2015年8月23日日曜日

バッハ:ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ

バッハが、1717年から1723年にかけて作曲した、6曲のヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ。

第1番。ロ短調。第1楽章から、アダージョ、アレグロ、アンダンテ、アレグロ。

全体的に、テンポの速い音楽が多く、典型的なバロック音楽といった感じ。

第2番。イ長調。アンダンテ、アレグロ・アッサイ、アンダンテ・ウン・ポコ、プレスト。

落ち着いた感じの印象が強い。

第3番。ホ長調。アダージョ、アレグロ、アダージョ・マ・ノン・タント、アレグロ。

2つのアダージョが、実に美しい。

第4番。シシリアーノ:ラルゴ、アレグロ、アダージョ、アレグロ。

冒頭のシシリアーノはとりわけ有名な曲で、宗教的で神秘的な雰囲気にあふれた音楽は、一度来たら忘れられないほどの、強烈な印象を受ける。

第5番。ラルゴ、アレグロ、アダージョ、ヴィヴィアーチェ。

第1楽章のラルゴのピアノの伴奏がメロディが、内省を促すようで心に深く残る。

第6番。アレグロ、ラルゴ、アレグロ、アダージョ、アレグロ。

唯一、5つの楽章を持っている。最後のアレグロは、第1番のアレグロのようで、また最初に戻ったような錯覚を覚える。

2008年5月、ドイツのポリング修道院図書室での演奏。ヴァイオリンはフランク・ペーター・ツィンマーマン、ピアノはエンリコ・パーチェ。

ベートーヴェン:ピアノソナタ第27番

ベートーヴェンが、1814年に作曲した27番目のピアノソナタ。

このピアノソナタから、各楽章の指定が、ドイツ語になり、より細かく弾き方を指示するようになっている。

第1楽章。ホ短調。速く、そしていつも感情と表情をもって。

冒頭で、主題が大きな音で提示され、その後の展開も、まるで物語のようにドラマチック。

第2楽章。ホ長調。速すぎないように、そして十分に歌うように。

穏やか音楽だが、詩情にあふれた、美しい音楽。

15分にも満たない小品だが、極上の短編小説を読み終えたような、心地よい高揚感を感じる。

ダニエル・バレンボイムによる1983年から1984年にかけて行われた、全曲演奏から。

ベートーヴェン:ピアノソナタ第26番『告別』

ベートーヴェンが、1809年から1810年にかけて作曲した、26番目のピアノソナタ。

告別という名前は、ベートーヴェン自身が名付けたもの。

パトロンにして、ベートーヴェンのピアノの弟子でもあった、オーストリア帝国のルドルフ大公が、ナポレオン戦争のために、一時期、ウィーンを離れることになった。

ベートーヴェンは、その時に作曲していたピアノソナタの3つの楽章に、告別、不在、再開、という名をそれぞれ書き込んだ。

第1楽章。告別、アダージョ、アレグロ。

冒頭のアダージョは、別れの悲しさを表しているようにも聞こえるが、すぐに終わってしまう。その後のアレグロは、むしろ明るい感じの音楽。

ベートーヴェンは、後から、冒頭のアダージョを付け加えたのではないか。

第2楽章。不在、アンダンテ・エスプレッシーボ。

悲しい感じの曲で、告別という名前には、こちらの方が相応しいの。

第3楽章。再開、ヴィヴィアーチェシスマメンテ。

第2楽章かた切れ目なく演奏される。再開の喜びを表すような、いきいきとした音楽。

ダニエル・バレンボイムによる1983年から1984年にかけて行われた、全曲演奏から。

ワーグナー:オペラ『リエンティ』

ワーグナーが、1840年に完成させたオペラ。

この作品が成功したことにより、ワーグナーは、ドレスデンのオペラ総監督に任命され、その後の大音楽家への道を歩み始めることになった。

オリジナル版では、4時間近い大作のため、通常は、2時間30分ほどに短縮して演奏されることが多い。

古代ローマに実際に存在した護民官リエンティの物語についての原作を、ワーグナーは、最後は自らが助けた民衆に殺される、というドラマティックな物語に改編した。

当時のロマン主義の風潮にあった内容とも思えるし、反民衆、反キリスト教的な内容で、その後のワーグナーの方向性も、すでに現れているようにも見える。

護民官のリエンツィ(テノール)、その娘のイレーネ(ソプラノ)、イレーネを思い続ける貴族派のアドリアーノ(メゾ・ソプラノ)の3人を軸に、物語は進んでいく。

2010年のベルリン・ドイツ・オペラの公演から。

ヒトラーのナチス、リーフェンシュタール、チャップリンの独裁者などの要素を取り入れた、挑戦的な演出がユニークだった。

2015年8月22日土曜日

ショスタコーヴィチ:交響曲第8番

ショスタコーヴィチが、1943年の7月から9月にかけて、一気に書き上げた8番目の交響曲。

時は、第2次世界大戦中で、ナチスのドイツがソビエトに進行、スターリングラードを巡る攻防戦で、ロシア側に多くの死者が出たことから、ショスタコーヴィチは、追悼の意味を込めて、この交響曲を作曲した。

