2013年4月29日月曜日

プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第4番(左手のための)

プロコフィエフが、第1次大戦で右手を失ったピアニスト、パウル・ヴィットゲンシュタインの依頼で1931年に作曲した、左手だけで演奏されるピアノ協奏曲。

しかし、ヴィットゲンシュタインは、理解不能として、受け取りを拒否したという。

第2楽章のアンダンテは、プロコフィエフには珍しく、ロシアの広大な大地を感じさせるロマンチックな音楽。

第4楽章は、第1楽章と同じような音楽で、しかも2分たらずで終わってしまう。

左手だけで、これほど多彩な音楽が演奏できることに驚かされる。プロコフィエフの意図は、十分伝わってくるが、ヴィットゲンシュタインは、自分には演奏は無理だと思ったのかもしれない。

ピアノ、アレクセイ・ヴォドウィン。ヴァレリー・ゲルギエフ指揮、マリインスキー劇場管弦楽団による、2012年4月のモスクワ音楽院大ホールでの演奏。

プロコフィエフ:交響曲第4番

プロコフィエフが、アメリカ滞在中の1929年から1930年にかけて作曲した4番目の交響曲。第3番同様、先に作曲していたバレエ音楽『放蕩息子』から、あるいは、構想しながら、その中に取り入れなかった曲などをもとに作曲された。

初演は1930年にアメリカのボストンで行われたが、評判は今ひとつ。後に、プロコフィエフは大幅に手を入れて、まるで別の交響曲のようになっている。

ヴァレリー・ゲルギエフ指揮、マリインスキー劇場管弦楽団による、2012年4月のモスクワ音楽院大ホールでの演奏は、初演されたアメリカ版によるもの。

バレエ音楽をもとにしているためか、交響曲というより、組曲のような印象。

ベルリオーズ:幻想交響曲

ベルリオーズが、1830年に作曲した交響曲。アイルランド人のハリエット・スミスソンという女優に恋をした、ベルリオーズの姿を一人の芸術家になぞらえた標題音楽。

ダイナミックな構成、スミスソンをイメージしたメロディが所々で演奏されるなど、ロマン派音楽時代の到来を告げる、記念碑的な作品。

5つの楽章から構成されている。
夢、情熱
舞踏会
野の風景
断頭台への行進
魔女の夜宴の夢

題名から見ても、それまでの純粋音楽とは全く違っているということがわかる。

パーヴォ・ヤルヴィ指揮、パリ管弦楽団の2011年11月のパリでの演奏。

シューマン:ピアノ協奏曲

シューマンが1845年に完成させた唯一のピアノ協奏曲。シューマンは、この10年以上前からピアノ協奏曲に取り組んでおり、ようやくこの年になって完成させた。初演は、妻のクララによってなされている。

3つの楽章から構成されている。第1、2楽章は、ロマンチックな大人しい曲。それが、第3楽章のリズミカルな音楽をより印象的なものにしている。

ピアノ、ダン・タイ・ソン。パーヴォ・ヤルヴィ指揮、パリ管弦楽団の2011年11月、パリのサリ・プレイエルでの演奏。

ダン・タイ・ソンは、1980年にアジア人として初めてショパン・コンクールで1位になったピアニスト。

シェーンベルク:グレの歌

シェーンベルクが、1900年に作曲した、演奏会形式の壮大な歌曲。1911年頃まで改訂していたが、曲調は、初期の後期ロマン主義的な内容。

冒頭の前奏曲は、ラヴェルやドビュッシーなどフランス印象派の雰囲気を持っている。

物語が佳境に入ってくると、今度は、マーラーのような、大音量でダイナミックな音楽が展開される。

歌詞は、デンマークの無神論者、ヤコブセンの詩に基づいている。

2013年2月23日、オーチャードホール、尾高忠明指揮、東京フィルハーモニーの演奏。


ラフマニノフ:合唱交響曲『鐘』

ラフマニノフが、1913年にローマに滞在中に作曲した合唱付きの交響曲。エドガー・アラン・ポーのロシア語訳の詩に基づいて作成した。

ポーの詩は、人生を四季なぞり、それぞれを鐘の音を使って表現している。曲も、4つの楽章から構成されていて、鐘の音が効果的に使われている。

浅田真央のオリンピックでのプログラムに使われたのとは、同じ題名だが、あちらはピアノ曲で、内容は全く関係がない。

2012年にナントで行われたフォルジュルネの演奏から。指揮ドミトリー・リス、ウラル・フィルハーモニー管弦楽団及び同合唱団、ソプラノはヤーナ・イヴァニロヴァ、テノールはスタニスラフ・レオンティエフ、バリトンはパヴェル・バランスキー。

