2015年4月26日日曜日

ベートーヴェン:オペラ『フェデリオ』

ベートーヴェンが完成させた唯一のオペラ。1805年の初演以降、何度か改定されている。

ベートーヴェンというと、交響曲、弦楽四重奏、ピアノソナタなど、厳格な構成のがっちりとした器楽曲のイメージが強い。

しかし、その一方で多くの歌曲も作曲しており、このオペラでは、運命交響曲とは違ったベートーヴェンを楽しむことができる。

原作は、当時の時代背景を反映した自由主義思想の内容で、牢屋に囚われた政治犯の夫を救う、献身的だが行動力のある妻、レオノーレが主人公。

レオノーレが、男装して牢に忍び込むのだが、そのとき使った名前が、フィデリオ。

牢の中という閉鎖された空間で繰り広げられる愛憎劇は、イタリアの激情的なオペラのようでもあり、後のワーグナーの陰鬱な神々の世界をも予感させる。

特に、主要な出演者が揃って、合唱も交えて歌うフィナーレは、圧倒的な迫力で聞くものに迫り、後の第9を連想させる。

2013年9月にドイツのボンで行われた、ベートーヴェン音楽祭公演での演奏は、台詞部分を省いた、演奏会形式での公演。

ベートーヴェンの音楽面がより強調された内容となった。

指揮はパーヴォ・ヤルヴィ、演奏はドイツ・カンマーフィルハーモニー管弦楽団。

フロレスタンにブルクハルト・フリッツ、レオノーレにセシル・ペラン、ロッコにディミトリー・イヴァシュチェンコ、マルツェリーネにモイカ・エルドマンという配役。

2015年4月25日土曜日

ヤナーチェク:グラゴル・ミサ

ヤナーチェクが作曲したミサ曲。1927年に初演された。

汎スラヴ主義者だったヤナーチェクは、教会スラヴ語の典礼文をもとにこのミサ曲を作曲したが、宗教的なものよりも、民族的な高揚を意図していた。

ヤナーチェク独特の金管楽器の華やかさに加えて、高揚感を煽るよう、ダイナミックな音楽になっている。

2012年3月のルツェルン音楽祭での演奏。マリス・ヤンソンス指揮、バイエルン放送交響楽団及び同合唱団。

ハイドン:十字架上のキリストの最後の7つの言葉

ハイドンが、1786年にスペインのカディス大聖堂の依頼に基づいて作曲した、金曜日の礼拝のための音楽。

キリストの言葉と、それに続く7つのソナタ、そして序曲と終曲から構成されている。

全体的に、礼拝にふさわしい静かな音楽なっている。

唯一、終曲の部分は、キリストの死の直後に発生したといわれる地震を表現しているので、激しく、この世の終がやってきたような雰囲気を伝えている。

1990年に、この曲を依頼したカディス大聖堂での演奏。指揮は、ジョルディ・サヴァール。演奏は、ル・コンセール・デ・ナシオン。

2015年4月19日日曜日

ウェーバー:クラリネット協奏曲第1番

ウェーバーが、バイエルン国王マクシミリアン1世のもとめに応じて1811年に作曲した2つのクラリネットのための協奏曲の1番目の曲。

第1楽章 アレグロ。

第2楽章 アダージョ・マ・ノン・トロッポ。

第3楽章 ロンド、アレグレット。クラリネット演奏者にとっては、かなり難しい演奏のよう。

2015年2月の神奈川フィルハーモニー交響楽団の演奏。指揮は、川瀬賢太郎。クラリネットは、アンドレアス・オッテンザマー。

ヒンデミット:ウェーバーの主題による交響的変容

ヒンデミットが、ナチスからの迫害を逃れて、ニューヨークで生活していた時代、1943年に完成させた作品。

ウェーバーの4つの主題からの変奏曲を、それぞれの楽章としている。

第1楽章、アレグロ。変奏部分は、ヒンデミットらしいモダンな音楽。

第2楽章 、「トゥーランドット」スケルツォ、モデラート。

オペラを元にしているせいか、実にダイナミックな変奏曲で、ジャズ的な要素も盛り込まれている。

第3楽章、アンダンティーノ。前の楽章と対照的に、とにかく静かな内容。

第4楽章、行進曲。はなやかなフィナーレ。

2015年2月の神奈川フィルハーモニー交響楽団の演奏。指揮は川瀬賢太郎。

プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第2番

プロコフィエフが、1935年に作曲した、2番目のヴァイオリン協奏曲。

プロコフィエフは、1936年にソ連に帰国したため、これはソ連以外から依頼された最後の作品となった。

第1楽章、アレグロ・モデラート。ダークなイメージの主題が印象的。

