2015年12月13日日曜日

ショスタコーヴィチ:交響曲第15番

ショスタコーヴィチが、1971年に作曲した、最後の交響曲。

4つの楽章から成る、第10番以来の古典的な構成。しかし、音楽自体は、ショスタコーヴィチらしさが満載。

第1楽章。アレグレット。

ショスタコーヴィチらしい、コミカルな曲調。ロッシーニのウィリアム・テルの音楽が引用される。ショスタコーヴィチが子供の頃、好きな音楽だった。

第2楽章。アダージョ、ラルゴ。

一転して、寂しげな音楽。

第3楽章。アレグレット。

再び、コミカルな音楽。

第4楽章。アダージョ、アレグレット。

アダージョは、ワーグナーの指輪からの引用が動機になる。アダージョ後半の、不安に満ちたハーモニーの盛り上がりが、実に美しい。

2013年1月、パリのサル・プレイエルでの、ヴァレリー・ゲルギエフ指揮、サンクトペテルブルク・マリインスキー劇場管弦楽団による演奏。



シューベルト:オペラ『フィエラブラス』

シューベルトが、1823年に作曲した、最後のオペラ。

シューベルトといえば、歌曲や交響曲は知られているが、未完のものも含めて9つのオペラ作品を残している。

カール大帝のフランク王国と、スペインのムーア人との戦いと、その中で繰り広げられる、恋の物語を描いた、いわゆるロマン主義らしい内容。

残念がらシューベルトの生前には上映されず、全曲がオペラ形式で演奏されたのは、1988年になってから、クラウディオ・アバドによるものだった。

さすがにシューベルトというだけあり、個々の歌曲には、聞き応えのあるものが多い。

2014年のザルツブルグ音楽祭の演奏。

2015年12月6日日曜日

メンデルスゾーン:『真夏の夜の夢』序曲

メンデルスゾーンが、1826年に作曲した、演奏会用の序曲。

メンデルスゾーンは、この時、まだわずか17歳だった。まさに、天才と言っていい。

わずか10分ほどの曲だが、美しいメロディに始まり、妖精や動物が飛び交う、シェークスピアの幻想世界を、見事に表現している。

クリストフ・フォン・ドホナーニ指揮、パリ管弦楽団による、2014年1月のパリ、サル・プレイエルでの演奏。

2015年11月15日日曜日

ショスタコーヴィチ:交響曲第14番『死者の歌』

ショスタコーヴィチが、1969年に完成させた、14番目の交響曲。

交響曲としているが、11の独立した歌唱付きの組曲になっている。

1962年に、ムソルグスキーの死の歌と踊りという作品を管弦楽用に編曲したことがきっかけで、自らの死を意識しながら、作曲した曲。

スペインのガルシア・ロルカ、フランスのアポリネール、ドイツのリルケ、ロシアのキュッヘルベケルの詩からの言葉に、ショスタコーヴィチが音楽を付けている。

この曲は、イギリスの作曲家、ブリテンに献呈されている。詩の国と言われるイギリスだが、ショスタコーヴィチは、イギリスの詩人の言葉は、使っていない。

音楽的には、無調、12音技法、トーンクラスターなどの前衛的な技法が使われている。

2013年12月、パリのサル・プレイエルでの、ゲルギエフ指揮、マイリンスキー劇場管弦楽団の演奏。

ショスタコーヴッチ:チェロ協奏曲第2番

ショスタコーヴィチが、1966年に作曲した、2番目のチェロ協奏曲。

エキセントリックな最初のチェロ協奏曲から、7年の月日が経っており、当時、ショスタコーヴッチは心臓病に悩まされていた。

そのせいか、全体的に、重苦しい、内省的な音楽になっている。

第1楽章 ラルゴ。静かな内省的な始まり。

第2楽章 アレグレット、アタッカ。チェロの独唱のメロディが印象的。不安をかきたてるような音楽。次第に、ショスタコーヴッチらしい、エキセントリックな内容に。

第3楽章 アレグレット。哀愁のあるメロディ。

2013年1月、パリのサル・プレイエルでのマリインスキー劇場管弦楽団の演奏。演奏はゲルギエフ、チェロはイタリア人のマリオ・ブルネロ。

2015年11月1日日曜日

リヒャルト・シュトラウス:オペラ『カプリッチョ』

リヒャルト・シュトラウスが、1940年から1941年にかけて作曲した、最後のオペラ。自ら台本の制作にも関係している。

サリエリのオペラ、『まずは音楽、次に言葉』をリメークした作品。

音学と詩では、どちらが優れているか、というテーマを、恋愛を絡めた音楽劇に仕立てている。

シュトラウスは、『ナクソス島のアリアドネ』でも、悲劇と喜劇を競わせるオペラを作っている。

冒頭の弦楽六重奏の奏でる音楽が、実に美しい。

2013年の3月のウィーン歌劇場の公演から。

2015年10月24日土曜日

ショスタコーヴィチ:交響曲第13番『バビ・ヤール』

ショスタコーヴィチが、1962年に作曲した、13番目の交響曲。

バスの独唱、合唱とオーケストラで構成される。

詩人のエフゲーニ・エフトゥシェンコが、ナチスによるユダヤ人殺害事件をテーマに書いた詩が元になっている。

第1楽章。バビ・ヤール。

この名前が、交響曲全体の名前にもなっている。重々しい音楽。

バビ・ヤールとは、ユダヤ人の虐殺が行われた場所で、詩の中では、民族の共和が歌われる。

第2楽章。ユーモア。

ユーモアを手なずけた権力者はいない、という、強烈な権力批判が、ショスタコーヴィチ独特の、コミカルな音楽とともに歌われる。

第3楽章。商店で。

厳しい経済の中で、苦労を強いられる民衆の様子を歌った詩。

第4楽章。恐怖。

ソビエトの恐怖政治の状況が、批判されている。

第5楽章。出世。

これまでとは、少し違った内容の詩で、ガレリオ、シェークスピア、トルストイなどの英雄が賞賛されながら、静かに終わる。

2013年1月、パリのサル・プレイエルでの、指揮ヴァレリー・ゲルギエフ、サンクトペテルブルク・マリインスキー劇場管弦楽団及び同合唱団の演奏。バス独唱は、ミハイル・ペトレンコ。


2015年10月17日土曜日

リヒャルト・シュトラウス:オペラ『火の危機』

リヒャルト・シュトラウスが、1901年に作曲した、2番目のオペラ。

シュトラウスは、この後、1905年にサロメを完成させて、大成功を収めることになった。

このオペラは、ミュンヘンを舞台に、夏至のお祭りをテーマにしたもので、好きな女性に振られた魔法使いの弟子が、この世から火をなくしてしまう、という騒動を描いている。

子供の合唱が所々で使われている、子供向けの音楽劇のような内容になっている。

その一方で、シュトラウスらしい、ダイナミックな音楽、コミカルな音楽も随所に聞くことができ、気軽に楽しむことができる。

2014年1月、パレルモ・マッシモ劇場での公演から。

2015年10月12日月曜日

メンデルスゾーン:交響曲第3番『スコットランド』

メンデルスゾーンが、1829年にスコットランドを訪れた際に受けた印象を元に作曲された、3番目の交響曲。

作曲は、翌年の1830年から始められたが、途中、多忙のため完成されず、1842年に完成された。

第1楽章。Andante con moto — Allegro un poco agitato。

スコットランドは、ドイツに比べて北にある。そして、イングランドに征服された悲しい歴史や、妖精の伝説などが残る、幻想的な土地でもある。

メンデルスゾーンの素晴らしい感性は、そうしたスコットランドの特徴を、この楽章の音楽で見事に表現している。

第2楽章。Vivace non troppo。

冒頭に、スコットランドのバクパイプのようなメロディが奏でられ、それをベースに音楽が展開される。

第3楽章。Adagio。

スコットランドの雄大な大自然をイメージさせる、厳粛な壮大な音楽。

第4楽章。Allegro vivacissimo — Allegro maestoso assai。

前半は、テンポの良い軽快な音楽で、後半は、雄大なフィナーレを迎える。

1980年、ショルティ指揮、シカゴ交響楽団によるシカゴでの演奏。

ショスタコーヴィチ:ピアノ協奏曲第2番

ショスタコーヴィチが、1957年に作曲した、2番目のピアノ協奏曲。彼の息子のために作られた。

第1楽章。アレグロ。

第2楽章。アンダンテ。

第3楽章。アレグロ。

第1楽章と第3楽章は、コミカルな、軽い感じのショスタコーヴィチらしい音楽。間の第2楽章は、哀愁に満ちた美しい音楽。

小規模ながら、見事な構成のピアノ協奏曲に仕上がっている。

2013年パリのサル・プレイエルでの、デニス・マツーエフによるピアノ、サンクトペテルブルク・マリインスキー劇場管弦楽団による演奏、指揮はヴァレリー・ゲルギエフ。

2015年10月10日土曜日

ショスタコーヴィチ:交響曲第12番『1917年』

ショスタコーヴィチが、1961年に作曲した、12番目の交響曲。

第11番に引き続く標題音楽で、この交響曲でのテーマは、レーニンによる1917年の10月革命。

第1楽章。モデラート、アレグロ。革命のペトログラード。

レーニンによる、ペトログラードでの革命の様子を、勇壮な音楽で表現している。

第2楽章。アダージョ。ラズリーフ。

ラズリーフとは、ペトログラードの北にある湖の名前。レーニンは、この湖の湖畔で、革命の構想を練り上げていたという。

静かな間奏曲といった趣。

第3楽章。アレグロ。アヴローラ。

戦艦アヴローラから、冬の宮殿への砲撃で、十月革命が始まる。その様子を、雄大な高揚心に溢れる音楽で表現している。

第4楽章。リステッソ・テンポ - アレグレット - モデラート。人類の夜明け。

レーニンによる十月革命の成功が、人類の夜明けである、という意味を込めた、壮麗なるファンファーレ。

ヴァレリー・ゲルギエフ指揮、サンクトペテルブルク・マリインスキー劇場管弦楽団による、2014年2月、パリのサル・プレイエルでの演奏。

ショスタコーヴィチ:交響曲第11番『1905年』

ショスタコーヴィチが、1957年に作曲した、11番目の交響曲。

ロシアの歴史に、暗い影を落としている、1905年の血の日曜日事件を音楽で描いた、いわゆる標題音楽。

第1楽章。アダージョ。宮殿前広場。ト短調。

悲劇となった事件を象徴するように、重々しい、陰鬱な音楽。

第2楽章。アレグロ。1月9日。ト短調。

民衆の行進を表す音楽で始まり、やがて、その民衆を狙撃する政府軍の一斉射撃が始まる。

第3楽章。アダージョ。永遠の記憶。ト短調。

皇帝配下の軍の銃殺によって倒れた、民衆へのレクイエム。美しいが、厳粛な音楽。

第4楽章。アレグロ・ノン・トロッポ。警鐘。ロ短調。

仲間の死を乗り越えて、躍動する労働者への賛歌。

だが、この警鐘とは、誰への警鐘だろうか?