その内容が、あまりにも悲壮的な内容であることから、その後、体制側から批判を浴びて、1960年まで演奏されることがなかった、といういわく付きの作品。

第1楽章。アダージョ、アレグロ・ノン・トロッポ、アレグロ、アダージョ。

出だしは、実に重々しく、追悼というイメージにふさわしい音楽。その後は、いったんアレグロになるが、再び重々しいアダージョに戻ってくる。

第2楽章。アレグレット。

第1楽章とは一転して、コミカルな内容の音楽。

第3楽章。アレグロ・ノン・トロッポ。前の楽章にも増して、コミカルな音楽。耳につきそうな、印象的なメロディを中心に展開する。

ショスタコーヴィチらしい、モダンな音楽が、どうして追悼のための交響曲に組み入れられているのだろうか?

第4楽章。ラルゴ。第3楽章から切れ目なく演奏される。次第に、第1楽章のような、暗い音楽になっていく。

第5楽章。アレグロット、アダージョ、アレグレット。

第1楽章とは逆の展開。アダージョは、第1楽章同様に重苦しいが、ここでは、アレグロットの方が勝っているということか。

しかし、最後には、再び静寂を取り戻すかのように、消え入るようにフィナーレを迎える。

2014年2月、サル・プレイエルでの、サンクトペテルブルク・マリインスキー劇場管弦楽団の演奏。指揮は、ドミートリイ・ショスタコーヴィチ。

ショスタコーヴィチ:交響曲第7番

ショスタコーヴィチが、1941年に作曲した、7番目の交響曲。

この後の、8番、9番と合わせて、第2次世界対戦中に作曲されたため、戦争3部作と言われている。

ヒトラーのファシズムを批判したプロパガンダだと言われたが、のちに本人は、スターリニズムをも批判した、とも語っており、本当のところはよくわからない。

およそ75分の大作で、ショスタコーヴィチの交響曲の中では、もっとも長い。

第1楽章。アレグレット。元は、戦争という副題が付いていた。

冒頭は、壮麗な音楽で、プロパガンダ的にも聞こえる。

続いて、人々の生活を表現しているという、静かな穏やかな音楽が続く。

次に、太鼓が中心になり、軍隊の行進曲のような音楽を奏でる。マーラーの音楽のようでもある。

第2楽章。モデレート。ポコ・アレグレット。元は、回想という副題が付いていた。

クラリネットのソロの悲しげな音楽が心に残る。

第3楽章。アダージョ。元は、祖国の大地、という副題が付いていた。

弦楽器の哀愁のあるメロディで始まり、管楽器がそれを引き継いでいく。

第4楽章。アレグロ・ノン・トロッポ。元は、勝利という副題が付いていた。

勝利という言葉を容易に連想させる、勇ましい音楽。

最後は、壮麗なフィナーレ。

2014年2月、サル・プレイエルでの、サンクトペテルブルク・マリインスキー劇場管弦楽団の演奏。指揮は、ドミートリイ・ショスタコーヴィチ。

ショスタコーヴィチ:交響曲第6番

ショスタコーヴィチが、1939年に作曲した、6番目の交響曲。

第1楽章。ラルゴ。重々しい、神秘的な音楽。まるでブラームスのような重厚な旋律。

最後の方で、フルートが印象的なメロディを奏でる。

全体の半分以上を占める。

第2楽章。アレグロ。クラリネットのコミカルで軽快な音楽で、オーケストラがいっせいに元気を取り戻していく。

第3楽章。プレスト。リズミカルな、軽快でテンポの良い音楽。そのままフィナーレに突入する。

全体的に、フルート、クラリネットなどの管楽器が、重要なパートを担っている交響曲。

2013年12月、サル・プレイエルでの、サンクトペテルブルク・マリインスキー劇場管弦楽団の演奏。指揮は、ドミートリイ・ショスタコーヴィチ。

2015年8月16日日曜日

マーラー:交響曲第9番

マーラーが、1909年に作曲した、9番目の交響曲。

この後、マーラーは第10番の作曲を始めたが、完成しないまま亡くなってしまったため、この交響曲が、完成させた最後の交響曲となった。

第1楽章。アンダンテ・コモド。

ゆっくりと寄せ返す波のような主題が印象的。全体的に静かで、最後は消え入るように終わる。

第2楽章。緩やかなレントラー風のテンポで、いくぶん歩くように、そして、きわめて粗野に。という不思議な指定がされている。

レントラーとは、南ドイツの舞踏音楽。マーラーらしい、コミカルな感じの音楽。

第3楽章。ロンド、ブルレスケ、アレグロ・アッサイ、きわめて反抗的に。

これまたユニークな指定。諧謔的な音楽の後は、重々しい音楽に変化していく。最後は、テンポを上げて、文字通り、反抗的に終わる。

第4楽章。アダージョ。非常にゆっくりと、抑えて。

マーラーの得意の、人生の哀愁を感じさせるアダージョ。

最初と最後の楽章は、緩やかなアンダンテとアダージョ。真ん中の二つの楽章は、スケルツォ的な、コミカルな感じのレントラーとブルレスケ。というユニークな構成の交響曲。

2011年5月。アムステルダムのコンセルトヘボウでの、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の演奏。指揮は、ベルナルト・ハイティンク。

エルガー:チェロ協奏曲

エルガーが1918年に作曲した、唯一のチェロ協奏曲。

第1楽章。アダージョ、モデラート。

チェロの重々しい音楽のソロで始まり、そのまま哀愁のあるオーケストラの主題につながっていく。

第2楽章。レント、アレグロ・モルト。

複雑でまとまりのない印象。

第3楽章。アダージョ。再び、第1楽章のような暗い音楽に逆戻り。

第4楽章。アレグロ、モデラート、アレグロ・マ・ノン・トロッポ。

出だしは軽快な音楽で始まるが、途中から、重々しい音楽がまたまた戻ってくる。

最後は、盛り上がりを見せて終わるが、やや唐突な感じがしなくもない。

2015年2月のN響定期公演から。指揮は、パーヴォ・ヤルヴィ。ヴァイオリンは、アリサ・ワイラースタイン。

2015年8月9日日曜日

ベートーヴェン:ピアノソナタ第25番

ベートーヴェンが、1809年に作曲した25番目のピアノソナタ。

第24番と同じく、10分程度の小曲。この時期、ベートーヴェンは、交響曲第5,6番、ピアノ協奏曲などを作曲しており、ピアノソナタには、こうした小品を作りたかったのかもしれない。

