2013年5月29日水曜日

ヴェルデイ:オペラ『マクベス』

ヴェルディがシェークスピアの作品を元に作成し、1847年に初演され、1865年に大幅に改訂された。

暗殺してしまった人間たちの霊に苦しめられ、自滅していくというシェークスピアの代表的な悲劇を、オペラという娯楽作品に仕上げることは難しい。

ヴェルディは、魔女が登場するシーンで、明るい合唱を採用するなど、ところどころに、楽しげな音楽を取り混ぜ、暗さばかりが目立たないように、工夫している。

このオペラでは、何といっても、暗殺を躊躇う夫をけしかけるという、マクベス夫人の出来が、大きな位置を占めている。

マクベスは、最初から最後まで、運命に操られる。マクベス夫人は、自ら運命を切り拓き操ろうとするが、最後は、その運命に野望を打ち砕かれる。

マクベスとマクベス夫人役には、高い演技力が要求される。

2005年6月のパルマ王立歌劇場の公演。マクベス夫人役のシルヴィ・ヴァレルは、女優のアンジェリーナ・ジョリーにそっくり。しかも、演技力も抜群で、夫をけしかける悪の部分と、狂気に陥る弱さ、哀れさを熱演していた。

Rシュトラウス:オペラ『ダナエの愛』

Rシュトラウスが、1940年に作曲したオペラ。ホフマンスタールの原作を、ヨーゼフ・グレゴールが脚本化した。

借金に苦しむの娘、ダナエが、結婚の相手として、ジュピターとミダスのどちらかを選ぶか迫られるが、最後は、愛のあるミダスを選ぶというストーリー。

ギリシャ神話をネタに、当時の社会情勢を皮肉った作品。

そうした内容のためか、政権を持っていたナチスによって、公演を禁じられ、その後も、あまり上演する機会に恵まれなかったという。

薔薇の騎士のような感動巨編というよりは、ライトノベルのようなオペラ、といったところだろうか。しかし、さすがはシュトラウス。第2幕のダナエとミダスのデュエットは、聞き応えがある。