ヴァレリー・ゲルギエフ指揮、サンクトペテルブルク・マリインスキー劇場管弦楽団による、2014年2月、パリのサル・プレイエルでの演奏。


2015年10月4日日曜日

バッハ:ミサ曲ロ短調

バッハが、死の前年の1749年に完成させたといわれるミサ曲。

4つの部分からなり、ヨハネ受難曲、マタイ受難曲と並び、バッハの最高傑作のひとつと考えられている。

キリエ、グロリア、ニカイア信条、それと、サンクトゥス、ホザンナ、ベネディクトゥス、アニュス・デイが一つのなったパートの、4つから構成されている。

作曲された時期は、それぞれ別々で、バッハは、そもそも全体として一つの曲として構成されることを、意識していなかったのではないか、という説もある。

また、バッハの子が大幅な改訂を行っていることから、オリジナルの再現には、大きな課題があるようだ。

現代の、しかもキリスト教になじみのない人間にとっては、純粋に、器楽と人間の奏でる音楽を楽しむことしかできない。

ヨハネ受難曲、マタイ受難曲と比べて、クライマックスとでもいえる特別なパートはなく、淡々とミサ曲が進んでいく。

2015年7月、サントリーホールでの、ジャパン・バッハ・コレギウムによる演奏。

2015年10月3日土曜日

ベートーヴェン:ピアノソナタ第30番

ベートーヴェンが、1820年に作曲した、30番目のピアノソナタ。

第3楽章が、6 つの変奏曲から構成されるという、珍しい内容になっている。

第1楽章、ヴィヴィアーチェ・マ・ノン・トロッポ、ホ長調。

ゆるやかな印象の音楽で始まるが、突然、劇的な音楽に変わる。

第2楽章、プレスティッシーモ、ホ短調。

第1楽章に続けて演奏される。

第3楽章、アンダンテ・モルト・カンタヴィーレ・エ・エスプレッシーヴォ、ホ長調。

ゆっくりとした、単純だが内省にあふれた主題が演奏され、それが様々に変奏されていく。

徐々に盛り上がりを見せて、当初の主題よりもかけ離れたダイナミックな音楽まで行きつくが、最後は、最初に戻ったように、静かな終わりを迎える。

そのひとつの楽章の中での変化は、さすが、と思わせる。

ダニエル・バレンボイムによる1983年から1984年にかけて行われた、全曲演奏から。

ベートーヴェン:ピアノソナタ第29番『ハンマークラヴィーア』

ベートーヴェンが、1817年から1818年にかけて作曲した、29番目のピアノソナタ。

ベートーヴェンは、第28番とこのピアノソナタに、ピアノフォルテの代わりに、楽譜にハンマークラヴィーアと書いていたが、なぜか、この曲だけが、その名で呼ばれるようになった。

第1楽章、アレグロ、変ロ長調。

ハンマークラヴィーアという名前にふさわしい、堂々たる、威厳に満ちた音楽。

第2楽章、アッサイ・ヴィヴィアーチェ、変ロ長調。

明るい感じの音楽。最後の方で、印象的なメロディが演奏される。

第3楽章、アダージョ・ソステヌート、嬰ヘ短調。

ゆっくりとした、重々しい音楽。深刻なことに、ずっと頭を悩ませている、といった感じの内容。

第4楽章、ラルゴ、アレグロ・リゾルート、変ロ長調。

陰鬱な音楽から解放され、明るい晴れやかな音楽になるが、その後は、複雑な展開となる。

ダニエル・バレンボイムによる1983年から1984年にかけて行われた、全曲演奏から。

ベートーヴェン:ピアノソナタ第28番

ベートーヴェンが、1816年に作曲した、28番目のピアノソナタ。

第1楽章、幾分速く、そして非常に深い感情をもって、イ長調。

ゆっくりと、何かを確かめるような、内省に満ちたような音楽。

第2楽章、生き生きした行進曲風に、ヘ長調。

一転して軽快な音楽。

行進曲というより、飛び跳ねているように聞こえる。

第3楽章、ゆっくりと、そして憧れに満ちて、イ短調、速く、しかし速すぎないように、そして断固として、イ長調。

ゆっくりとした、ロマンチックな響きの前半と、後半は。ドラマチックな音楽とから成っている。

ダニエル・バレンボイムによる1983年から1984年にかけて行われた、全曲演奏から。

ブラームス:交響曲第1番

ブラームスが、着想から完成までに21年をかけた、という最初の交響曲。1876年に完成された。

第1楽章。Un poco sostenuto - Allegro。

ドイツ音楽らしい、重厚な出だしで始まり、やがて勇壮な主題へと展開される。

第2楽章。Andante sostenuto。

穏やかな音楽で始まり、哀愁に満ちた管楽器の主題、その後に弦楽器の美しい旋律が続く。

最後に、バイオリンによる極上のメロディが演奏される。

第3楽章。Un poco allegretto e grazioso。

目の前に、広大な平原が眼に浮かぶような、牧歌的な爽やかな音楽で始まる。

中断されずに、そのまま、第4楽章に引き継がれる、短い楽章。

第4楽章。Adagio - Più andante - Allegro non troppo, ma con brio - Più allegro。

ベートーヴェンの第9交響曲からの引用をベースにした音楽。

2014年9月、ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールで行われた、フランツ・ウェルザー=メスト指揮、クリーヴランド管弦楽団による演奏。

現代らしい、ドライでありながら、要所要所には叙情感をこめた、メリハリのある演奏が印象的。

2015年9月5日土曜日

シベリウス:交響詩『フィンランディア』

シベリウスが、1899年に作曲した、交響詩。

当時、帝国ロシアの支配下にあった、フィンランドの美しさを歌い上げた、シベリウスの代表的な作品。

ロシアは、この曲を、独立運動を刺激するとして、演奏禁止とした。

雄大で、人々を奮い立たせるような音楽は、フィンランド人のみならず、聴くもの全ての心を、奮い立たせる。

2015年5月に行われた、ウィーンフィルのシェーンベルク宮殿コンサートから。指揮は、ズビン・メータ。

ショスタコーヴィチ:交響曲第10番

ショスタコーヴィチが、スターリンの死後、1953年に発表した10番目の交響曲。

第9番がソビエト当局からの厳しい批判にさらされてから、8年間の沈黙の後に発表され、その内容が、本人のコメントなども含めて、様々に解釈されている。

第1楽章。モデラート。重々しくも、哀愁の満ちた音楽で始まり、途中、悲劇的な盛り上がりを見せが、最後は再び重々しく終わる。

第2楽章。アレグロ。一度聞いたら、二度と忘れられないほどの、強烈な印象を残すメロディ。

第3楽章。アレグレット。再び、第1楽章のような重々しい音楽。ホルンが特徴的なメロディを奏でる。

第4楽章。アンダンテ。ここでも、音楽は暗めだが、後半で、ややコミカルな展開を見せる。

ショスタコーヴィチの交響曲の中では、ふざけた感じがなく、終始重々しくも、美しいメロディが詰まっている。

カラヤンが、ショスタコーヴィチの曲の中で、唯一この曲をレコーディングしたという逸話が、この曲の性格をよく物語っている。

ショスタコーヴィチ自身は、この楽章は、スターリンを表していると言っている。

ヴァレリー・ゲルギエフ指揮、マリインスキー劇場管弦楽団による、2013年12月、パリのサル・プレイエルでの演奏。

ショスタコーヴィチ:交響曲第9番

ショスタコーヴィチが、1945年に作曲した、9番目の交響曲。いわゆる、戦争3部作の最後に当たる曲。

戦争の勝利を祝う、という意味合いと、ベートーヴェンの第9番との関係で、周囲の期待が大きかったが、その内容が、政府側か見ると大きな期待はずれとなり、その後、批判にさらされることになった。

第1楽章。アレグロ。勝利とは、あまりにもかけ離れた、コミカルな感じの音楽。

第2楽章。モデラート、アダージョ。静かだが、不安を掻き立てるような音楽。戦争が、これから始まりそうな雰囲気だ。

第3楽章。プレスト。慌ただしい、落ち着きがない感じの音楽。

第4楽章。ラルゴ。ファゴットの物寂しい音楽が印象的。

第5楽章。アレグレット。第1楽章のようなコミカルな音楽が再び奏でられる。音楽が進むにつれて、そのふざけ具合が、ますますひどくなっていく。

これじゃあ、批判されても仕方ないよな、と素直に感じてしまう。

ヴァレリー・ゲルギエフ指揮、マリインスキー劇場管弦楽団による、2013年12月、パリのサル・プレイエルでの演奏。

2015年8月23日日曜日

バッハ:ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ

バッハが、1717年から1723年にかけて作曲した、6曲のヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ。