第1楽章。プレスト・アッカ・テデスカ。ト長調。

明るい華やかな音楽。テデスカとは、イタリア語でドイツ風に、という意。

第2楽章。アンダンテ。ト長調。

静かだが、民謡風の印象的なメロディ。

第3楽章。ヴィヴィアーチェ。ト長調。明るく軽快な音楽。

ダニエル・バレンボイムによる1983年から1984年にかけて行われた、全曲演奏から。

ベートーヴェン:ピアノソナタ第24番『テレーゼ』

ベートーヴェンが、4年のブランクの後、1809年に作曲した、24番目のピアノソナタ。

献呈された伯爵令嬢の名前を取って、テレーゼ、と呼ばれている。

わずか10分ほどの小品。

第1楽章。アダージョ・カンタビーレ、アレグロ・マ・ノン・トロッポ。嬰ヘ長調。

華やかで穏やかな音楽。

第2楽章。アレグロ・ヴィヴィアーチェ。嬰ヘ長調。

引き続き、明るい感じで、音楽がリズミカルに進んで行く。

ダニエル・バレンボイムによる1983年から1984年にかけて行われた、全曲演奏から。

ベートーヴェン:ピアノソナタ第23番『熱情』

ベートーヴェンが、1804年から1805年にかけて作曲した、23番目のピアノソナタ。ベートーヴェンのピアノソナタの中でも、最もよく知られている作品のひとつ。

第1楽章。アレグロ・アッサイ。ヘ短調。

情熱的なベートーヴェン、というイメージをそのまま体現したような音楽。

後になって、このピアノソナタには、熱情、という題名が作られたが、この楽章を聴いた人であれば、異論を唱える人はいないだろう。

交響曲第5番の運命に登場する、有名な主題も、すでにこの中に登場している。

第2楽章。アンダンテ・コン・モート。変ニ長調。

第1楽章の熱情を冷ますような静かな音楽。印象的なメロディが美しい。

第3楽章。アレグロ・マ・ノン・トロッポ。ヘ短調。

第1楽章は、情熱を思っきり表に出しているのに比べて、こちらは、内にこもっている、という対照的だが、同じくエネルギッシュな音楽。

ダニエル・バレンボイムによる1983年から1984年にかけて行われた、全曲演奏から。

ベートーヴェン:ピアノソナタ第22番

ベートーヴェンが、1804年に作曲した、22番目のピアノソナタ。

第1楽章。イン・テンポ・ドュ・メヌエット。ヘ長調。

リズミカルな親しみやすい音楽。いきなりメヌエットで始めるあたりが、ユニークな構成。

第2楽章。アレグレット。ヘ長調。

流れるような華麗でありながら、激しさも兼ね備えた音楽。

わずか10分程度の小曲。この時期に、ベートーヴェンは、フィデリオ、交響曲第3番、ラズモフスキー協奏曲などを作曲していたので、息抜き的に、楽しい気分で作ったのかもしれない。

ダニエル・バレンボイムによる1983年から1984年にかけて行われた、全曲演奏から。

ベートーヴェン:ピアノソナタ第21番『ワルトシュタイン』

ベートーヴェンが、1803年から1804年にかけて作曲した、21番目のピアノソナタ。

ベートーヴェンの後援者だった、ワルトシュタイン伯爵に献呈されていることから、そう呼ばれている。

第1楽章。アレグロ・コン・ブリオ。ハ長調。流れるような華麗な音楽。

第2楽章。イントロドュチィオーネ、アダージョ・モルト。ヘ長調。