第2楽章、アンダンテ・アッサイ。

プロコフィエフの古典的な趣向がよく表れている。まるでメンデルスゾーンのような華かやかな音楽。

第3楽章、アレグロ、ベン・マルカート。

この楽章では、一転して、モダンな不協和音のような主題。

2015年1月のNHK交響楽団の定期演奏会から。指揮はジャナンドレア・ノセダ、ヴァイオリンはジェームズ・エーネス。

リムスキー=コルサコフ:組曲『見えない町キーテジの物語』

リムスキー=コルサコフが、1903年から1904年にかけて作曲したオペラからの曲で構成された組曲。

13世紀のモンゴル軍による侵入の際に、湖の下に沈んだとされるキーテジの町の話は、聖女フェヴローニャが祈りによって町を見えなくしたのだ、という伝説として今に残っている。

前奏曲:自然をたたえる歌、婚礼の行列、ケルジェネツの戦い、フェヴローニャの昇天という4つの曲から構成されている。

爽やかな自然を連想させる曲に始まり、軽快でかつ、ロシアの慕情溢れるリムスキー=コルサコフの音楽世界が展開される。

2015年1月のNHK交響楽団の定期演奏会から。指揮は、ジャナンドレア・ノセダ。

2015年4月18日土曜日

ベルク:ヴァイオリン協奏曲

アルバン・ベルクが、1935年に作曲した、ヴァイオリンのための協奏曲。

その時期に、友人のアルマ・マーラーが、建築家グロピウスとの間に生んだ娘、マノン・グロピウスが19才という若さで亡くなったため、”ある天使のおもいでに”という副題が付いている。

皮肉なことに、ベルク自身も、虫刺されからはじまった敗血症が悪化して、その年に亡くなってしまった。

並行して作曲中だった、オペラ『ルル』は、未完のまま残されることになった。

2つの楽章からなり、さらにそれぞれが2つのパートに分かれている。

民謡なバッハの音楽などが引用されているが、全体的に静謐な雰囲気に包まれた、敬虔な雰囲気のヴァイオリン協奏曲になっている。

2014年12月のNHK交響楽団の定期演奏会から。ヴァイオリンはアラベラ・美歩・シュタインバッハー、指揮はシャルル・デュトワ。

武満徹:弦楽のためのレクイエム

武満徹が、東京交響楽団からの依頼により1957年に作曲した作品。ともに映画音楽作りなどに携わっていた、早坂文雄に捧げられている。

レクイエムとあるが、ヨーロッパの伝統的なレクイエムの構成ではなく、自由な構成になっている。

ストラビンスキーがこの曲に注目したことから、武満徹の名が、アメリカで知られるきっかけになった。

不安を感じさせる弦楽の旋律や、激しい感情を表したような断続的な音楽など、武満徹の音楽の基本的な形が、ここではすでに提示されている。

2014年12月のNHK交響楽団の演奏から。指揮は、シャルル・デュトワ。

2015年4月12日日曜日

ブラームス:ドイツ・レクイエム

ブラームスが、1868年に完成させたレクイエム。7つの楽章からなる。

通常のレクイエムは、ラテン語の言葉に音楽をつけるが、ブラームスは、ルターのドイツ語約の聖書からの言葉を使って、このレクイエムを作り上げ、ドイツ・レクイエムとした。

そのため、キリエとか怒りの日、といった構成でなく、ブラームスの解釈による構成となっている。

詩の内容は、人間の生の儚さをなげき、神の偉大さをたたえ、死者の救済を祈っている。

ところどころ、ブラームスらしい重厚な音楽もあるが、全体的に、敬虔な雰囲気に包まれたレクイエムで、モーツァルト、ヴェルディ、ベルリオーズらのレクイエムとは、一味違った内容。

2012年9月のロイヤル・コンセルトヘボウ管定期公演から。指揮は、マリス・ヤンソン。

ベルリオーズ:レクイエム

ベルリオーズが、1837年に作曲したレクイエム。10楽章の構成。

合唱が400人というベルリオーズらしい大構成のレクイエムで、ベルリオーズは、大音量で観衆を圧倒しようとした。

怒りの日は、モーツァルトやヴェルディのような、激しいメロディではないが、オーケストラと合唱が一体となった、圧倒的な音量で、神の怒りを表現している。

全体的に、大きな音量ではあるが、音楽自体は抑制されて美しい、フランス音楽らしい、レクイエム。

2014年1月にパリのノートルダムでの演奏。指揮はグスターボ・ドゥダメル、演奏はフランス国立放送フィルハーモニー管弦楽団とシモン・ボリバル交響楽団、合唱はノートルダム大聖堂聖歌隊。