第1番。ロ短調。第1楽章から、アダージョ、アレグロ、アンダンテ、アレグロ。

全体的に、テンポの速い音楽が多く、典型的なバロック音楽といった感じ。

第2番。イ長調。アンダンテ、アレグロ・アッサイ、アンダンテ・ウン・ポコ、プレスト。

落ち着いた感じの印象が強い。

第3番。ホ長調。アダージョ、アレグロ、アダージョ・マ・ノン・タント、アレグロ。

2つのアダージョが、実に美しい。

第4番。シシリアーノ:ラルゴ、アレグロ、アダージョ、アレグロ。

冒頭のシシリアーノはとりわけ有名な曲で、宗教的で神秘的な雰囲気にあふれた音楽は、一度来たら忘れられないほどの、強烈な印象を受ける。

第5番。ラルゴ、アレグロ、アダージョ、ヴィヴィアーチェ。

第1楽章のラルゴのピアノの伴奏がメロディが、内省を促すようで心に深く残る。

第6番。アレグロ、ラルゴ、アレグロ、アダージョ、アレグロ。

唯一、5つの楽章を持っている。最後のアレグロは、第1番のアレグロのようで、また最初に戻ったような錯覚を覚える。

2008年5月、ドイツのポリング修道院図書室での演奏。ヴァイオリンはフランク・ペーター・ツィンマーマン、ピアノはエンリコ・パーチェ。

ベートーヴェン:ピアノソナタ第27番

ベートーヴェンが、1814年に作曲した27番目のピアノソナタ。

このピアノソナタから、各楽章の指定が、ドイツ語になり、より細かく弾き方を指示するようになっている。

第1楽章。ホ短調。速く、そしていつも感情と表情をもって。

冒頭で、主題が大きな音で提示され、その後の展開も、まるで物語のようにドラマチック。

第2楽章。ホ長調。速すぎないように、そして十分に歌うように。

穏やか音楽だが、詩情にあふれた、美しい音楽。

15分にも満たない小品だが、極上の短編小説を読み終えたような、心地よい高揚感を感じる。

ダニエル・バレンボイムによる1983年から1984年にかけて行われた、全曲演奏から。

ベートーヴェン:ピアノソナタ第26番『告別』

ベートーヴェンが、1809年から1810年にかけて作曲した、26番目のピアノソナタ。

告別という名前は、ベートーヴェン自身が名付けたもの。

パトロンにして、ベートーヴェンのピアノの弟子でもあった、オーストリア帝国のルドルフ大公が、ナポレオン戦争のために、一時期、ウィーンを離れることになった。

ベートーヴェンは、その時に作曲していたピアノソナタの3つの楽章に、告別、不在、再開、という名をそれぞれ書き込んだ。

第1楽章。告別、アダージョ、アレグロ。

冒頭のアダージョは、別れの悲しさを表しているようにも聞こえるが、すぐに終わってしまう。その後のアレグロは、むしろ明るい感じの音楽。

ベートーヴェンは、後から、冒頭のアダージョを付け加えたのではないか。

第2楽章。不在、アンダンテ・エスプレッシーボ。

悲しい感じの曲で、告別という名前には、こちらの方が相応しいの。

第3楽章。再開、ヴィヴィアーチェシスマメンテ。

第2楽章かた切れ目なく演奏される。再開の喜びを表すような、いきいきとした音楽。

ダニエル・バレンボイムによる1983年から1984年にかけて行われた、全曲演奏から。

ワーグナー:オペラ『リエンティ』

ワーグナーが、1840年に完成させたオペラ。

この作品が成功したことにより、ワーグナーは、ドレスデンのオペラ総監督に任命され、その後の大音楽家への道を歩み始めることになった。

オリジナル版では、4時間近い大作のため、通常は、2時間30分ほどに短縮して演奏されることが多い。

古代ローマに実際に存在した護民官リエンティの物語についての原作を、ワーグナーは、最後は自らが助けた民衆に殺される、というドラマティックな物語に改編した。

当時のロマン主義の風潮にあった内容とも思えるし、反民衆、反キリスト教的な内容で、その後のワーグナーの方向性も、すでに現れているようにも見える。

護民官のリエンツィ(テノール)、その娘のイレーネ(ソプラノ)、イレーネを思い続ける貴族派のアドリアーノ(メゾ・ソプラノ)の3人を軸に、物語は進んでいく。

2010年のベルリン・ドイツ・オペラの公演から。

ヒトラーのナチス、リーフェンシュタール、チャップリンの独裁者などの要素を取り入れた、挑戦的な演出がユニークだった。

2015年8月22日土曜日

ショスタコーヴィチ:交響曲第8番

ショスタコーヴィチが、1943年の7月から9月にかけて、一気に書き上げた8番目の交響曲。

時は、第2次世界大戦中で、ナチスのドイツがソビエトに進行、スターリングラードを巡る攻防戦で、ロシア側に多くの死者が出たことから、ショスタコーヴィチは、追悼の意味を込めて、この交響曲を作曲した。

その内容が、あまりにも悲壮的な内容であることから、その後、体制側から批判を浴びて、1960年まで演奏されることがなかった、といういわく付きの作品。

第1楽章。アダージョ、アレグロ・ノン・トロッポ、アレグロ、アダージョ。

出だしは、実に重々しく、追悼というイメージにふさわしい音楽。その後は、いったんアレグロになるが、再び重々しいアダージョに戻ってくる。

第2楽章。アレグレット。

第1楽章とは一転して、コミカルな内容の音楽。

第3楽章。アレグロ・ノン・トロッポ。前の楽章にも増して、コミカルな音楽。耳につきそうな、印象的なメロディを中心に展開する。

ショスタコーヴィチらしい、モダンな音楽が、どうして追悼のための交響曲に組み入れられているのだろうか?

第4楽章。ラルゴ。第3楽章から切れ目なく演奏される。次第に、第1楽章のような、暗い音楽になっていく。

第5楽章。アレグロット、アダージョ、アレグレット。

第1楽章とは逆の展開。アダージョは、第1楽章同様に重苦しいが、ここでは、アレグロットの方が勝っているということか。

しかし、最後には、再び静寂を取り戻すかのように、消え入るようにフィナーレを迎える。

2014年2月、サル・プレイエルでの、サンクトペテルブルク・マリインスキー劇場管弦楽団の演奏。指揮は、ドミートリイ・ショスタコーヴィチ。

ショスタコーヴィチ:交響曲第7番

ショスタコーヴィチが、1941年に作曲した、7番目の交響曲。

この後の、8番、9番と合わせて、第2次世界対戦中に作曲されたため、戦争3部作と言われている。

ヒトラーのファシズムを批判したプロパガンダだと言われたが、のちに本人は、スターリニズムをも批判した、とも語っており、本当のところはよくわからない。

およそ75分の大作で、ショスタコーヴィチの交響曲の中では、もっとも長い。

第1楽章。アレグレット。元は、戦争という副題が付いていた。

冒頭は、壮麗な音楽で、プロパガンダ的にも聞こえる。

続いて、人々の生活を表現しているという、静かな穏やかな音楽が続く。

次に、太鼓が中心になり、軍隊の行進曲のような音楽を奏でる。マーラーの音楽のようでもある。

第2楽章。モデレート。ポコ・アレグレット。元は、回想という副題が付いていた。

クラリネットのソロの悲しげな音楽が心に残る。

第3楽章。アダージョ。元は、祖国の大地、という副題が付いていた。

弦楽器の哀愁のあるメロディで始まり、管楽器がそれを引き継いでいく。

第4楽章。アレグロ・ノン・トロッポ。元は、勝利という副題が付いていた。

勝利という言葉を容易に連想させる、勇ましい音楽。

最後は、壮麗なフィナーレ。

2014年2月、サル・プレイエルでの、サンクトペテルブルク・マリインスキー劇場管弦楽団の演奏。指揮は、ドミートリイ・ショスタコーヴィチ。

ショスタコーヴィチ:交響曲第6番

ショスタコーヴィチが、1939年に作曲した、6番目の交響曲。

第1楽章。ラルゴ。重々しい、神秘的な音楽。まるでブラームスのような重厚な旋律。

最後の方で、フルートが印象的なメロディを奏でる。

全体の半分以上を占める。

第2楽章。アレグロ。クラリネットのコミカルで軽快な音楽で、オーケストラがいっせいに元気を取り戻していく。

第3楽章。プレスト。リズミカルな、軽快でテンポの良い音楽。そのままフィナーレに突入する。

全体的に、フルート、クラリネットなどの管楽器が、重要なパートを担っている交響曲。

2013年12月、サル・プレイエルでの、サンクトペテルブルク・マリインスキー劇場管弦楽団の演奏。指揮は、ドミートリイ・ショスタコーヴィチ。

2015年8月16日日曜日

マーラー:交響曲第9番

マーラーが、1909年に作曲した、9番目の交響曲。

この後、マーラーは第10番の作曲を始めたが、完成しないまま亡くなってしまったため、この交響曲が、完成させた最後の交響曲となった。

第1楽章。アンダンテ・コモド。

ゆっくりと寄せ返す波のような主題が印象的。全体的に静かで、最後は消え入るように終わる。

第2楽章。緩やかなレントラー風のテンポで、いくぶん歩くように、そして、きわめて粗野に。という不思議な指定がされている。

レントラーとは、南ドイツの舞踏音楽。マーラーらしい、コミカルな感じの音楽。

第3楽章。ロンド、ブルレスケ、アレグロ・アッサイ、きわめて反抗的に。

これまたユニークな指定。諧謔的な音楽の後は、重々しい音楽に変化していく。最後は、テンポを上げて、文字通り、反抗的に終わる。

第4楽章。アダージョ。非常にゆっくりと、抑えて。

マーラーの得意の、人生の哀愁を感じさせるアダージョ。

最初と最後の楽章は、緩やかなアンダンテとアダージョ。真ん中の二つの楽章は、スケルツォ的な、コミカルな感じのレントラーとブルレスケ。というユニークな構成の交響曲。

2011年5月。アムステルダムのコンセルトヘボウでの、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の演奏。指揮は、ベルナルト・ハイティンク。

エルガー:チェロ協奏曲

エルガーが1918年に作曲した、唯一のチェロ協奏曲。

第1楽章。アダージョ、モデラート。

チェロの重々しい音楽のソロで始まり、そのまま哀愁のあるオーケストラの主題につながっていく。

第2楽章。レント、アレグロ・モルト。

複雑でまとまりのない印象。

第3楽章。アダージョ。再び、第1楽章のような暗い音楽に逆戻り。

第4楽章。アレグロ、モデラート、アレグロ・マ・ノン・トロッポ。

出だしは軽快な音楽で始まるが、途中から、重々しい音楽がまたまた戻ってくる。

最後は、盛り上がりを見せて終わるが、やや唐突な感じがしなくもない。

2015年2月のN響定期公演から。指揮は、パーヴォ・ヤルヴィ。ヴァイオリンは、アリサ・ワイラースタイン。

2015年8月9日日曜日

ベートーヴェン:ピアノソナタ第25番

ベートーヴェンが、1809年に作曲した25番目のピアノソナタ。

第24番と同じく、10分程度の小曲。この時期、ベートーヴェンは、交響曲第5,6番、ピアノ協奏曲などを作曲しており、ピアノソナタには、こうした小品を作りたかったのかもしれない。