もともとは、長大な第2楽章があったが、バランスを重視して、後からこの短いものに変えたと言われている。

静かな、瞑想的な音楽。

第3楽章。ロンド、アレグレット・モデラート、プレスティッシモ。

ハンマーを打つ鳴らすような、強烈な音楽が印象的。最後は、壮麗に幕を閉じる。

ダニエル・バレンボイムによる1983年から1984年にかけて行われた、全曲演奏から。


2015年8月8日土曜日

マーラー:交響曲第8番『千人の交響曲』

マーラーが、1906年から1907年にかけて作曲した、8番目の交響曲。

第1部は、交響曲というよりは、オラトリオのような内容で、中世の大司教の詩、”来たれ、創造主たる聖霊よ”からの詩をソロと合唱が歌い、オーケストラが伴奏する。

第2部は、ゲーテのファウストの第2部の最後の場面で構成されている。

最初のパートは、オーケストラによるアダージョで始まり、後半はソロと合唱が合流する。

続いて、合唱が雰囲気をアレグロに引き上げ、その後は、ソロと合唱が全体をリードしてく。

マーラーが自ら指揮をとり初演されたが、マーラーがみずからの耳で演奏を聴くことができた、最後の交響曲になった。

2011年3月、アムステルダムのコンセルトヘボウでの、指揮マリス・ヤンソンス、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の演奏。

2015年8月1日土曜日

マーラー:交響曲第3番

マーラーが、ハンブルグ市立劇場の指揮者をしていた、1895年から1896年にかけて作曲した、3番目の交響曲。

もともとは、それぞれの楽章に表題が付いていたが、マーラーは、誤解を与えるとして、最終的にそれらをすべて削除してしまった。

6つの楽章からなっており、100分を超える長大な交響曲。

第1楽章。力強く、決然と。もとは、夏が行進してくる(バッカスの行進)、という題がついていた。

冒頭のトランペットの短い旋律が印象的。その後にはホルンが続き、行進というイメージを確かに連想させる。

第2楽章。きわめて穏やかに。もとは、野原の花々が私に語ること、という題がついていた。

表題にように、穏やかな音楽で、いろいろな音色が小さな音を奏でる様子が、野原の花々、ということなのかもしれない。

第3楽章。急がずに。もとは、森の動物たちが私に語ること、という題がついていた。

前の楽章に比べると、ややくだけた感じの音楽。最後は、ダイナミックな終わり方。

第4楽章。きわめてゆるやかに、神秘的に 一貫してピアニッシシモで。もとは、夜が私に語ること、という題がついていた。

ニーチェのツァラトゥストラからの詩を、アルトの独唱が静かに歌う。

第5楽章。快活なテンポで、大胆な表出で。もとは、天使が私に語ること、という題がついていた。

子供の不思議な角笛からの詩を、アルト、女声合唱、児童合唱が歌う。第5楽章とは違って、明るい雰囲気。

第6楽章。ゆるやかに、安らぎに満ちて、感情を込めて。もとは、愛が私に語ること、という題がついていた。

静かに始まり、美しい弦楽器の旋律の後、最後は壮大なフィナーレを迎える。

2010年2月、オランダのアムステルダムでのロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の演奏。指揮はマリス・ヤンソン。