公演の2日前に亡くなった、クラウディオ・アバドを追悼する公演となった。

2015年4月11日土曜日

シューマン:交響的練習曲

1834年から1837年にかけて、友人の作曲した曲の主題を元に作曲された、その主題と12曲の変奏曲からなる練習曲集。

スケールの大きな変奏曲であることから、交響的と言われる。

ダイナミックな曲もあり、内省にあふれた曲もあり、様々なパターンのピアノ音楽が楽しめる。

特に最後の変奏からドラマティックなフィナーレへの展開は素晴らしく、交響的という名前にふさわしい。

2014年3月、オペラシティーホールでの、アンドラーシュ・シフによる演奏。

シューマン:ピアノソナタ第1番

シューマンが、1833年から1835年にかけて作曲し、1836年に発表した最初のピアノソナタ。

4つの楽章からなる。

様々なピアノ小曲の後に発表した作品で、多くの構想を重ねたためか、シューマンの曲にしては、複雑な構造を持っているといわれる。

しかし、ところどころには、シューマンらしい、軽やかなメロディが聞こえてくる。

2014年3月、オペラシティーホールでの、アンドラーシュ・シフによる演奏。

カゼッラ:交響曲第3番

イタリアの作曲家、アルフレード・カゼッラが1939年から1940年にかけて作曲した、3番目の交響曲。

アメリカのシカゴ交響楽団に依頼によるもので、カゼッラはおよそ30年ぶりに交響曲を作曲した。

4つの楽章からなり、影響を受けた、マーラーやショスタコーヴィチのような音楽が数多く登場する。

第1,2楽章はマーラー風、第3,4楽章はショスタコーヴィチ風、といったところか。

2015年1月のNHK交響楽団の定期演奏会から。指揮はジャナンドレア・ノサダ。

ラフマニノフ:パガニーニの主題による狂詩曲

ラフマニノフが、1934年に作曲したピアノとオーケストラのための24の変奏曲。

パガニーニのラプソディーの中の主題を使って、独自の変奏曲を仕立てたもの。

ラフマニノフは、祖国のロシアを離れ、各地での演奏活動にも忙しく、なかなか曲を作ることができなかった。

この曲は、スイスのルツェルン湖のほとりの別荘で、ようやく作曲することができた。

第18変奏が特に有名だが、その前の17変奏のダークな雰囲気も、実にいい。

第7変奏には、パガニーニが悪魔が取引した、ということから、リストやベルリオーズも自分の曲に取り入れた、グレゴリオ聖歌の怒りの日のテーマが使われている。

2015年1月のNHK交響楽団の定期演奏会から。指揮はジャナンドレア・ノサダ。ピアノは、アレクサンダー・ロマンスキー。

2015年4月5日日曜日

ブラームス:交響曲第2番

ブラームスが1877年に作曲した2番目の交響曲。

第1番を完成させるのに20年かけたブラームスだが、この第2番はわずか4ヶ月で完成させている。

第1楽章、アレグロ・ノン・トロッポ。

冒頭のホルンの伸びやかなメロディが、まるで、スイスあたりの高原の朝を想像させる。そして、自然なながれで主題へと誘って行く。

全体の半分近くを占める長い楽章だが、終始、穏やかに展開していく。

第2楽章、アダージョ・ノン・トロッポ。

哀愁のあるメロディで始まり、ブラームス独特の重厚な音楽が展開される。

第3楽章、アレグレット・グッラティオーソ。

クラリネットの伸びやかな音楽で始まるが、やがて軽快な音楽に変わっていく。

第4楽章、アレグロ・コン・スピリート。

それまで伸びやかで穏やかな印象だった音楽が一変して、ダイナミックでスピーディーな音楽になる。

続いて現れる主題が、実にドイツ音楽らしいというか、ブラームスらしい。

そして、怒涛のフィナーレを迎える。ブラームスの交響曲の中でも、最もドラマティックなフィナーレだろう。

2013年1月、ドレスデン国立歌劇場での演奏。ドレスデン国立管弦楽団、指揮クリスティアン・ティーレマン。

2015年4月4日土曜日

カールマン:オペレッタ『チャールダーシュの女王』

ハンガリーで生まれ、オーストリアで活躍した、エメリッヒ・カールマンが作曲し、1915年にウィーンで作曲されたオペレッタ。

侯爵家の若者エドウィンと歌手シルヴァの恋物語。

身分の違いから、一度は離れ離れになった恋人が、やがて再開し、結ばれるというたわいのないハッピーエンドの恋物語。

しかし、それが美しいメロディと、素晴らしいオーケストラと歌手によって演じられると、時代を超えて人々を楽しませるエンターテインメントになる。

オペレッタという芸術の素晴らしさを、これほどよく表す作品は、他にないだろう。

チャールダーシュ。いわゆるハンガリー地方の音楽がふんだんに盛り込まれている。

エメリッヒ・カールマンは、ブタペストのフランツ・リスト音楽アカデミーで音楽を学んだ。同窓には、コダーイやバルトークがいる。

コダーイやバルトークが、ハンガリーの民族音楽をもとに、新しい音楽を作り出して行ったが、カールマンは、自分の才能がポピュラー・ソングに向いていることに気づき、この素晴らしい作品を世に送り出した。