第1楽章。プレスト・アッカ・テデスカ。ト長調。

明るい華やかな音楽。テデスカとは、イタリア語でドイツ風に、という意。

第2楽章。アンダンテ。ト長調。

静かだが、民謡風の印象的なメロディ。

第3楽章。ヴィヴィアーチェ。ト長調。明るく軽快な音楽。

ダニエル・バレンボイムによる1983年から1984年にかけて行われた、全曲演奏から。

ベートーヴェン:ピアノソナタ第24番『テレーゼ』

ベートーヴェンが、4年のブランクの後、1809年に作曲した、24番目のピアノソナタ。

献呈された伯爵令嬢の名前を取って、テレーゼ、と呼ばれている。

わずか10分ほどの小品。

第1楽章。アダージョ・カンタビーレ、アレグロ・マ・ノン・トロッポ。嬰ヘ長調。

華やかで穏やかな音楽。

第2楽章。アレグロ・ヴィヴィアーチェ。嬰ヘ長調。

引き続き、明るい感じで、音楽がリズミカルに進んで行く。

ダニエル・バレンボイムによる1983年から1984年にかけて行われた、全曲演奏から。

ベートーヴェン:ピアノソナタ第23番『熱情』

ベートーヴェンが、1804年から1805年にかけて作曲した、23番目のピアノソナタ。ベートーヴェンのピアノソナタの中でも、最もよく知られている作品のひとつ。

第1楽章。アレグロ・アッサイ。ヘ短調。

情熱的なベートーヴェン、というイメージをそのまま体現したような音楽。

後になって、このピアノソナタには、熱情、という題名が作られたが、この楽章を聴いた人であれば、異論を唱える人はいないだろう。

交響曲第5番の運命に登場する、有名な主題も、すでにこの中に登場している。

第2楽章。アンダンテ・コン・モート。変ニ長調。

第1楽章の熱情を冷ますような静かな音楽。印象的なメロディが美しい。

第3楽章。アレグロ・マ・ノン・トロッポ。ヘ短調。

第1楽章は、情熱を思っきり表に出しているのに比べて、こちらは、内にこもっている、という対照的だが、同じくエネルギッシュな音楽。

ダニエル・バレンボイムによる1983年から1984年にかけて行われた、全曲演奏から。

ベートーヴェン:ピアノソナタ第22番

ベートーヴェンが、1804年に作曲した、22番目のピアノソナタ。

第1楽章。イン・テンポ・ドュ・メヌエット。ヘ長調。

リズミカルな親しみやすい音楽。いきなりメヌエットで始めるあたりが、ユニークな構成。

第2楽章。アレグレット。ヘ長調。

流れるような華麗でありながら、激しさも兼ね備えた音楽。

わずか10分程度の小曲。この時期に、ベートーヴェンは、フィデリオ、交響曲第3番、ラズモフスキー協奏曲などを作曲していたので、息抜き的に、楽しい気分で作ったのかもしれない。

ダニエル・バレンボイムによる1983年から1984年にかけて行われた、全曲演奏から。

ベートーヴェン:ピアノソナタ第21番『ワルトシュタイン』

ベートーヴェンが、1803年から1804年にかけて作曲した、21番目のピアノソナタ。

ベートーヴェンの後援者だった、ワルトシュタイン伯爵に献呈されていることから、そう呼ばれている。

第1楽章。アレグロ・コン・ブリオ。ハ長調。流れるような華麗な音楽。

第2楽章。イントロドュチィオーネ、アダージョ・モルト。ヘ長調。

もともとは、長大な第2楽章があったが、バランスを重視して、後からこの短いものに変えたと言われている。

静かな、瞑想的な音楽。

第3楽章。ロンド、アレグレット・モデラート、プレスティッシモ。

ハンマーを打つ鳴らすような、強烈な音楽が印象的。最後は、壮麗に幕を閉じる。

ダニエル・バレンボイムによる1983年から1984年にかけて行われた、全曲演奏から。


2015年8月8日土曜日

マーラー:交響曲第8番『千人の交響曲』

マーラーが、1906年から1907年にかけて作曲した、8番目の交響曲。

第1部は、交響曲というよりは、オラトリオのような内容で、中世の大司教の詩、”来たれ、創造主たる聖霊よ”からの詩をソロと合唱が歌い、オーケストラが伴奏する。

第2部は、ゲーテのファウストの第2部の最後の場面で構成されている。

最初のパートは、オーケストラによるアダージョで始まり、後半はソロと合唱が合流する。

続いて、合唱が雰囲気をアレグロに引き上げ、その後は、ソロと合唱が全体をリードしてく。

マーラーが自ら指揮をとり初演されたが、マーラーがみずからの耳で演奏を聴くことができた、最後の交響曲になった。

2011年3月、アムステルダムのコンセルトヘボウでの、指揮マリス・ヤンソンス、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の演奏。

2015年8月1日土曜日

マーラー:交響曲第3番

マーラーが、ハンブルグ市立劇場の指揮者をしていた、1895年から1896年にかけて作曲した、3番目の交響曲。

もともとは、それぞれの楽章に表題が付いていたが、マーラーは、誤解を与えるとして、最終的にそれらをすべて削除してしまった。

6つの楽章からなっており、100分を超える長大な交響曲。

第1楽章。力強く、決然と。もとは、夏が行進してくる(バッカスの行進)、という題がついていた。

冒頭のトランペットの短い旋律が印象的。その後にはホルンが続き、行進というイメージを確かに連想させる。

第2楽章。きわめて穏やかに。もとは、野原の花々が私に語ること、という題がついていた。

表題にように、穏やかな音楽で、いろいろな音色が小さな音を奏でる様子が、野原の花々、ということなのかもしれない。

第3楽章。急がずに。もとは、森の動物たちが私に語ること、という題がついていた。

前の楽章に比べると、ややくだけた感じの音楽。最後は、ダイナミックな終わり方。

第4楽章。きわめてゆるやかに、神秘的に 一貫してピアニッシシモで。もとは、夜が私に語ること、という題がついていた。

ニーチェのツァラトゥストラからの詩を、アルトの独唱が静かに歌う。

第5楽章。快活なテンポで、大胆な表出で。もとは、天使が私に語ること、という題がついていた。

子供の不思議な角笛からの詩を、アルト、女声合唱、児童合唱が歌う。第5楽章とは違って、明るい雰囲気。

第6楽章。ゆるやかに、安らぎに満ちて、感情を込めて。もとは、愛が私に語ること、という題がついていた。

静かに始まり、美しい弦楽器の旋律の後、最後は壮大なフィナーレを迎える。

2010年2月、オランダのアムステルダムでのロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の演奏。指揮はマリス・ヤンソン。

