2014年3月31日月曜日

ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第1番

後世に、多大な影響を与えた、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲。その第1番から6番までは、28歳だった1798年から1800年の2年間に集中的に作曲された。

この6曲は、必ずしも、この番号の順に作曲されたものではないようだ。

この1800年という年には、交響曲第1番も完成させており、ベートーヴェンにとっては、エポックメーキングな年だった。

当時、ベートーヴェンは、ウィーンでロプコヴィツ伯爵という人物の援助で音楽活動に励んでいた。この6つの弦楽四重奏曲は、この人物に捧げられている。

第1楽章は、Allegro con brio。冒頭のメロディが印象的で、全体的に明るい曲。

第2楽章は、Adagio affettuoso ed appassionato。第1楽章とはうってかわって、静謐な、静かで、厳かな音楽。終盤にかけて、文字通り、情熱的になっていく。完成度が高く、まるで、一篇の短編小説のようだ。

第3楽章は、Scherzo: Allegro molto。再び、雰囲気変わって、軽快なスケルツォ。

第4楽章は、Finale: Allegro。再び第1楽章のメロディが表れる。

2012年5月、若いメンバーが揃った、ベルチャ四重奏団による、ウィーンのコンチェルトハウスでの演奏。

2014年3月22日土曜日

ヴェルディ:オペラ『ファルスタッフ』

ヴェルディが、80歳を目前にした1893年に作曲した28作目のオペラで、これが最後のオペラになった。

ヴェルディは、喜劇のオペラでは、名作を残しておらず、それがずっと心残りだったのだろう。脚本家のボイートに、台本を進められ、ついに重い腰を上げた。

原作は、シェークスピアの『ウィンザーの陽気な女房たち』。ヘンリー4世の騎士として勇名を馳せたが、今はブクブクと太ってしまった騎士ファルスタッフを、ウィンザーの陽気な女房たちがやりこめる、という喜劇。

知恵のある女性達が、男性達をギャフンと言わせる、というストーリーで、その後の数多くのドラマ、映画などの原型になっている。

歌とストーリーが完全に一体化しており、歌のためにストーリーが中断する、というそれまでのオペラの常識を打ち破った、と言われている。

観客は、純粋に、ファルスタッフがだまされていく様子を、美しい音楽に乗せて、楽しむことが出来る。

最後に、出演者全員が舞台に登場して、”人生は、すべてが冗談”。”理性なんてあてにならない”。”誰もが、だますことを考えている”。と歌う部分が、何といっても圧巻。

それが、ヴェルディが80歳直前に作った、最後のオペラである、ということと合わせて、いろいろと感慨深く感じられ、喜劇でありながら、思わず、ジンときてしまう。

2011年10月、パルマのテアトロ・ファルネーゼでの、パルマ王立歌劇場管弦楽団及び同合唱団による演奏。指揮は、若いアンドレア・バッティストーニ。

2014年3月21日金曜日

マーラー:交響曲第2番『復活』

マーラーが、1888年から1894年にかけて作曲した2番目の交響曲。

1894年に亡くなった、指揮者としての師である、ハンス・フォン・ビューローへ捧げられた曲であるが、ビューローの死の以前から、葬礼、という題名が付けられていた。

第1楽章は、緊張感を感じさせる低い弦の音で始まる。続けて、葬礼のような音楽。

マーラーは、第2楽章を始めるまでに、5分ほどの時間を空けるように指示している。第2楽章では、第1楽章とはうって変わって、静かな落ち着いた内容。

第3楽章は、スケルツォ。木管楽器の、不思議で印象的な音楽で始まる。その後は、民族音楽風なものなど、いろいろなメロディが登場する。

第4楽章は、歌曲集『子供の不思議な角笛』からの月光という曲が使われている。

第5章は、マーラーお得意の大音響で始まる。途中から、ホルンによって導かれる主題が、実に美しい。この交響曲の核になっているメロディだ。

そして、”必ずよみがえるだろう”という言葉で始まる合唱。クロプシュトックの賛歌『復活』とオーケストラが見事に調和し、クライマックスへ向かっていく。

20代で初めて耳にして、最も好きなクラシックの曲になった。その後、一体、何回この曲を聴いてきたのだろう。その度に、新たなことを思い、発見する。

”お前をかつて打ち砕いたものが、お前を神のもとに連れて行くだろう”

Was du geschlagen, zu Gott wird es dich tragen!

