2012年5月26日土曜日

ヴェルディ:オペラ『シモン・ボッカネグラ』

14世紀のジェノバが舞台。対立する同士の間で、許される恋をする男と女。生き別れた娘と再会する父親。娘の幸せを願い、自らを犠牲にする父親・・・

イタリアオペラによく現れるモチーフがてんこ盛りのオペラ。それが、ヴェルディの音楽に乗せて展開される。

特に、第1幕の第2場。貴族派と平民派が対立する議会で、主要な登場人物が総登場して演じられるシーン。ヴェルディらしいダイナミックで緊張感のある音楽が、物語を一気にクライマックスに持っていく。

カルロ・グエルフィ(シモン)、カリタ・マッティラ(アメーリア)他。アバド指揮、フィレンツェ5月音楽祭管弦楽団および合唱団。2002年6月の演奏。

チャイコフスキー:交響曲第3番『ポーランド』

5つの楽章を持つ珍しい交響曲。第5楽章で、ポーランド舞曲のリズムが用いられているところから、『ポーランド』という名前がついている。

第1楽章は、実に静かな始まり。第2楽章には、ワルツ風の美しいメロディーが展開される。最後の第5楽章は、チャイコフスキーらしい、ダイナミックな音楽で、最後の終わり方も壮麗。

第4番以降の3大交響曲ほど、あまり演奏される機会はないが、もっと演奏されていい交響曲だ。

プロコフィエフ:交響的物語『ピーターと狼』

プロコフィエフが、”子供を音楽に引き込むため”に作曲した、子供向けの、ストーリーを持ったオーケストラのための音楽。

子供に興味を持ってもらうために、ピーター、小鳥、アヒル、ネコ、狼などを楽器や簡単なメロディーで表現している。

これは、基本的にはオペラの作曲と同じ。登場人物を、ソプラノやテノールに当てはめ、それぞれのテーマを決めて行く。

とりわけ、主人公のピーターやオオカミの主題は、一度聴いたら忘れらないほど印象的だ。

ジョン・ウィリアムスのスターウォーズのような音楽が、そこかしこに聞こえてくる。

人間は、音楽を聴いた時に、それを単に音楽として聞くだけでなく、場合によっては、具体的な物や場面、あるいは感情を想起する。例え、作曲家が、純粋音楽を意図したとしても、聞く方は、必ずしも、それを”純粋”に受け入れる訳ではない。

子供向けの、実にシンプルで、演奏時間も30分と短い曲だが、この曲は、音楽の本質について、いろいろなことを考えさせてくれる。

朗読、ヴィッコ・フォン・ビューロー。マルチェロ・ヴィオッティ指揮、ベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団の1996年の演奏で。

ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番

あまりにもポピュラーな、ラフマニノフの代表曲。

第1楽章は、まるでロシアの大地から湧き上ってくるような、重厚な低音の響きで始まる。

第2楽章、第3楽章でも、いずれも1度聞いたら忘れられないような、印象的なメロディーに溢れており、ピアノ曲としてのみならず、クラシック全体を代表する曲でもある。

しかし、ラフマニノフがこの曲を作曲した時は、最初の交響曲の失敗などで、極度に落ち込んでいて、精神科医の力を借りて、ようやく完成に漕ぎ着けた。

その意味では、この曲は、ラフマニノフにとっての”復活”ということができる。

この曲が長く愛されているのは、単に音楽が美しい、というだけではないのかもしれない。

ピアノ、アレクシス・ワイセンベルク。カラヤン指揮、ベルリンフィルの1973年の演奏で。

2012年5月19日土曜日

チャイコフスキー:交響曲第2番「小ロシア」

チャイコフスキーの交響曲の中では、35分と一番短い小品。全体的に、明るい感じの作品。


第1楽章は、”ジャーン”という古典的に始まるが、ロシアの民謡が、各楽章のところどころに組み込まれている。


第4楽章は、チャイコフスキーらしいダイナミックな展開。


ヴァレリー・ゲルギエフ指揮、サンクトペテルブルグ・マイリンスキー劇場管弦楽団による
2010年のパリでの演奏。

ムソルグスキー:オペラ『ボリス・ゴドゥノフ』

実に、重苦しいオペラだ。

イヴァン雷帝の死後、ロマノフ王朝が成立する前の混乱期に、王位を狙える実力者であったボリス・ゴドゥノフの栄光と苦悩を描いたオペラ。

原作は、プーシキンによる同名の戯曲。ムソルグスキーは、1868年から1869年にかけて、この作品を完成させた。

冒頭の、”なぜ、我々を見捨てるのか!”と歌う民衆の合唱は、いかにも重厚なロシア音楽らしく、オペラ全体の基調をよく表している。

ツァーリに選出されながら、皇太子ドミトリー殺しの疑いをかけられ、つねにその亡霊におびえるボリス・ゴドゥノフ。その苛立ちと苦しみが、バスの低音で全編を覆っている。

偽ドミトリーに、新たなロシアへの期待をかけるロシアの民衆。その祈りのような合唱は、まるでロシアの大地からの呻き声のように聞こえる。

1954年にソ連で制作された映画版。当時のボリショイ劇場のスターが総出演。ソ連の威信をかけて制作された作品。全編ロケ。音楽も、従来のバージョンではなく、映画独自のものだったという。

