リヒャルト・シュトラウスの代表的なオペラで、フィガロの結婚と並んで、私が最も愛するオペラ作品の一つ。
シュトラウスは、それまでサロメ、エレクトラなどの前衛的なオペラを作っていた。
この作品では、モーツァルトのフィガロの結婚をもとにして、もっとポピュラーでありながら、しかも、前衛的な音楽を取り混ぜた、独自のオペラ作品を目指した。
脚本は、当時のウィーンを代表する作家、ホフマンスタール。これ以上、望むべくも無いコンビが、音楽史上における屈指の名作オペラを作り上げた。
作曲した時期は、1909年から1910年にかけて。すでに、ヨーロッパの秩序は、崩れかけていた。
第1幕では、元帥夫人マリー・テレーズとオクタヴィアンとの、愛とすれ違いが奏でられる。
幕の最後で、マリー・テレーズは、オクタヴィアンに、自分がこれから年老いていくこと、そして、彼が、やがて自分から離れていくことを告げるが、オクタヴィアは、その言葉を受け入れられない。
第2幕の冒頭では、そのオクタヴィアンが、ばらの騎士として、ゾフィーと運命的な出会いをする。
その場面での2人の二重奏は、このオペラのハイライト。シュトラウスのメロディメーカーとしての才能が、いかんなく発揮される。
このオペラの悪役、オックス男爵のシーンでは、ウィーンのワルツのテーマが流れる。2幕の終了のシーンで、それが効果的に使われる。
ウィーンを代表する音楽が、オックス男爵の音楽に使われるというところに、シュトラウスのユーモア心が垣間見える。
第3幕では、そのオックス男爵がまんまと罠にはまるが、元帥夫人マリー・テレーズが登場し、彼女なりの結末をこのオペラにもたらす。
悪役のオックスが、壮大なウィーンオペラが奏でられる混乱の中に去り、残された3人の、終わりと始まりが演じられる。
数あるオペラ作品の中でも、このシーンほど美しいシーンは、他に思いうかべることが、実に難しい。
自分の愛人だった若いオクタヴィアンの愛が、若いゾフィーに移っていくことを、悲しく、しかし毅然と見送るマリー・テレーズ。
3人のそれぞれの感情が、ソプラノとメゾ・ソプラノの美しい歌で奏でられる。
マリー・テレーズが去った後に、オクタヴィアンとゾフィーが、自分たちの愛の未来を歌い上げる。
主要な登場人物、元帥夫人マリー・テレーズとオクタヴィア、ゾフィーと悪役のオックスの4人の人物の造形と、それを象徴する音楽が素晴らしい。
1994年、ウィーン歌劇場における、カルロス・クライバー指揮の伝説的な公演。とにかく配役が素晴らしい。
ソプラノの元帥夫人マリー・テレーズにフェリシティ・ロット、メゾ・ソプラノのアンネ・ソフィー・フォン・オッター、ソプラノのゾフィーにバーバラ・ボニー、バスのオックス男爵にクルト・モル。
全体の演出は、伝統的。今後のすべてのこのオペラの公演を評価するのに仕える、スタンダード的な公演だ。
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