この最後の部分を、冷静な気持ちで聴くことは、私には、決して出来ないだろう。

これからも、折に触れて、耳にしていきたい曲だ。

マリス・ヤンソンス指揮、バイエルン放送交響楽団及び同合唱団による、2011年5月の演奏。ソプラノのアニヤ・ハルテロスが、素晴らしかった。

2014年3月16日日曜日

メンデルスゾーン:交響曲第4番『イタリア』

メンデルスゾーンが、1831年から1833年にかけて作曲した交響曲。

名前の通り、1830年から1831年にイタリアを旅行し、ローマで謝肉祭や、法王の就任式などを見た印象をもとに作曲された。

第1楽章は、出だしから、軽やかな弦の旋律が美しい。最もメンデルスゾーンらしいメロディといっていいだろう。

第2楽章では、一転して、哀愁のこもった音楽で始まる。

第4楽章には、ローマ地方のサルタレロという舞曲が引用されている。

メンデルスゾーンは、自分が経験した経験から、常に音楽のヒントを得て、それをもとに多くの曲を作曲している。いわゆる天才型の音楽家で、文字通りの音楽能を持っていたのだろう。

2014年1月、水戸での水戸室内管弦楽団の演奏。指揮は、ナタリー・シュトゥッツマン。

メンデルスゾーン:序曲『フィンガルの洞窟』

メンデルスゾーンが、1830年に作曲した、およそ10分程度のオーケストラ向けの小品。

メンデルスゾーンが、スコットランドを旅行した際に、ヘブリディース諸島のスタファ島のフィンガルの洞窟を訪れ、その時のインスピレーションをもとに作った曲。

メンデルスゾーンの音楽的なセンスをよく表すエピソードだ。

音楽は、印象的な主題が、次々と展開されていく。

2014年1月、水戸での水戸室内管弦楽団の演奏。指揮は、ナタリー・シュトゥッツマン。

ベルリオーズ:テ・デウム

ベルリオーズが、1848年から1849年にかけて作曲した、宗教音楽。レクイエムと並んで、ベルリオーズの代表的な宗教音楽。

ベルリオーズは、当初、ナポレオンを讃えるために、この曲を構想したという。第7曲の行進曲は、その名残が残っているのかもしれない。

それ以外の6つの曲は、壮麗な賛美歌と、敬虔な雰囲気の静かな祈りの2つの形式で構成されている。

音楽は、いかにも宗教音楽といった感じ。レクイエムよりは、オーソドックスなイメージがした。

2013年12月、NHKホールでのN饗の演奏。指揮は、シャルル・デゥトワ。

プーランク:グローリア

プーランクが、亡くなる4年前、1959年に作曲した合唱形式の宗教音楽。ミサ曲の中のグロリアだけを取り出している。

サティとともに語られることが多いプークランだが、パリに暮らす、敬虔なカトリックの両親の元で生まれたせいで、数多くの宗教音楽を残している。

音楽は、敬虔な雰囲気を漂わせる部分もあるが、プーランクらしい、現代的な側面も多く、教会関係者からは、あまり評判が良くなかったという。

特に、最後の第六曲は、プーランクらしい、何と言うか、宇宙的な不思議な音楽。プーランクにとっては、それが、宗教的な音楽を意味したのかもしれない。

2013年12月、NHKホールでのN饗の演奏。指揮はシャルル・デゥトワ。

ブラームス:ヴァイオリンとチェロのための協奏曲

ブラームスが、1887年に作曲した、ヴァイオリンとチェロのための協奏曲。

当初は、交響曲第5番として構想していたが、諸般の事情から、珍しい、ヴァイオリンとチェロのための協奏曲という形式に落ち着いた。