その音楽はまったく違う方向を目指したが、いずれも、フランツ・リストの抱いた夢を引き継いだ音楽の巨匠になった。

2014年のレスデン・シュターツカペレのジルベスター・コンサートから。演奏会形式で行われた。指揮はクリスティアン・ティーレマン。

ソプラノにアンナ・ネトレプコ、テノールにフアン・ディエゴ・フローレス、という2大スターの共演となった。

ベートーヴェン:交響曲第7番

ベートーヴェンが1811年〜1812年にかけて作曲した、7番目の交響曲。

第1楽章、ポコ・ソステヌート - ヴィヴァーチェ。第3番や5番のような激しさは姿を消し、完成された音楽。

第2楽章、アレグレット。途中の木管楽器による不思議な雰囲気の音楽が、実に素晴らしい。アラブの音楽のように聞こえる。

第3楽章、スケルツォとトリオ。聴いているこちらの気分までウキウキとしてくるような、軽快なスケルツォ。

このあたりで、この交響曲は、どんな極地にまで、私達を連れて行ってしまうのだろうか、と空恐ろしくなってくる。

第4楽章、アレグロ・コン・ブリオ。それまでやや抑え気味だった、ベートーヴェンのエキセントリックな側面が一気に爆発し、そのままフィナーレを迎える。

ベートーヴェンの9つの交響曲の中でも、最も完成度の高い交響曲。文字通りの、完璧な交響曲だ。

2008年のベルリンフィルのヨーロッパ・コンサートから。指揮は、サイモン・ラトル。

ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲第1番

ドイツの作曲家、ブルッフが1864年から1866年にかけて作曲した、1番目のヴァイオリンのための協奏曲。

ブルッフは、この他にも2つのヴァイオリン協奏曲を作曲したが、この1番ほどはポピュラーにはなっていない。

第1楽章、アレグロ・モデラート。悪魔的な魅力を持つ、ダイナミックなロマン派らしい音楽。

第2楽章、アダージョ。オーケストラの重厚なアダージョに、ヴァイオリンの伸びやかな音楽が重ねられて、美しい。

第3楽章、アレグロ・エネルジコ。第1楽章、第2楽章に比べると、少し聴き劣りがする。古典派的な音楽。

2008年のベルリンフィルのヨーロッパ・コンサートから。指揮は、サイモン・ラトル。ヴァイオリンは、ワディム・レーピン。



ストラヴィンスキー:3楽章の交響曲

ストラヴィンスキーが、1942年〜1945年にかけて作曲した、3つの楽章からなる交響曲。

最初は、管弦楽のための協奏曲として構成されたため、3つの楽章になっているようだ。

第1楽章は、ピアノとオーケストラの協奏で、明るい感じの音楽。

第2楽章は、短く、ピアノは演奏されない。ハーブの繊細な音楽が印象的。

第3楽章は、再びピアノが登場。ストラヴィンスキーらしいエキセントリックな音楽でフィナーレを迎える。

2008年のベルリンフィルのヨーロッパ・コンサートから。指揮はサイモン・ラトル。

コダーイ:組曲『ハーリ・ヤノーシュ』

ハンガリーの作曲家、コダーイが作曲し、1926年に初演されたオペラから、6つの曲を抜粋し、自ら組曲にしたもの。

オペラの内容は、ほらふきのハーリ・ヤノーシュが主人公の冒険物語。

ハンガリーの民族音楽を収集し続けたコダーイ。この作品にも、そうしたハンガリーの田舎の雰囲気を感じさせる、数多くの音楽が奏でられる。

2曲目のウィーンの音楽時計、という音楽は、ある美術番組の冒頭に使われて、おなじみのメロディー。

とにかくどの音楽も、美しくて、豊潤で、しかも楽しい。

この曲を聴いたら、誰もが一遍に、コダーイのファンになってしまうことだろう。

2014年のベルリンフィルのジルベスターコンサートから。指揮は、サイモン・ラトル。

ラモー:組曲『華やかなインド』

ジャン・フィリップ・ラモーは、17〜18世紀に活躍した、フランス・バロック時代の作曲家。

オペラとバレエがいっしょになった作品の音楽を集めた組曲。

インドとあるが、トルコやアメリカなども登場する。悪い異国趣味に溢れた内容。

音楽は文字通り華やかで、いかにもバロック音楽という感じ。

2014年のベルリンフィルのジルベスターコンサートからの演奏。指揮は、サイモン・ラトル。