記念する曲なのだろうか?

途中の、ヴァイオリンとホルンの掛け合いが面白い。

第3楽章は、アダージョ・アレグロ。長いカデンツァの後、ようやくオーケストラが合流し、この曲が協奏曲であった、ということを思い出させてくれる。

ヴァイオリンは、諏訪内晶子。トゥガン・ソヒエフ指揮、NHK交響楽団による、2013年11月の演奏。

リャードフ:交響詩『魔の湖』

ロシアの音楽家、アナトーリ・リャードフが、1908年か1909年に完成させた曲。

リャードフは、リムスキー=コルサコフに学び、将来を嘱望されていた。オペラ(シンデレラ)に取り組んだが、完成できず、その時のスケッチを晩年に短い曲にまとめたもの。

幻想的な音楽で、題名にピッタリ。

トゥガン・ソヒエフ指揮、NHK交響楽団による、2013年11月の演奏。