2015年7月25日土曜日

ジャック・イベール:ディヴェルティメント

フランスの作曲家、ジャック・イベールが自らの劇用音楽の中から6曲を選んで、1930年に管弦楽用に編曲した作品。

ジャック・イベールは、いわゆるフランスの6人組のメンバーと同窓だった。

メンデルスゾーンの結婚行進曲や軍楽隊の曲をパロディ化したり、遊び心に溢れた曲。

特に、最後のフィナーレは、ジャズのような音楽で、当時のパリのキャバレーの雰囲気を彷彿とさせる。

2013年6月、パリのサル・プレイエルでの演奏。指揮と演奏は、佐渡裕とパリ管弦楽団。

ショスタコーヴィチ:交響曲第5番『革命』

ショスタコーヴィチが、1937年に作曲した、5番目の交響曲。

革命と呼ばれているが、ショスタコーヴィチ自身がなつけたものではない。革命20周年に作られた曲なので、そう呼ばれるようになったのだろう。

スターリン政府からの批判を恐れて、それまでの交響曲とは違って、古典的な構成を持っていると言われている。

第1楽章。モデラート、アレグロ・ノン・トロッポ。ニ短調。

ベートーヴェンの運命のような、印象的な主題で始まる。悲劇的で、シリアスな音楽の第1主題。

後半では、静かな音楽になり、最後は、神秘的な音楽で終わる。

第2楽章。アレグレット。イ短調。

軽妙でユーモラスなスケルツォ。ショスタコーヴィチらしい諧謔さが満載。

第3楽章。ラルゴ。嬰へ短調。

実に物悲しい音楽。ショスタコーヴィチが、こんな悲しい音楽が書けるのか?と思うくらいに悲しい。

後半はよりドラマティックな展開になり、悲しみが一層増してくる。

第4楽章。アレグロ・ノン・トロッポ。ニ短調。

冒頭の大太鼓の合図とともに、雄大な主題が演奏される。

最後は、弦楽がずっと同じ音をリフレインで演奏し、壮大なフィナーレを迎える。

2013年12月、パリのサル・プレイエル、ヴァレリー・ゲルギエフ指揮、サンクトペテルブルク・マリインスキー劇場管弦楽団の演奏。

ショスタコーヴィチ:交響曲第4番

ショスタコーヴィチが、1935年から1936年にかけて作曲した、4番目の交響曲。

1時間を超える大曲で、ショスタコーヴィチの交響曲の中でも最長の曲。8ヶ月の期間をかけて作曲され、自分の音楽のクレド、と呼ぶほど入れ込んでいた。

当時、ショスタコーヴィチは、マーラーをよく研究しており、その影響は、この交響曲に色濃く現れている。

スターリンの粛清がすでに始まっており、批判を恐れたショスタコーヴィチは初演を避けて、この曲の初演は、1961年に行われた。

第1楽章。アレグレット・ポコ・モデラート、プレスト。マーラーらしい、壮大な音楽で始まるが、次々と、様々な音楽が展開する。

30分ほどもある長い楽章だが、最後は、消え入るように終わる。

第2楽章。モデラート・コン・モト。第1楽章の緊張感から解放されて、軽妙な音楽で始まる。短い楽章。

第3楽章。ラルゴ、アレグロ。静かな音楽で始まる。次第にショスタコーヴィチらしいエキセントリックな、あるいはコミカルな音楽へ変貌していく。

こちらも、第1楽章に負けないほど長い楽章だが、やはり最後は消え入るように終わる。

2013年12月、パリのサル・プレイエル、ヴァレリー・ゲルギエフ指揮、サンクトペテルブルク・マリインスキー劇場管弦楽団の演奏。

ベートーヴェン:ピアノソナタ第20番

ベートーヴェンが、1976年に作曲し、1805年に第19番とともに発表したピアノソナタ。

生活のために、ピアノの生徒用の練習曲として出版したと言われている。

いずれも短い曲なので、ソナチネ、ともよばれている。

第1楽章。アレグロ・マ・ノン・トロッポ。ト長調。聞きなれた明るい音楽。

練習曲という位置つけからか、何度も転調を繰り返す。

第2楽章。テンポ・ディ・メヌエット。ト長調。軽やかなメヌエット。

ダニエル・バレンボイムによる1983年から1984年にかけて行われた、全曲演奏から。

ベートーヴェン:ピアノソナタ第19番

ベートーヴェンが、1798年に作曲し、1805年に第20番とともに発表したピアノソナタ。

わずか2つの楽章からなる小品だが、シンプルでミニマルな音楽は、深い印象を聴くものの心に刻む。

第1楽章。アンダンテ。ト短調。静かに一音一音を祈るように奏でる曲。

第2楽章。ロンド、アレグロ。ト長調。一転して明るい軽やかな曲だが、所々で哀愁を感じさせる音楽も聞こえてくる。

ダニエル・バレンボイムによる1983年から1984年にかけて行われた、全曲演奏から。

ベートーヴェン:ピアノソナタ第18番

ベートーヴェンが、1802年に作曲した18番目のピアノソナタ。第16,17番とともに発表されたが、この曲だけが4つの楽章で構成されている。

第1楽章。アレグロ。変ホ長調。音が空中を飛び跳ねていくような、軽やかな出だし。

第2楽章。スケルツォ、アレグロ・ヴィヴィアーチェ。変イ長調。せわしないほどの軽快な音楽。

第3楽章。メヌエット、モデレート・エ・グラッツィオーゾ。変ホ長調。ようやく一息つける、といった感じのゆったりとした曲。

第4楽章。プレスト・コン・フオコ。変ホ長調。再び流れの速い音楽。音の激しさも加わっている。

ダニエル・バレンボイムによる1983年から1984年にかけて行われた、全曲演奏から。

ベートーヴェン:ピアノソナタ第17番『テンペスト』

ベートーヴェンが1802年に作曲した、17番目のピアノソナタ。

ベートーヴェンの弟子が、この曲の解釈について尋ねたところ、ベートーヴェンが、テンペストを読め、と答えたことから、テンペストと呼ばれる。

第1楽章。ラルゴ、アレグロ。ニ短調。印象的な主題と、ドラマティックな展開で、ベートーヴェンらしい音楽。

この音楽が、テンペストからインスピレーションを得たのだろうか。

第2楽章。アダージョ。変ロ長調。哀愁に満ち、力強さもあるアダージョ。

第3楽章。アレグレット。ニ短調。非常に有名な音楽。主題も、その後の展開も華麗。運命交響曲の第1楽章の展開を連想させる。

ダニエル・バレンボイムによる1983年から1984年にかけて行われた、全曲演奏から。

ベートーヴェン:ピアノソナタ第16番

ベートーヴェンが1802年に作曲した、16番目のピアノソナタ。

第1楽章。アレグロ・ヴィヴィアーチェ。ト長調。軽快な音楽で、まさにヴィヴィアーチェ。

第2楽章。アダージョ・グラッツィオーゾ。ハ長調。対照的に、静かで優雅な曲。ただし、弾くのは難しそう。

第3楽章。ロンド、アレグレット。ト長調。軽快で明るい音楽だが、所々で、哀愁を帯びたメロディが流れる。

ダニエル・バレンボイムによる1983年から1984年にかけて行われた、全曲演奏から。

2015年7月20日月曜日

ショスタコーヴィチ:ピアノ協奏曲第1番

ショスタコーヴィチが、1933年に作曲した、最初のピアノ協奏曲。

トランペットが大きな役割を果たしている。

第1楽章。アレグレット。様々な音楽が現れては消える、せわしない。

第2楽章。レント。一転して、静かで神秘的な音楽。どこかで聞いたことがあるような音楽でもある。

特に、トランペットとピアノのやり取りは、悪魔的な美しさをもった音楽だ。

第3楽章。モデラート。ピアノだけの短い楽章。

第4楽章。アレグロ・コン・ブリオ。管弦楽の重厚で不安を掻き立てる音楽で始まるが、やがて、ショスタコーヴィチらしい、せわしない、エキセントリックなけたたましい音楽になる。

ここでもトランペットが重厚な役割を演じ、ピアノとともに、管弦楽が奏でる古典的な音楽を、揶揄するかのように、現代音楽の世界に引きずり込んでいく。

2013年12月、パリのサル・プレイエルでの演奏。ピアノはダニール・トリフォノフ、トランペットはティムール・マルティノフ、指揮はヴァレリー・ゲルギエフ指揮、演奏はマイリンスキー劇場管弦楽団。