2011年のベルリン・ドイツオペラの公演。

2013年5月25日土曜日

ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番

ラフマニノフが1909年に作曲した3番目の協奏曲。同年に自らの手によってニューヨークで初演された。

高度なピアノテクニックが要求され、ラフマニノフのピアノ曲の中でも、とりわけ難曲と言われている。

2度目の演奏は、マーラー指揮の元に行われ、ラフマニノフは、マーラーのスラブ系音楽への深い理解に感銘を受けたという。

音楽は、いかにもラフマニノフらしい、重厚で、ロシアの大地の底から湧き上っているような哀愁を帯びたもの。

第1楽章は、静かな瞑想的なピアノの音が印象的。全体的に静かな音楽。

第2楽章のアダージョは、この世で最も美しい音楽の一つに数えられるだろう。

第3楽章は、それまでの静かな音楽とは打って変わって、ダイナミックな壮麗な音楽。

いずれの楽章も、ラフマニノフらしい、ロシアの重厚な音楽になっている。

2012年7月にドレスデンデンで行われた野外コンサートから、ピアノはユジャ・ワン、シエン・ジャン指揮、シュターツカペレ・ドレスデンの演奏。

ユジャ・ワンは、感情をたっぷりと込め、指先と足先をフルに使って、見事にこの何曲を弾きこなしていた。

2014年6月のN饗の定期公演から。指揮はウラディーミル・アシュケナージ。ピアノは、ウズベキスタンの若手、ベフゾド・アブドゥライモフ。

アシュケナージは、この曲を何度もレコーディングしており、ここでは、指揮者として、若いピアニストをサポートしている。

リムスキー=コルサコフ:スペイン奇想曲

リムスキー=コルサコフが、1887年に作曲した管弦楽のための作品。

スペインのアストゥリア地方の民謡をもとに、それを管弦楽用に編曲したもの。コルサコフのオーケストレーションが冴えている。

5つの部分からなるが、4つ目だけはアンダルシアのジプシー音楽がもとになっており、この部分は、とりわけ印象的な音楽に仕上がっている。

2012年7月にドレスデンデンで行われた野外コンサートから、シエン・ジャン指揮、シュターツカペレ・ドレスデンの演奏。

陳鋼/何占豪:ヴァイオリン協奏曲『梁山伯と祝英台』

中国人の陳鋼と何占豪が1958年に作曲したヴァイオリン協奏曲。この曲を作曲したとき、二人はまだ音楽院の学生だった。

悲しい恋の物語を描いた、梁山伯と祝英台という中国の民話を描いている。

胡弓によって演奏されるメロディーを、ヴァイオリンに置き換えているので、中国の伝統的な音楽が、しっくりとヨーロッパのオーケストラの世界に取り込まれている。

物語の最後で、運命に引き裂かれた二人が、最後は蝶になって飛び去るのだが、音楽は、その飛び去る二人を表現し、消え入るように静かに終わる。

2012年7月にドレスデンデンで行われた野外コンサートから、ヴァイオリンはホァン・モンラ、シエン・ジャン指揮、シュターツカペレ・ドレスデンの演奏。

2013年5月19日日曜日

ラヴェル:ダフニスとクロエ


ラベルが1909年から1912年にかけて、バレエ・リュスの依頼に応えて作曲した。もとはバレエ曲だが、自身によって、管弦楽曲としても作られている。

冒頭の序章から、ハープや合唱を使った幻想的な音楽が奏でられ、聴く人を神話の世界に引き込んでしまう。

ラヴェルはこの曲を単なるバレエ音楽としてではなく、いくつかの主題を提示して、それを展開させ、管弦楽曲としても聞くに耐えるように工夫したという。

第3部の幻想的な音楽と、ダイナミックなオースケトレーションの効いた音楽は、一度聴いたら忘れられない強烈な印象を残す。

2013年2月のNHK交響楽団の演奏。指揮は準・メルクル。

サン=サーンス:チェロ協奏曲

サン・サーンスが、1873年に作曲した最初のチェロ協奏曲。その後、サン・サーンスは、もう1曲だけチェロ協奏曲を作曲している。

3つの楽章が切れ目なく演奏されるのが特徴。また、哀愁を帯びた第一主題も、チェロの音質に良くあっている。

2013年のNHK交響楽団の演奏。指揮は準・メルクル。チェロは、ダニエル・ミューラー・ショット。

2013年5月6日月曜日

プロコフィエフ:『ロミオとジュリエット』組曲

プロコフィエフは、1935年にバレエ用の52曲を完成させたが、このバレエを演じる予定だった、レニングラード・バレエ学校の評判が芳しくなかったため、管弦楽用の組曲として、最終的に3つの組曲として再編成した。

演奏会では、第1番と第2番からの何曲かが抜粋されて演奏されることが多い。

第2番の最初の曲、モンタギュー家とキャピレット家のインパクトの高さが、他の曲を圧倒している。

2013年2月、指揮ヒュー・ウルフ、NHK交響楽団の演奏。

トーマス・アデス:オペラ『パウダー・ハー・フェイス』から「ダンス」

トーマス・アデスは、1971年イギリス生まれの作曲家、ピアニストや指揮者としても活躍している。

ベルリンフィルの音楽監督を務めるラトルに注目され、しばしばベルリンフィルでもその作品が演奏されている。

このオペラは、1995年に発表され、露骨な性描写でスキャンダラスに扱われて話題となった。

コンサートでは、そのオペラの中から、「ダンス」という管弦楽のパートだけが演奏された。

ジャズのようなメロディーや、ピチカートを多用したエキセントリックな音楽など、雰囲気の違った音楽が、めまぐるしく展開される。

2013年2月に行われた、指揮ヒューウルフ、NHK交響楽団の演奏。これは、一部ではあるが、日本におけるこの作品の初演となった。

2013年5月5日日曜日

ロッシーニ:オペラ『セビリアの理髪師』

ロッシーニが、1816年にわずか2週間で作曲したオペラ。短い期間で作曲されたにも関わらず、素晴らしい曲が満載。ロッシーニは、同じ年に、オテッロを含めて3曲も作っている。

原作は、フランスの劇作家、ボーマルシェが1775年に書いた同名の戯曲。ご存知のように、その9年後に書かれた『フィガロの結婚』は、モーツァルトが、1786年にダ・ポンテの脚本でオペラにしている。

このセビリアの理髪師も、一度、ナポリのパイジェッロによって、1782年にオペラに仕立てている。ロッシーニも、このパイジェッロの作品を参考にしたと言われている。

話の内容は、たわいのない恋の喜劇だが、身分の高い伯爵が、賢い理髪師のフィガロや、しっかり者の平民のロジーナに振り回されるという、貴族や王族の時代の終わりを象徴した内容になっている。