2013年4月20日土曜日

チャイコフスキー:弦楽六重奏曲『フィレンツェの思い出』

チャイコフスキーが、1890年にフィレンツェ滞在中に作曲した作品。サンクトペテルブルク室内楽協会の名誉会員に選出してもらったことへの返礼として作曲された。

弦楽四重奏よりも、ヴィオラとチェロがそれぞれ増えただけだが、音楽は、弦楽四重奏よりも多彩に、多重に変化している。

第1楽章と第2楽章は、物悲しいメロディー。

第3楽章には、メロディメーカーとしてのチャイコフスキーの特徴が良く表れている。

第4楽章の民族舞踏風の主題も、実に印象的だった。

第4楽章では、モーツァルトのフィガロの結婚の序曲のメロディが少しだけ引用され、華やかさを演出している。

2012年のナントで行われたフォルジュルネでの、モディリアーニ弦楽四重奏団を中心とした演奏。

2013年4月14日日曜日

バーンスタイン:交響曲第2番『不安の時代』

指揮者としての方が名高いバーンスタインは、3つの交響曲を書いた。この2つ目の交響曲は、英国の詩人、オーデンの詩をもとにして作曲された。

ピアノの独奏部分が多く、ピアノ協奏曲といった方がいいかもしれない。

6つの楽章から構成されるが、3章ずつが切れ目なく演奏され、2部形式になっている、特異な構成。

しかし、音楽自体は、プロコフィエフやショスタコーヴィチのピアノ協奏曲や交響曲を聞いているような感じがしなくもない。

指揮、ジョン・アクセルロッド。ピアノ、ステュアート・グッドイヤー。NHK交響楽団による、2013年1月の演奏から。

ジョン・アクセルロッドは、バーンスタインの元で指揮を学んだ。

ショスタコーヴィチ:チェロソナタ

ショスタコーヴィチが、1943年に、友人のチェリストの勧めで作曲した、唯一のチェロソナタ。その友人のチェリストと自らのピアノで初演されている。

4つの楽章は、モダンな不協和音、第3楽章のラルゴの叙情的なメロディなど、多彩な内容になっている。

ところどころ、ショスタコーヴィチが交響曲にも使ったメロディが聞こえる。

チェロは、タチアナ・ヴァシリエヴァ。ピアノは、シャニ・ディリュカ。2012年のフランス、ナントでのフォルジュルネの演奏。

ボロディン:歌劇『イーゴリ公』~「ダッタン人の踊り」

ついに完成には至らなかった、歌劇『イーゴリ公』の一部分。しかし、冒頭の哀愁を帯びたメロディと、後半の踊りの部分のダイナミックな音楽で、短いながら、1つの完成した音楽作品となっている。

ボロディンは、作曲を行う一方で、大学で化学者として、大きな業績を残している。

指揮、ドミトリー・リス。演奏は、ウラル・フィルハーモニー管弦楽団及び同合唱団。2012年のフランス、ナントのフォルジュルネの演奏。

チャイコフスキー:ロココ風の主題による変奏曲

チャイコフスキーが、友人のチェリスト、フィッツェンハーゲンのために1867年から1868年にかけて作曲したチェロのための管弦楽曲。

序奏と主題、その7つの変奏曲から構成されているが、フィッツェンハーゲンは演奏に当たり、もともとあった8つ目の変奏曲を外し、曲の順番も変えてしまった。現在でもそちらが主に演奏されている。

冒頭の美しく、ややコミカルな感じのメロディが、実に印象的。その後の変奏曲は、チャイコフスキーらしい、重厚で、物悲しいロシア音楽が展開する。

チェロという楽器の魅力を、最大限に引き出している作品。

チェロ、アレクサンドル・クニャーゼフ。オッコ・カム指揮、ラハティ交響楽団の、2012年のフランス、ナントでのフォルジュルネの演奏から。

シェーンベルク:浄められた夜

シェーンベルクが、25才の時に作曲した、弦楽六重奏曲。その後、管弦楽用にも自ら編曲を行った。

まだ十二表音などに取組む前で、後期ロマン主義と分類される曲。ワーグナーの『トリスタンとイゾルデ』の影響が大きいように思える。

旋律の美しさには、ブラームスの影響も感じられる。

リヒャルト・デーメルという詩人の詩をベースにしており、男女の緊張と和解、赦しなどのテーマが、美しい音色で表現されている。

2013年1月に行われたN響の演奏から。指揮は、デーヴィッド・ジンマン。

ブラームス:ピアノ協奏曲第2番

1877年から作曲を開始し、1881年に完成したブラームスの2つめのピアノ協奏曲。1番目の作品から、すでに22年が経っていた。

イタリアに行ったことがきっかけになっているせいか、全体的に明るい曲になっている。

ピアノのカデンッア部分はないが、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番と並んで、最も難しいピアノ協奏曲の1つになっている。