第1楽章の冒頭の第1主題が、実に印象的。この曲が、交響曲として意図されていたことがよくわかる。

途中、ヴァイオリンが奏でる、デモーニッシュなメロディも、実にいい。

第2楽章はアンダンテ。緑が広がる、のどかな農村の風景を思い浮かべたくなる、穏やかな音楽で始まる。

第3楽章は、ヴィヴァーチェ・ノン・トロッポで、まさしく、ヴィヴァーチェという感じ。軽やかにリズミカルに、チェロとヴァイオリンの音が奏でられていく。

1982年9月、ウィーン楽友協会での演奏。指揮はバーンスタイン、ヴァイオリンはクレーメル、チェロはマインスキー、という夢の共演。オケは、勿論、ウィーン・フィル。

2014年3月9日日曜日

ハイドン:チェロ協奏曲第2番

ハイドンが、1761年から1790年まで、エステルハージ家に使えていた時代に書かれた、いくつかのチェロ協奏曲の一つ。

典型的な、古典派の音楽。あるいは、貴族のために書かれた、憩いのための音楽。

第1楽章は、アレグロ・モデラート。明るく爽やかで、初夏の晴れた日の朝のような雰囲気。

第2楽章は、アダージョ。テンポはゆっくりになるが、爽やかさは変わらない。

第3楽章は、アレグロ。朝の爽やかさに誘われて、お庭の散歩に出た、とでもいった感じの曲。

何も考えずに、単純に、美しい音楽を楽しめる。

1975年11月、ロンドンのヘンリー・ウッド・ホールでの、ロストロポーヴィチとアカデミー室内管弦楽団による演奏。

プッチーニ:オペラ『ジャンニ・スキッキ』

プッチーニが、1918年に作曲した、3部作の最後にして、3つの中で最も有名なオペラ。

というより、『私のお父さん』で有名なオペラ、といった方がいいかもしれない。

ダンテの神曲に登場する、ジャンニ・スキッキという人物についての話を、想像を豊かに膨らませたストーリー。

娘の恋人の父親の遺産を巡り、知恵物のスキッキが、娘のためにひど肌脱ぐが、最後は、ちゃっかりと、自分がその遺産のほとんどを手に入れてしまうという、痛快コメディ。

『私のお父さん』は、スキッキの娘が、恋人の苦境を救うために、父親に助けてほしいと訴える場面で歌われる。

”助けてくれないと、アルノ川に飛びこんじゃうから!”

その歌のあまりの素晴らしさに、スキッキも、重い腰を上げるという部分がミソ。プッチーニは、自分の歌に、絶対の自信を持っていたのだろう。

2008年3月、ミラノのスカラ座の公演。指揮は、リッカルド・シャイー。

スキッキ役はレオ・ヌッチ。ベルディのオペラには欠かせないバリトンだが、その高い演技力は、このスキッキ役にもピッタリ。

プッチーニは、3部作で、最初の『外套』では悲劇を、真ん中の『修道女アンジェリカ』では宗教劇を、そして最後の『ジャンニ・スキッキ』では喜劇を配している。

通常は、一本のオペラを見るのと同じ時間で、3つの趣向の違ったオペラを楽しませる、というプッチーニの発想は、実に面白い。

マンネリ化したオペラの世界に、少し変化をもたらしたかったのかもしれない。

プッチーニ:オペラ『修道女アンジェリカ』

プッチーニが、1917年に作曲した、いわゆる3部作の2番目にあたるオペラ。

プッチーニは、3部作の中でも、とりわけこの作品に愛着を感じていたようだが、その意図に反して、3つの作品の中では、最も評判が悪かった。

道ならぬ恋に落ち、子供を授かりながら、結婚できず、修道院に入った女性、アンジェリカが、我が子が幼くして病に倒れたことを知り、絶望して自殺するが、最後は、聖母マリアによって救われる、というストーリー。