社会批判としての喜劇の本質や、フランス革命をはさんだ当時の時代背景などが感じられる。

場面をセビリアにしている部分も面白い。スペインといえば、情熱的な土地柄というイメージがすでに出来上がっていたのだろう。

『フィガロの結婚』では、すでに結婚した伯爵夫妻が登場し、今度はフィガロの結婚を巡って一悶着が起こる。それと合わせて鑑賞すると、より楽しめる。

2011年のパルマ王立劇場での公演。テノールのアルマヴィーヴァ伯爵にはドミトリー・コルチャック、メゾ・ソプラノのロジーナにはケテヴァン・ケモクリーゼ、バリトンのフィガロにはルカ・サルシ、バリトンのバルトロにはブルーノ・プラティコ、バスのドン・バジリオにはジョヴァンニ・フルラネット、そしてメゾ・ソプラノのベルタにはナタリア・ロマン。

配役が素晴らしい。それぞれの役に、それぞれの歌手としての個性がよくマッチしていた。特にケテヴァン・ケモクリーゼが、愛らしく、ちょっと賢いロジーナにぴったりとはまっていた。

2013年5月4日土曜日

ドビュッシー:海 - 管弦楽のための3つの交響的素描

ドビュッシーが、1903年から1905年にかけて作曲した、海をテーマにした管弦楽曲。

間違いなく、ドビュッシーの管弦楽曲の中でも、最も素晴らしいものだろう。

3つのパートから構成される。最初のパートでは、様々なメロディが展開され、途中、中国やアラブのような音楽も聞こえてくる。

最後のパートは、とても印象的なメロディが繰り返し演奏され、嵐で荒れ狂う海を表現したような、壮大なフィナーレを迎える。

楽譜を見ると、波が弾けるような形状に、オタマジャクシが並んでいる。

2013年のラ・フォル・ジュルネ東京では、ラムルー管弦楽団が演奏。指揮は若手の注目株、フェイサル・カルイ。

ラムルー管弦楽団は、1905年にこの曲を初演した管弦楽団。しかし、初演の際は、楽団員がこの曲にあまり乗り気でなかったため、評判も今ひとつだったという。

その108年後のこの日の演奏は、若いフェイサル・カルイによって、華麗なイメージが強いドビュッシーが、実にパワフルに演奏され、肉食系ドビュッシーという感じだった。

サン=サーンス:動物の謝肉祭

サン・サーンスが、1886年に、私的なパーティーのために作曲した、14の小品からなる組曲。

ベルリオーズ、メンデルスゾーンらの様々な曲をパロディとして使用していることもあり、サン・サーンスは、有名な白鳥という曲を除いては、死ぬまでその楽譜を公開しなかった。

鶏、ロバ、象、カンガルーなどの動物が、ピアノ、ヴァイオリン、フルートなどで表現される。”巨匠”というお堅いイメージがあるサン・サーンスの別な側面が垣間見える作品。

しかし、すべての楽器が演奏されるパートのアンサンブルは、それらの楽器の音が融合され、一つの楽器として聞こえてきて、まるで魔術のよう。見事という他はない。

プロコフィエフの『ピーターと狼』のような内容だが、プロコフィエフの作品とは違い、こちらは、子供用に作曲した訳ではない。

2013年のラ・フォル・ジュルネ東京での演奏から。萩原麻未 (ピアノ)、酒井茜 (ピアノ)、竹澤恭子 (ヴァイオリン)、デボラ・ネムタヌ (ヴァイオリン)、リダ・チェン (ヴィオラ)、趙静 (チェロ)、渡邉玲雄 (コントラバス)、工藤重典 (フルート)、ラファエル・セヴェール (クラリネット)、安江佐和子 (マリンバ、ハルモニウム)というメンバーで演奏された。

フランク:チェロ・ソナタ(ヴァイオリン・ソナタ)

ベルギーに生まれ、パリで音楽を学び、教会でオルガン奏者として活躍していたフランクが、1886年に作曲した、もとはヴァイオリン・ソナタ。

とても有名なこの曲は、ピアノやチェロ様にも編曲されている。

2013年のラ・フォル・ジュルネ東京では、チェロ・ソナタとして演奏された。

同じ主題が、4つの楽章のあちこちに現れる、いわゆる循環形式を取り入れているが、その主題が美しく、一度聞いたら、忘れられなくなるほど、印象的。

第3楽章のデモーニッシュなメロディーも、幻想的で、実に美しい。

チェロは、趙静。ピアノは酒井茜による演奏。

フォーレ:チェロソナタ第1番

フォーレが1917年に作曲した最初のチェロソナタ。

第2楽章が、とにかく美しい。耽美的な音楽で、聞いていて、そのまま眠ってしまいそう。

2013年のラ・フォル・ジュルネ東京での演奏。チェロはフランソワ・サルク、ピアノはユーリ・ファヴォリン

フォーレの弟子にあたるラドミローのチェロソナタも演奏されたが、こちらは、フォーレに比べると、モダンな雰囲気。