ショスタコーヴィチ:交響曲第3番『メーデー』

ショスタコーヴィチが、1929年に作曲した、3番目の交響曲。

第2番同様、楽章は1つ。5つの部分から構成されており、最後のパートは合唱になっている。

音楽は、第2番ほどは、前衛的な内容ではないが、相変わらず、エキセントリックな音楽。

出だしは、木管楽器の静かな音楽で始まるが、次のパートのアレグロから、ショスタコーヴィチらしい音楽になってくる。

合唱の前のアレグローラルゴのパートは、ホルンや大太鼓を使ったダイナミックな音楽で、この交響曲の聴きどころ。

ショスタコーヴィチは、メーデーという労働者のお祭りに相応しい、祝祭的な音楽を作ろうとしたようだ。

2013年1月、パリのサル・プレイエルでの、ヴァレリー・ゲルギエフ指揮、マイリンスキー劇場管弦楽団の演奏。

ショーソン:愛と海の詩

ショーソンが、ワーグナーの音楽に影響を受けて、1882年〜1890年にかけて作曲した、管弦楽付きの歌曲。

ショーソンは、バイロイトを度々訪れてワーグナーのオペラを聴くほど、ワーグナーの音楽に入れ込んでいた。

年下のドビュッシーを伴ってバイロイトを訪れたこともある。

友人の詩集から6つの詩を選び、それぞれ水の花、愛の死、という2つのパートの曲として、間に短い間奏曲を置いた。

詩の内容は、リラの花、美しい少女、枯葉、夜の海、恋の終わり・・・など、象徴的な内容。

音楽は、そうした詩のコンセプトを盛り上げる、ワーグナーらしい壮大さと、フランス音楽らしい繊細さが癒合した、実に美しい音楽。

2015年5月に行われたNHK交響楽団の定期公演から。指揮は、デーヴィッド・ジンマン。ソプラノはマレーナ・エルンマン。

ラヴェル:シェエラザード

ラヴェルが、1903年に友人の同名の詩集をもとに作曲した、管弦楽付きの歌曲。

ラヴェルは、スペイン人の母を持ち、モロッコを訪れたことがあり、それがアジアという地域へのイメージの元になっていた。

千夜一夜物語の主人公の名を持つこの詩集から、多くのインスピレーションを得たのだろう。

アジア、魔法の杖、つれない人、という3つの曲から構成されている。

アジアという地域に対して、ヨーロッパ人が抱くイメージを、ラヴェルは緩急を織り込んだ様々な音楽で、時にアラビア風の音も使いながら、実に見事に表現している。

2015年5月に行われたNHK交響楽団の定期公演から。指揮は、デーヴィッド・ジンマン。ソプラノはマレーナ・エルンマン。



ラヴェル:組曲『マ・メール・ロワ』

ラヴェルは、1908年〜1910年にかけて、マ・メール・ロワ(マザー・グース)を題材に、この曲をピアノの連弾用の曲として作曲した。

その後、1911年に管弦楽用の組曲として編曲した。

以下の5つの曲から構成されている。

1. 眠れる森の美女のパヴァーヌ
2. 親指小僧
3. パゴダの女王レドロネット
4. 美女と野獣の対話
5. 妖精の園

ラヴェルらしい、華麗で、時に哀愁を感じさせる、幻想的な雰囲気を漂わせた音楽。

2015年5月に行われたNHK交響楽団の定期公演から。指揮は、デーヴィッド・ジンマン。

2015年7月19日日曜日

ベートーヴェン:ピアノソナタ第15番『田園』

ベートーヴェンが1801年に作曲した、15番目のピアノソナタ。

田園、という名前で呼ばれるが、これもベートーヴェン自身が名付けたものではない。

第1楽章。アレグロ。ニ長調。アレグロだが、優雅で牧歌的な音楽。田園と名付けられたのもよくわかる。

第2楽章。アンダンテ。ニ短調。こちらは牧歌的ではなく、やや暗い感じの曲。ショパンの雨だれと共通するものを感じる。

第3楽章。スケルツォ、アレグロ・ヴィヴィアーチェ。ニ長調。テンポのいいスケルツォ。とても短い。

第4楽章。ロンド、アレグロ・マ・ノン・トロッポ。ニ長調。いわゆる対位法的な音楽が使われていて、壮麗な感じがする音楽。最後は、華麗な雰囲気で終わる。

ダニエル・バレンボイムによる1983年から1984年にかけて行われた、全曲演奏から。

ベートーヴェン:ピアノソナタ第14番『月光』

ベートーヴェンが、第13番とともに、1801年に作曲した、14番目のピアノソナタ。

現在では、月光という名で呼ばれるが、ベートーヴェン自身が名つけたものではなく、死後、そのように呼ばれるようになった。

ベートーヴェン自身は、第13番と合わせて、幻想曲風ソナタ、と呼んでいた。

14歳年下で、当時ベートーヴェンが想いを寄せていた女性、いわゆる、不滅の恋人のために書いた、と言われている。

第1楽章。アダージョ・ソステヌート。嬰ハ短調。この静謐な極上の音楽ゆえに、月光という名がつけられた。

天上の音楽とは、このような音楽のことを言うのだろう。

第2楽章。アレグレット。嬰ハ長調。古典的な香りがする、優雅な曲。天国からの階段を降りている、といった感じか。

第3楽章。プレスト・アジタート。嬰ハ短調。一転して、エネルギッシュで、ドラマティックな音楽。地上の人間界に降りてきた感じがする。

第1,2楽章と第3楽章とのコントラストが激しく、天使と悪魔が同居しているような曲。

ダニエル・バレンボイムによる1983年から1984年にかけて行われた、全曲演奏から。

ベートーヴェン:ピアノソナタ第13番

ベートーヴェンが、第14番『月光』といっしょに作った13番目のピアノソナタ。

ベートーヴェン自身は、この二つを合わせて、幻想曲風ソナタ、という副題を付けて発表した。

第1楽章。アンダンテ、アレグロ。変ホ長調。子守唄のような静かな音楽と、やや激しい音楽が交互に登場する。

第2楽章。アレグロ・モルト・ア・ヴィヴィアーチェ。ハ長調。ベートーヴェンが名付けたような、幻想的な音楽で綴られる短い楽章。

第3楽章。アダージョ・コン・エスプレッシオーネ。変イ長調。美しいアダージョ。

第4楽章。アレグロ・ヴィヴィアーチェ。変ホ長調。アダージョからいきなり、生き生きとしたアレグロに入るので、その変化が劇的。

最後は、再びアダージョのような感じになってから、一気にテンポを上げて劇的に終わる。

ダニエル・バレンボイムによる1983年から1984年にかけて行われた、全曲演奏から。

ベートーヴェン:ピアノソナタ第12番

ベートーヴェンが、1800年から1801年にかけて作曲した、12番目のピアノソナタ。

ベートーヴェンのピアノソナタ全体の中で、中期に位置つけられる作品。

第1楽章。アンダンテ・コン・バリアツィオーニ。変イ長調。静かで哀愁に満ちた主題と、その変奏で構成された楽章。

第1楽章から、実に内省にあふれた音楽になっている。

第2楽章。スケルツォ、モルト・アレグロ。変イ長調。軽快なスケルツォだが、骨格がしっかりしている。

第3楽章。マエストーゾ・アンダンテ。変イ短調。いわゆる葬送行進曲。

第4楽章。アレグロ。変イ長調。軽快だが力強い楽章。ジャーン、というベートーヴェンの独特の音楽が印象的。ただし、最後は静かに終わる。

ダニエル・バレンボイムによる1983年から1984年にかけて行われた、全曲演奏から。

ベートーヴェン:ピアノソナタ第11番

ベートーヴェンが1800年に作曲した、11番目のピアノソナタ。

第1楽章。アレグロ・コン・ブリオ。変ロ長調。出だしは流れる様な軽快な音楽。やがて力強さが目立つようになり、最後は、勇壮な感じで終わる。

第2楽章。アダージョ・コン・モルト・エスプレッシオーネ。変ホ長調。静かな音楽で始まり、少しづつ、哀愁のあるメロディに変わっていく。

第3楽章。メヌエット。変ロ長調。明るいメヌエット、と思いきや、アレグロのような力強いメロディが現れる。

第4楽章。ロンド、アレグロット。劇的な音楽。宗教音楽のカノンのような、壮麗な音楽で、ピアノソナタの枠を超えている。

3大ソナタほどの派手さはないが、聴きどころが多いピアノソナタ。

ダニエル・バレンボイムによる1983年から1984年にかけて行われた、全曲演奏から。

2015年7月11日土曜日

ベートーヴェン:合唱幻想曲

ベートーヴェンが、1808年に作曲した、ピアノ、管弦楽、合唱のために作曲した曲。

7つのパートからなる。

最初は、ピアノの独奏によるアダージョ。アダージョから始まるのも珍しいが、出だし部分はアダージョにしては、壮麗なかんじがする。

続くアレグロのパートでは、ピアノが奏でたテーマを、管弦楽の楽器が次々と変奏していく。

合唱は、6番目のパートで登場する。歌詞の内容は、芸術と歓喜に関する内容。

歌詞の内容もさることながら、合唱のメロディも第9によく似ている。ベートーヴェンはすでに第9のアイデアをこの時期には持っていたことがわかる。

2014年5月にイスラエルのテルアビブで行われた、第14回ルービンシュタイン国際ピアノ・コンクールでの40周年記念コンサートから。

ストラヴィンスキー:バレエ曲『結婚』

ストラヴィンスキーが、1923年に完成させた、ディアギレフのバレエ・リュスのために作られた音楽。

ストラヴィンスキーは、様々なロシア民謡をもとに、この曲を作曲しており、民謡風であり、現代音楽風でもあり、また宗教音楽の様な不思議な音楽になっている。

第2部、4つの場面から構成されており、ナスタシアという花嫁がお嫁に行く様子が描かれている。

音楽の曲調は全体を通じてそれほど変わらず、終始エキセントリックな曲調を維持し続ける。

2014年5月にイスラエルのテルアビブで行われた、第14回ルービンシュタイン国際ピアノ・コンクールでの40周年記念コンサートから。

バルトーク:2台のピアノと打楽器のためのソナタ

バルトークが1937年に作曲した、文字通り、2台のピアノと打楽器のためのソナタ。

2台のピアノと打楽器というユニークな構成は、バルトークの意欲的な試みが感じられる。

第1楽章は、始めは、大きな怪物が、のしのしとこちらに向かってくる様な、不安な音楽で始まるが、やがて、軽快な現代音楽に変わっていく。

ピアノの激しい拳打の後に、ドラムと木管楽器の拳打が続く。バルトークは、ピアノの打楽器的な性格をうまく使っている。

第2楽章。一転して、ピアノと打楽器の静かな音楽。

第3楽章。軽快で楽しげな音楽。ピアノと木管楽器が会話をしている様でおもしろい。

2014年5月にイスラエルのテルアビブで行われた、第14回ルービンシュタイン国際ピアノ・コンクールでの40周年記念コンサートから。

ベートーヴェン:ピアノソナタ第10番

ベートーヴェンが、1798年から1799年にかけて、第9番とともに作曲したピアノソナタ。

第1楽章。アレグロ。ト長調。軽やかで、流れる様な音楽。

第2楽章。アンダンテ。ハ長調。行進曲の様で、コミカルな味わい。小規模ながら、不思議な魅力を持った楽章。

第3楽章。スケルツォ、アレグロ アッサイ。ト長調。第2楽章の雰囲気をそのまま引き継いだ様なスケルツォで始まる。

軽快な雰囲気はそのままで、次々と細かい音が続いた軽快な音楽で、そのままヒッソリと終わりを迎える。

ダニエル・バレンボイムによる1983年から1984年にかけて行われた、全曲演奏から。

ベートーヴェン:ピアノソナタ第9番

ベートーヴェンが、1798年から1799年にかけて、次の第10番とともに作曲したピアノソナタ。

第1楽章。アレグロ。ホ長調。最初の主題は、第8番とは打って変わって、古典的な出だし。もう一つの主題は、ややドラマチックな音楽。

第2楽章。アレグレット。ホ短調。抑制の効いた、小気味のいい音楽。

第3楽章。ホ長調。ロンド、アレグレ コモド。第1,2楽章に比べると明るいが、やはりどこかで抑制が効いている気がする。

まるで、バッハの平均律クラウディアを思わせる、古典的なピアノソナタ。

ダニエル・バレンボイムによる1983年から1984年にかけて行われた、全曲演奏から。

ショスタコーヴィチ:交響曲第2番

1927年に、国立出版社から、10月革命10周年を記念する曲として依頼され、それに基づいて作曲した、2番目の交響曲。

単独の楽章からなり、無調であるという、いわゆる現代音楽だったせいで、その後のソ連では、演奏される機会はほとんどなかった。

楽章は一つだが、全体は、いくつかのパートからなっている。

途中、27種の音による、まったく楽器同士の関連性のない、ウルトラ対比法と呼ばれる部分があり、この交響曲の聞きどころになっている。

その後、しばらく、静かな展開が続くが、突如、サイレンが鳴り響き、合唱が始まる。

合唱のセリフの中では、レーニンとその革命が、讃えられる。

いわゆるロシアアヴァンギャルドの時代の、自由の息吹を今に伝える、といった感じの若々しい交響曲だ。

ヴァレリー・ゲルギエフ指揮、マイリンスキー劇場管弦楽団による、2013年1月、パリのサル・プレイエルでの演奏。

ショスタコーヴィチ:交響曲第1番

ショスタコーヴィチが、1925年に作曲した最初の交響曲。まだ、19才の若さだった。

第1楽章。静かに始まり、最初の主題はややコミカルな、落ち着きのない感じの音楽。もう一つの主題は、反対にけたたましい。

第2楽章。アレグロ、メノ・モッソ。軽快なスケルツォ。途中でゆったりとした音楽になる。

ピアノの奏でるメロディは、いかにもショスタコーヴィチらしい。

第3楽章。レント。オーボエの間の抜けたような、夢の中を彷徨うような、不思議な音で始まり、チェロがそれを引き継いで、オーケストラに音が広がっていく。ユニークな始まり方。このあたりも、ショスタコーヴィチらしい展開。