2012年5月、サンクトペテルブルクのマリインスキー劇場で行われた、「第20回白夜祭国際フェスティバル」の演奏から。指揮、ヴァレリー・ゲルギエフ。演奏は、サンクトペテルブルク・マリインスキー劇場管弦楽団及び同合唱団。

こちらの演出は、衣装やセットに、伝統的な物と現代的な物を組み合わせたユニークな演出。伝統的なロシアの衣装を着た修道僧が、パソコンで年代記を書いている。


2012年5月13日日曜日

ヘンデル:オラトリオ『テオドーラ』

ヘンデルのオラトリオ『テオドーラ』を、オペラ形式で演出。2009年ザルツブルグ音楽祭において、ヘンデル没後250年を記念して企画された。

ローマ帝国において、キリスト教の教えに忠実に従い、殉教した聖テオドーラを巡る物語。

もともと、オラトリオということもあり、一曲一曲が独立しており、オペラのようにストーリーの流れを楽しむというより、それぞれの曲を楽しむという感じ。

カステラーノを彷彿させる、カウンターテノール。ペジュン・メータは、スキンヘッド。その声と容貌とのミスマッチが、また面白かった。

音楽は、ヘンデルの生きた時代の主流であったバロック音楽形式。言葉が英語ということも相まって、とても新鮮な印象だった。

アイヴォー・ボルトン指揮、フライブルグ・バロックオーケストラ。

チャイコフスキー:交響曲第1番『冬の日の幻想』

冬の日の幻想とは、第1楽章に自ら付けた名前に由来する。その言葉の通り、第1楽章は、実に静かな音楽。

第2楽章は『陰気な土地、霧の大地』と名付けられている。後半部分の美しいメロディーがとても印象的だった。

第4楽章では、南ロシアの民謡が効果的に使われていて、民族色にあふれたロシアらしい音楽になっている。

ヴァレリー・ゲルギエフ指揮、サンクトペテルブルグ・マイリンスキー劇場管弦楽団による2010年のパリでの演奏。

2012年5月12日土曜日

リムスキー=コルサコフ:交響組曲『シェヘラザード』

女子フィギアスケートで使用される曲として有名。

音楽が美しいということはもとより、有名な冒頭のテーマが、千夜一夜物語の語り手、シェヘラザードを表しているということから、選手をそのシェヘラザードに見立てての演出だろう。

あらてめて、この曲を聴いて見ると、そのシェヘラザードのメロディー以外にも、実に様々な印象的なメロディーが使われていることがわかる。

そのメロディーを、バイオリン、ファゴット、クラリネット、ホルンなどの楽器が奏でて、見事なオーケストレーションを構成している。

そうしたことから、コルサコフの音楽は、”色彩感溢れる”などと言われることが多い。コルサコフは、音楽の調性に色を感じる共感覚を持っていたとも言われる。

ユージン・オーマンディ指揮、フィラデルフィア管弦楽団の1978年の演奏を聞いた。

2012年5月6日日曜日

プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ第7番

プロコフィエフの3つの戦争ソナタ(第6番から第8番)といわれるものの1つ。

名前の通り、実に激しい内容の曲。この日の演奏では、この直前に、スクリャービンの作品が演奏されたので、その静謐な内容とのコントラストを十分に楽しめた。

第3楽章は、実にリズミカルな内容だったが、ピアニストの若いアダム・ラールは、正確なリズムで最後まで演奏。

また、「年とった祖母のお話」という作品も演奏された。子供用に作曲したともいわれ、緊張した演奏会に、ある種のリラックス感を与えていた。

ラ・フォルジュルネ・オ・ジャポン2012にて。

スクリャービン:前奏曲、ピアノ・ソナタ

スクリャービンの前奏曲というと、24の前奏曲が有名だが、この日聴いたのは、「5つの前奏曲」、「2つの前奏曲」、それと「ピアノ・ソナタ第5番」。

ショパンやリストを敬愛していたというスクリャービンの前奏曲は、余計なものをすべて削ぎ落してしまったかのように、シンプルで、しかも神秘的な印象を与える。

ピアニストは、若いアダム・ラール。スクリャービンの世界に没入してしまったかのような雰囲気で、その世界観を見事に表現していた。

ラ・フォルジュルネ・オ・ジャポン2012にて。

プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第1番

プロコフィエフの2つのヴァイオリン協奏曲の1つ。

ハープとヴァイオリンのハーモニーが、効果的に使われ、幻想的で、宇宙空間を漂っているような、不思議な雰囲気に溢れた曲。

ヴァイオリニストのイェウン・チェは、24才の若いヴァイオリニスト。ホールが普段はコンサート用のものでなく、特設の会場だったので、演奏開始直前まで、舞台裏で最後の確認をしている音がしていた。