登場人物が全て女性という、珍しいオペラ。

2008年3月、ミラノのスカラ座の公演。指揮は、リッカルド・シャイー。

アンジェリカ役のソプラノ、バルバラ・フリットリは、上品な雰囲気で、修道女がピッタリと合っていた。

プッチーニ:オペラ『外套』

プッチーニのオペラ、三部作の最初に上演されるオペラ。

1913年に、プッチーニがパリでロングランで上演されていた、ディディエ・ゴルドの舞台劇を見て感銘を受けて、オペラ化したもの。

ストーリーは、パリのセーヌ川で運送業を営む、船主のミケーレ(バリトン)、その妻のジョルジェッタ(ソプラノ)、船で働く若い男のルイージ(テノール)の三角関係が軸になっている。

毎日の厳しい生活に疲れたジョルジェッタは、自分と同郷のルーイジに惹かれていく。パリのどん底の環境の中で、二人が故郷を思い出して歌う部分は、切なさが漂う。

観客は、この二人の関係に同情してしまう。

一方で、ミケーレは、今では日々の仕事に追われているが、かつてのジョルジュエッタとの、美し愛の日々を思い出して、バリトンで、悲しく歌う。

しかし、最後は、二人の密会の現場を待ち伏せしたミケーレが、ルイージを絞め殺す、というショッキングな展開を迎える。バリトンとテノールの対決は、聞き応えがある。

プッチーニは、パリの貧しい労働者の暮らしを背景に、3人の思いを、ソプラノ、バリトン、テノールの美しい歌声に歌わせる。

2008年3月、ミラノのスカラ座の公演。指揮は、リッカルド・シャイー。

ヤナーチェク:シンフォニエッタ

ヤナーチェクが晩年になって作曲した、オーケストラのための、管弦楽曲。シンフォニエッタとは、小さめの交響曲、とでもいった意味だろうか。しかし、その内容は壮麗だ。

冒頭のトランペットを中心とした、金管楽器のよるファンファーレが印象的。一度聞いたら、二度と忘れられない。

初演は、1926年で、ヤナーチェクが亡くなる、2年前だった。

元々は、軍隊のために作曲したようで、冒頭のファンファーレは、その名残だという。

5つのパートから成り立っており、所々に、ヤナーチェクらしい、フォークロアな、美しいハーモニーが散りばめられている。

それぞれのパートには、当初、標題が付けられていた。いずれも、ヤナーチェクが住んでいたブルノという町の、城、修道院、広場、市役所など。

最後は、冒頭のファンファーレが繰り返され、終了する。

2012年、ヤナーチェクにゆかりの深い、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団のニューイヤーコンサートから。指揮者は、チェコ出身のイルジー・ビエロフラーヴェク。

ボッケリーニ:スターバト・マーテル

ルイジ・ボッケリーニが、1781年に作曲した、スターバト・マーテル。

このテーマでは、多くの作曲家が曲を作っているが、ボッケリーニの曲は、哀愁と憂いを帯びていて、そうした中でも、屈指の名曲と言っていいだろう。

ボッケリーニは、ハイドンとほぼ同時代の人物で、イタリア生まれだが、長くスペイン王家の宮廷音楽家だった。同じ時に、宮廷画家を勤めていたのが、ゴヤだった。

演奏は、アンサンブル・アウロラ。ソプラノはジェンマ・ベルタニョッリ。

このジェンマ・ベルタニョッリの歌が、とにかく素晴らしかった。

サン=サーンス:ヴァイオリン協奏曲第3番

サン・サーンスが、1880年に完成させた、3番目のヴァイオリン協奏曲。

有名なヴァイオリニスト、サラサーテに捧げられている。

ロマン主義を代表する、ヴァイオリン協奏曲と言われているが、同時に、華麗なフランス音楽の側面も持ち合わせており、バランスのとれた曲になっている。

第3楽章は、冒頭のカデンツァからの導入が聞き所。第1、2楽章とは全く違った、ダイナミックな展開になる。

2008年1月、ヴァイオリンは、ユリア・フィッシャー、マティアス・ピンチャー指揮、ユンゲ・ドイツ・フィルハーモニー管弦楽団の演奏。