第4楽章。レント、アレグロ・モルト。前の楽章の終わりから、小太鼓の連打でそのまま第4楽章へ。

始めは、第3楽章と同じ様な音楽だが、次第にアレグロへ。ピアノが効果的に使われている。

現代音楽らしいけたたましい演奏の後、静寂が訪れ、大太鼓がこの交響曲の終盤を告げる合図の後、チェロの哀愁のある音楽が奏でられ、やがてフィナーレに突入する。

まだ10代で作ったこの曲には、すでに、その後のショスタコーヴィチの交響曲の主な要素がすでに表れていたようだ。

2013年1月、パリのサル・プルイエルでの、ゲルギエフ指揮、マイリンスキー劇場管弦楽団による演奏。

2015年7月5日日曜日

ベートーヴェン:ピアノソナタ第8番『悲愴』

ベートーヴェンが、1798年に作曲した、8番目のピアノソナタ。

第14番、23番と並んで、ベートーヴェンの3大ピアノソナタの一つ。

第1楽章 グラーヴェ、アレグロ エ モルト コン ブリオ。ハ短調。

ベートーヴェンのそれまでのピアノソナタとは、全く違う出だしで、一体、この作曲家の中で、何が起こったのか、と考えてしまう。

聴くものの心の不安をかき立て、もっと次が聴きたい、と思わせる、ドラマティックな展開を持っている。

静かな第1主題と、軽快な第2主題のコントラストが美しい。

第2楽章 アダージョ カンタビーレ。変イ長調。第1楽章に衝撃を受けた後で、この楽章を聴くと、再び打ちのめされる。

この音楽を聴く人は、どうしても、自分の心と対話せざるを得なくなるほど、内省に引き込まれていく。

ベートーヴェンの数ある曲の中でも、屈指のアダージョ。

第3楽章 ロンド、アレグロ。ハ短調。哀愁に満ちた第1主題と軽快な第2主題の後で、この第3楽章の音楽は、前の2つの楽章の衝撃を邪魔しない程度に抑えられている。

ダニエル・バレンボイムによる1983年から1984年にかけて行われた、全曲演奏から。

グラス:オペラ『パーフェクト・アメリカン』

アメリカの作曲家、フィリップ・グラスが、この公演のために作曲した、ウォルト・デズニーをテーマにしたオペラ。

死の床にあるディズニーが、自分の生涯を振り返る、という構成。

リンカーン大統領、アンディ・ウォーホルら、アメリカを代表するヒーローたちが登場する。

ディズニーの、スタジオで働くアニメーターたちとの微妙な関係など、アメリカン・ドリームの象徴であるウォルト・デズニーの、批判的な側面も描かれている。

フィリップ・グラスは、ミニマル・ミュージックの音楽で知られるが、オペラということもあってか、多彩な音楽で構成されているが、キーとなる主題は、ミニマルらしい、印象的なメロディだ。

現代のオペラも、それほど悪くないじゃない、と思わせてくれる。

2014年12月、スペインのマドリード、レアル劇場での公演から。

2015年7月4日土曜日

ベートーヴェン:ピアノソナタ第7番

ベートーヴェンが、1798年に作曲した、7番目のピアノソナタ。

第5,6番とともに発表された。先の2曲は、3つの楽章しかないが、この曲は、4つの楽章を持っている。

第1楽章 プレスト。二長調。プレストで始まる珍しい第1楽章。そのせいか、軽快な音楽だが、ややせわしない印象を受ける。

第2楽章 ラルゴ エ メスト。ニ短調。重々しく、ゆるやかな音楽。

第3楽章 メヌエット、アレグロ。穏やかで、文字通り、メヌエットという感じの音楽。

第4楽章 ロンド、アレグロ。冒頭では、前の楽章からの緩さを引き継ぎつつ、急にテンポをあげる。

音楽は、決して深刻なものではなく、軽快な音楽を、楽しむことに終始している。終わり方も実に静か。

ダニエル・バレンボイムによる1983年から1984年にかけて行われた、全曲演奏から。

ベートーヴェン:ピアノソナタ第6番

ベートーヴェンが、1798年に作曲した、6番目のピアノソナタ。

第5,7番とともに発表された。

第1楽章 アレグロ。ヘ長調。明るさと、勇壮さを兼ね備えた曲。

第2楽章 アレグレット。ヘ短調。ゆっくりとした、穏やかな曲。

第3楽章 プレスト。ヘ長調。軽快なテンポのいい音楽だが、あっという間に終わってしまう。

ダニエル・バレンボイムによる1983年から1984年にかけて行われた、全曲演奏から。

ベートーヴェン:ピアノソナタ第5番

ベートーヴェンが、1798年に作曲した、5番目のピアノソナタ。

第6、7番とともに発表された。

第1楽章 アレグロ モルト エ コン ブリオ。ハ短調。やや悲しげで、激しさも伴った、ベートーヴェンらしい音楽。最後は劇的に終わる。

第2楽章 アダージョ モルト。変イ長調。静かに瞑想をするような音楽と、突然その沈黙を破るような、2つの違ったメロディが交差する。

第3楽章 フィナーレ、プレスティッシーモ。ハ短調。流れるようなメロディが基調だが、所々で、ジャーン、とベートーヴェンらしい激しさが現れる。

これまでは4つの楽章を持っていたピアノソナタが、ここでは、初めて3つの楽章となった。

ダニエル・バレンボイムによる1983年から1984年にかけて行われた、全曲演奏から。

ベートーヴェン:ピアノソナタ第4番

ベートーヴェンが、1797年に作曲した、4番目のピアノソナタ。

第1楽章 アレグロ モルト エ コン ブリオ。変ホ長調。強弱のはっきりした、テンポのある音楽。見るからに、弾くのが大変そうな、高度な指使い。

第2楽章 ラルゴ コン グラン エスプレッシオーネ。ハ長調。対照的なゆっくりとしたメロディ。途中、激情的な、まさにグラン エスプレッシオーネな音楽が、奏でられる。

第3楽章 アレグロ。変ホ長調-変ホ短調。長調から短調への変化が印象的。メロディは、軽快で美しい。

第4楽章 ロンド、ポコ アレグレット エ グラッチオーゾ。変ホ長調。前半は穏やかな音楽だが、後半、やや激しさを増す。パッショネートといった感じ。最後は、再び穏やかな音楽に戻り、平穏に終わる。

ダニエル・バレンボイムによる1983年から1984年にかけて行われた、全曲演奏から。

2015年7月1日水曜日

ベートーヴェン:ピアノソナタ第3番

ベートーヴェンが、第1、2番とともに、1795年に作曲した、3番目のピアノソナタ。

第1、2番同様、ハイドンに献呈されている。

第1楽章 アレグロ コン ブリオ。壮麗で、かつ、流れるような、王道の音楽。この楽章単独でも、十分に楽しめる。

第2楽章 アダージョ ホ長調。一転して、心静かに、瞑想をしているような音楽。途中から、音の強弱をうまく使った、神秘的なメロディが奏でられる。

第3楽章 スケルツォ、アレグロ。軽快なスケルツォ。

第4楽章 アレグロ アッサイ。単純だが、軽快なメロディが延々と続く。

前半の2つの楽章は、実に複雑な構成だが、後半の2つの楽章は実にシンプル。好対照な構成のピアノソナタ。

ダニエル・バレンボイムによる1983年から1984年にかけて行われた、全曲演奏から。

ベートーヴェン:ピアノソナタ第2番

ベートーヴェンが、第1、3番とともに、1795年に作曲した、2番目のピアノソナタ。

第1番同様、ハイドンに献呈されている。

第1楽章 アレグロ ヴィヴィアーチェ イ長調。明るく軽快な音楽。続く主題では、冒頭の明快で、激情的な主題が印象的。

両手の演奏が、早口で会話をしているような演奏がユニーク。

第2楽章 ラルゴ アパッショネート 二長調。一転して、重々しい行進曲のような音楽。途中、内省に浸るような静かな音楽のあと、激情的な音楽が演奏される。

第3楽章 スケルツォ。ベートーヴェンは、ピアノソナタという音楽形式に、初めてスケルツォを持ち込んだ。

古典的な匂いのする、ピアノの練習のためのような音楽。

第4楽章 ロンド グラティオーゾ。静かな穏やかな調子で始まるが、続く主題は、ダイナミックな音楽に変わる。その後の展開は、実に華やかだが、いつのまにか終わってしまう。

ダニエル・バレンボイムによる1983年から1984年にかけて行われた、全曲演奏から。

ベートーヴェン:ピアノソナタ第1番

ベートーヴェンが、第2、3番とともに、1795年に作曲した、最初のピアノソナタ。

師のハイドンに献呈されている。

第1楽章 アレグロ ヘ短調。単調だが、明るく、軽快な音楽。

第2楽章 アダージョ ヘ長調。敬虔な気持ちにさせる、静謐な音楽。

第3楽章 メヌエット、アレグロ ヘ短調。バッハのピアノ曲を連想させる、軽快で華やかな音楽。

第4楽章 プレスティッシーモ ヘ短調。ベートーヴェンらしい、激しく、パッショネートな音楽で始まる。続く、穏やかな音楽との協奏となり、最後は静かに終わる。

ベートーヴェンの32曲のピアノソナタの第1曲目。25歳にして、すでに完成されたピアノソナタを作曲していた。

ダニエル・バレンボイムによる1983年から1984年にかけて行われた、全曲演奏から。

2015年6月27日土曜日

ブリテン:オペラ『ベニスに死す』

イギリスの作曲家、ベンジャミン・ブリテンが1973年に作曲した最後のオペラ。

原作は、トーマス・マンの同名の小説。ルキノ・ヴィスコンティの映画で有名。

音楽は、いかにも現代のオペラといった不協和音的だが、最後はさすがに、死の厳粛な雰囲気を表現している。

途中、東南アジアの音楽ような、不思議な音楽も登場する。

ディオニソス、アポロが登場し、主人公を自分の世界に引き込もうと画策する。世紀末の雰囲気がプンプンする。

2014年12月、スペインのマドリード、レアル劇場での演奏。大胆な演出で楽しませてくれた。

バッハ:ヨハネ受難曲

バッハが、ヨハネによる福音書の第18, 19章をもとに作曲した、オーケストラと合唱団、ソロシンガーたちのための音楽。

1724年にドイツ、ライプツィヒの聖トーマス教会において初演されたといわれる。バッハが、この教会に来てから迎えた、最初の聖金曜日のことだった。

マタイ受難曲よりは、知名度は低い。

最初のコーラスがとても印象的。その後は、とりわけ心象に深いメロディはないが、マタイ受難曲に比べて、2時間と短く、全体的にバランスがとれている。

1970年、カール・リヒターの指揮で、ドイツ、ミュンヘンのクロスター修道院付属教会での演奏された。

2015年6月21日日曜日

バッハ:マタイ受難曲

バッハが、マタイによる福音書の第25, 26章をもとに作曲した、オーケストラと合唱団、ソロシンガーたちのための音楽。

1727年にドイツ、ライプツィヒの聖トーマス教会において初演された。

バッハの死後、長く忘れられていたが、メンデルスゾーンが1829年に復活上演を行い、その後、よく知られるようになった。

現在は、およそ3時間かけて、二部構成で68曲が演奏される。

わずか本にして10ページか20ページほどの内容を、悲しみや喜びなどの表現を織り交ぜながら、これほど壮大な音楽を作り上げてしまう、バッハという音楽家の凄みが感じられる。