演奏は素晴らしかった。オーケストラのヴァイオリニストの一人が、”ブラヴォー”と彼女に語りかけていたのが印象的だった。

ラ・フォルジュルネ・オ・ジャポン2012にて、ヴァイオリン、イェウン・チェ、ジョセフ・スヴェンセン指揮、パリ室内管弦楽団の演奏で。

ストラヴィンスキー:プルチネルラ組曲

ストラヴィンスキーが、ディアギレフのバレエ・リュスの「プルチネルラ」のために作った曲を集め、組曲にしたもの。

バレエの内容は、イタリアの伝統的なコンメディア・デッラルテをもとにしており、音楽もそのせいか、”これがあのストラヴィンスキー?”と思えるほど、古典的な内容。オーケストラの編成も小規模用に作られている。

オーケストラのすぐ近くで聞くことができたので、コンサートマスターの細かい指さばきが見えたり、楽器の持つ素材としての音まで聞こえるような、まるでサロンにいるような雰囲気の中で、ストラヴィンスキーが新古典主義へ変化するきっかけとなった曲を、楽しむことができた。

ラ・フォルジュルネ・オ・ジャポン2012にて、ジョセフ・スヴェンセン指揮、パリ室内管弦楽団の演奏で。

プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第2番

自ら演奏した初演時に、あまりにも前衛的な内容から、ブーイングの嵐となり、観客の多くが退席したと言われている、いわくつきのピアノ協奏曲。

残念ながら、初演時の楽譜は失われ、現在残っている楽譜では、初演のものより、いくぶん”大人しくなった”といわれている。果たして、初演のものは、どのような内容だったのだろうか。

その現代版でも、時に叙情的になったり、時に機械的になったり、とめまぐるしく曲調が変わり、飽きさせない。ピアノとオーケストラが時に一体になり、時に独立した旋律を奏でたりと、プロコフィエフの様々な工夫が聞き取れる。

この曲を聴いたのは、ラ・フォルジュルネ・ジャポン2012においてだったが、この前に、チャイコフスキーのバレエ組曲「白鳥の湖」が演奏された。


その有名な曲を聴いた後で、このピアノ協奏曲を聞かせるあたり、企画者のいたずら心がうかがえた。さすがに、初演の時のように、怒って退席する人はいなかったが、白鳥の湖の時はうっとりと聞いていた聴衆が、この曲の時は、少しソワソワした感じだったのが、印象的だった。

ラ・フォルジュルネ・ジャポン2012にて、ピアノ、アブデル・ラーマン・エル=パシャ、ジャン=ジャック・カントロフ指揮、シンフォニア・ヴァルソヴィアで。

チャイコフスキー:バレエ組曲「白鳥の湖」

バレエ曲、「白鳥の湖」から、いくつかの作品を組曲としてまとめたもの。

あまりにも有名な曲。改めて生のオーケストラで聞いてみると、チャイコフスキーの作曲家としての卓越した技術を改めて感じることができる。

最初の”情景”。出だしの有名なメロディーを、オーボエが、そのか細い音声で奏でる。そのメロディーをホルンが、大きな音で引き継ぐ。続いて、バイオリンが、そのメロディーを展開していく。

美しいメロディー。楽器の音の特性を最大限に活かしたオーケストレーション。やはり、この曲は名曲だ。

ラ・フォルジュルネ・ジャポン2012にて、ジャン=ジャック・カントロフ指揮、シンフォニア・ヴァルソヴィアで聞いた。

2012年5月4日金曜日

リヒャルト・シュトラウス:4つの最後の歌

リヒャルト・シュトラウスが、1948年、死の前年、84才の時に作曲した、管弦楽伴奏歌曲集。4つの詩に音楽を付けたもので、最初の3つの詩はヘルマン・ヘッセ、最後の詩はヨーゼフ・フォン・アイヒェンドルフのもの。

シュトラウスは、この4つの曲をまとめて1つのものとする意図は持っていなかった、と言われている。

とにかく、美しい。とくに、最後の「夕映えの中で」は、詩の内容が死を扱っており、耽美的な音楽が、そうした雰囲気を一層、盛り上げる。

最後に、少ししつこいくらいにリフレインが入る。まるで、シュトラウスが、残された人生を噛み締めているかのようにも聞こえる。

ラ・フォル・ジュルネ・ド・ナント2011から、ドミトリー・リス指揮、ウラル・ハーモニー管弦楽団、ソプラノはオルガ・ペレチャツコで聞いた。