ブラームスは、初演で自ら完璧にこの曲を弾きこなしたという。若き日に、シューマンに衝撃を与えたピアノ・テクニックは、その後も衰えてはいなかった。

第1楽章は、重厚な感じ。

第2楽章は、一転して軽快な音楽。

第3楽章は、短いが、チェロの哀愁のあるメロディが印象的。

第4楽章は、ピアノの軽快なメロディで始まり、比較的穏やかなフィナーレを迎える。

交響曲のような協奏曲といわれるが、ブラームスの他の交響曲とは趣が異なる。ブラームスには、その2つの音楽形式に対する明確な違いの基準があったようだ。

2013年1月のN響の演奏。ピアノはエレーヌ・グリモー。指揮は、デーヴィッド・ジンマン。

ムソルグスキー:組曲『展覧会の絵』

ムソルグスキーが、夭折した、友人で建築家で画家のヴィクトル・ガルトマンを偲んで、その残された絵画作品をもとに、1874年に作曲された。

ラヴェルによってオーケストラ用に編曲された作品もよく演奏される。

冒頭の有名なメロディが、何度も繰り返し演奏され、その間に、ガルトマンの10枚の絵画作品からインスピレーションを受けた曲が配される、という珍しい構成。

ムソルグスキーは、このころは、すでにアルコール中毒に苦しんでいたが、この曲は、わずか2〜3週間で書き上げてしまったという。

2012年のフランス、なんとで開催されたフォルジュルネにおける、ダヴィット・カドシュの演奏。

よけいな所は削ぎ落としながら、しかし、情感のある部分はダイナミックに、メリハリの効いた演奏だった。

2013年4月6日土曜日

プロコフィエフ:オペラ『賭博者』

プロコフィエフが、ドストエフスキーの小説をもとに作曲したオペラ。24才だった1915年に作曲に着手、1917年に初戦される予定だったが、革命の影響で延期され、初演されたのはブリュッセルで1929年になってからだった。

そのせいか、その後の上演機会にもあまり恵まれていないオペラになってしまった。

オペラといっても、アリアもなく、台詞を音楽に乗せてしゃべる、音楽劇のような構成になっている。音楽は、全般的にモダンな内容になっている。

聞き所は、中盤付近の遺産目当てに叔母の死を待ち望んでいた将軍の前に、突然、その叔母が元気な姿で表れるシーン。その登場にプロコフィエフは、ロシアの伝統的な音楽を思わせる、重厚な音楽を使っている。

叔母は、医者の治療でなかなか直らないので、ロシア正教の牧師の民間療法を試し、それで、病気が治ってしまった。

もうひとつの聞き所は、終盤付近で、主人公の若い家庭教師、アレクシスが、愛する女性ポリーナのために、賭けの大勝負に出て、大儲けする場面。こちらは一転して、不協和音が鳴り響く。

実に面白いオペラだ。もっと上演されていいオペラだと思う。

プロコフィエフは、このオペラを作曲したとき、主人公のアレクシスとほぼ同じ位の年齢だった。この主人公に、感情移入をしていたのかもしれない。

2008年9月に行われた、ベルリン州立歌劇場での公演から。指揮はバレンボイム、アレクシスには、ミーシャ・ディディク。ポリーナにはクリスティーネ・オポライス。

2013年4月3日水曜日

グリーグ:ピアノ協奏曲

ノルウェー生まれのエドヴァルド・グリーグが、25才の時に作曲した唯一のピアノ協奏曲。

グルーグはその後もピアノ協奏曲に挑んだが、結局完成せず。これが唯一のピアノ協奏曲となった。晩年に至るまで、何度も改訂を行っている。

そのせいもあってか、この曲は、数あるピアノ協奏曲の中でも、屈指の作品に仕上がっている。

第1楽章は、一度聞いたら忘れられない印象的な主題で始まる。ベートーベンの運命の冒頭のようにも聞こえる。グリーグは、フィヨルドに注ぐ滝をイメージしていたという。

その後に、それとは正反対の少しダークで、ムードのある第2主題が続く。ここまで聞いて、完全にこの曲に魅力にはまっていることがわかった。

第2楽章に現れる、ピアノの細かいパッセージは、まるで水の雫が飛び跳ねているようだ。

第3楽章は、ロンドの軽快でまるでソナタのような雰囲気もありつつ、最後は壮大なソナタ形式で幕を閉じる。

ピアノはエリザベート・レオンスカヤ、パーヴォ・ヤルヴィ指揮、パリ管弦楽団の2010年11月の演奏。