中でも、15曲目、39曲目、そして最後のコーラスがよく知られていて、敬虔な場面、悲劇的な場面での効果音として使われる。

1971年に、カール・リヒターの指揮のもとに演奏され、映像化された。

背後の壁を白で統一し、真上に、巨大な十字架を設置した、印象的な舞台構成は、この曲の敬虔な内容を、より引き立てている。

2015年6月14日日曜日

プッチーニ:オペラ『トゥーランドット』

プッチーニの最後のオペラとなった作品。

プッチーニは、1920年からこの作品を作り始めたが、途中スランプに陥り、やがて喉頭癌になってしまい、未完のまま1924年にこの世を去ってしまった。

アラビア、ペルシャ地方に伝わる謎かけ姫の伝説がもとになっていて、舞台は中国に設定されている。

作られた時代もあるが、ヨーロッパから見たアジアのイメージが満開した内容になっていて、いわゆる”オリエンタリズム”丸出しの内容。

しかし、アジアで行われるヨーロッパの有名歌劇団の公演では好んで取り上げられる演目でもあり、そのオペラをありがたがるアジア側の姿勢を見ると、お互い様といったところか。

第3幕の”誰も寝てはならぬ”という主人公、カラフのアリアが超有名。

男性全体に復讐心を抱いている冷酷無比なトゥーランドットと、カラフに一途な愛を捧げる女召使リューの対比が、このオペラの鍵になっている。

2008年に行われた、バレンシア州立歌劇場での公演から。

指揮は、ズビン・メータ。舞台演出は、映画監督のチェン・カイコーが担当している。

2015年6月7日日曜日

ベルリオーズ:歌曲『夏の夜』

ベルリオーズが、テノールやメゾソプラノ用に、1840年に作曲した、6つの曲からなる歌曲集。

もとになっている詩は、交友もあったゴーティエの『死の喜劇』から採られている。

第1曲のヴィラネル、第2曲のばらの精、は明るく華やかな曲だが、その後の3から5曲目は、別れや死がテーマになった曲で、悲しく哀愁のこもった音楽になっている。

第6曲の道の鳥では、再び明るさを取り戻し、新たな愛を求める心を歌っている。

幻想交響曲のダイナミックなイメージとは違った、繊細なベルリオーズの音楽世界を堪能できる。

2013年11月にロンドンのバービカンセンターで行われた公演から。指揮はヴァレリー・ゲルギエフ、メゾソプラノはカレン・カーギル、演奏はロンドン交響楽団。

2015年5月16日土曜日

細川俊夫:時の花

細川俊夫が、ピアニストの児玉桃の依頼を受けて、2008年のルツェルン音楽祭のために作曲した作品。

クラリネット、ヴァイオリン、チェロ、ピアノのための -オリヴィエ・メシアンへのオマージュ。という副題が付いている。

メロディというより、ささやかな音を積み重ねるように構成されている。

ソファの上にでも寝転がりながら、静かな気分で聴きたくなる音楽。

2011年のメシアン音楽祭から。ピアノは児玉桃、クラリネットはポール・メイエ、チェロはアンリ・ドマルケット、そしてヴァイオリンはテディ・パパヴラミ。

メシアン:ヴァイオリンとピアノのための幻想曲

メシアンが、1933年に作曲した、ヴァイオリンとピアノのための小品。

ピアノの印象あるメロディに始まり、ヴァイオリンによる、この世のものとは思えない、不思議な旋律で終わりを迎える。

短い作品ながら、メシアンの音楽の特徴が凝縮されたような作品になっている。

2011年のメシアン音楽祭から。ピアノは児玉桃、ヴィオリンはテディ・パパヴラミ。

2015年4月26日日曜日

ベートーヴェン:オペラ『フェデリオ』

ベートーヴェンが完成させた唯一のオペラ。1805年の初演以降、何度か改定されている。

ベートーヴェンというと、交響曲、弦楽四重奏、ピアノソナタなど、厳格な構成のがっちりとした器楽曲のイメージが強い。

しかし、その一方で多くの歌曲も作曲しており、このオペラでは、運命交響曲とは違ったベートーヴェンを楽しむことができる。

原作は、当時の時代背景を反映した自由主義思想の内容で、牢屋に囚われた政治犯の夫を救う、献身的だが行動力のある妻、レオノーレが主人公。

レオノーレが、男装して牢に忍び込むのだが、そのとき使った名前が、フィデリオ。

牢の中という閉鎖された空間で繰り広げられる愛憎劇は、イタリアの激情的なオペラのようでもあり、後のワーグナーの陰鬱な神々の世界をも予感させる。

特に、主要な出演者が揃って、合唱も交えて歌うフィナーレは、圧倒的な迫力で聞くものに迫り、後の第9を連想させる。

2013年9月にドイツのボンで行われた、ベートーヴェン音楽祭公演での演奏は、台詞部分を省いた、演奏会形式での公演。

ベートーヴェンの音楽面がより強調された内容となった。

指揮はパーヴォ・ヤルヴィ、演奏はドイツ・カンマーフィルハーモニー管弦楽団。

フロレスタンにブルクハルト・フリッツ、レオノーレにセシル・ペラン、ロッコにディミトリー・イヴァシュチェンコ、マルツェリーネにモイカ・エルドマンという配役。

2015年4月25日土曜日

ヤナーチェク:グラゴル・ミサ

ヤナーチェクが作曲したミサ曲。1927年に初演された。

汎スラヴ主義者だったヤナーチェクは、教会スラヴ語の典礼文をもとにこのミサ曲を作曲したが、宗教的なものよりも、民族的な高揚を意図していた。

ヤナーチェク独特の金管楽器の華やかさに加えて、高揚感を煽るよう、ダイナミックな音楽になっている。

2012年3月のルツェルン音楽祭での演奏。マリス・ヤンソンス指揮、バイエルン放送交響楽団及び同合唱団。

ハイドン:十字架上のキリストの最後の7つの言葉

ハイドンが、1786年にスペインのカディス大聖堂の依頼に基づいて作曲した、金曜日の礼拝のための音楽。

キリストの言葉と、それに続く7つのソナタ、そして序曲と終曲から構成されている。

全体的に、礼拝にふさわしい静かな音楽なっている。

唯一、終曲の部分は、キリストの死の直後に発生したといわれる地震を表現しているので、激しく、この世の終がやってきたような雰囲気を伝えている。

1990年に、この曲を依頼したカディス大聖堂での演奏。指揮は、ジョルディ・サヴァール。演奏は、ル・コンセール・デ・ナシオン。

2015年4月19日日曜日

ウェーバー:クラリネット協奏曲第1番

ウェーバーが、バイエルン国王マクシミリアン1世のもとめに応じて1811年に作曲した2つのクラリネットのための協奏曲の1番目の曲。

第1楽章 アレグロ。

第2楽章 アダージョ・マ・ノン・トロッポ。

第3楽章 ロンド、アレグレット。クラリネット演奏者にとっては、かなり難しい演奏のよう。

2015年2月の神奈川フィルハーモニー交響楽団の演奏。指揮は、川瀬賢太郎。クラリネットは、アンドレアス・オッテンザマー。

ヒンデミット:ウェーバーの主題による交響的変容

ヒンデミットが、ナチスからの迫害を逃れて、ニューヨークで生活していた時代、1943年に完成させた作品。

ウェーバーの4つの主題からの変奏曲を、それぞれの楽章としている。

第1楽章、アレグロ。変奏部分は、ヒンデミットらしいモダンな音楽。

第2楽章 、「トゥーランドット」スケルツォ、モデラート。

オペラを元にしているせいか、実にダイナミックな変奏曲で、ジャズ的な要素も盛り込まれている。

第3楽章、アンダンティーノ。前の楽章と対照的に、とにかく静かな内容。

第4楽章、行進曲。はなやかなフィナーレ。

2015年2月の神奈川フィルハーモニー交響楽団の演奏。指揮は川瀬賢太郎。

プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第2番

プロコフィエフが、1935年に作曲した、2番目のヴァイオリン協奏曲。

プロコフィエフは、1936年にソ連に帰国したため、これはソ連以外から依頼された最後の作品となった。

第1楽章、アレグロ・モデラート。ダークなイメージの主題が印象的。

第2楽章、アンダンテ・アッサイ。

プロコフィエフの古典的な趣向がよく表れている。まるでメンデルスゾーンのような華かやかな音楽。

第3楽章、アレグロ、ベン・マルカート。

この楽章では、一転して、モダンな不協和音のような主題。

2015年1月のNHK交響楽団の定期演奏会から。指揮はジャナンドレア・ノセダ、ヴァイオリンはジェームズ・エーネス。

リムスキー=コルサコフ:組曲『見えない町キーテジの物語』

リムスキー=コルサコフが、1903年から1904年にかけて作曲したオペラからの曲で構成された組曲。

13世紀のモンゴル軍による侵入の際に、湖の下に沈んだとされるキーテジの町の話は、聖女フェヴローニャが祈りによって町を見えなくしたのだ、という伝説として今に残っている。

前奏曲:自然をたたえる歌、婚礼の行列、ケルジェネツの戦い、フェヴローニャの昇天という4つの曲から構成されている。

爽やかな自然を連想させる曲に始まり、軽快でかつ、ロシアの慕情溢れるリムスキー=コルサコフの音楽世界が展開される。

2015年1月のNHK交響楽団の定期演奏会から。指揮は、ジャナンドレア・ノセダ。

2015年4月18日土曜日

ベルク:ヴァイオリン協奏曲

アルバン・ベルクが、1935年に作曲した、ヴァイオリンのための協奏曲。

その時期に、友人のアルマ・マーラーが、建築家グロピウスとの間に生んだ娘、マノン・グロピウスが19才という若さで亡くなったため、”ある天使のおもいでに”という副題が付いている。

皮肉なことに、ベルク自身も、虫刺されからはじまった敗血症が悪化して、その年に亡くなってしまった。

並行して作曲中だった、オペラ『ルル』は、未完のまま残されることになった。

2つの楽章からなり、さらにそれぞれが2つのパートに分かれている。

民謡なバッハの音楽などが引用されているが、全体的に静謐な雰囲気に包まれた、敬虔な雰囲気のヴァイオリン協奏曲になっている。

2014年12月のNHK交響楽団の定期演奏会から。ヴァイオリンはアラベラ・美歩・シュタインバッハー、指揮はシャルル・デュトワ。

武満徹:弦楽のためのレクイエム

武満徹が、東京交響楽団からの依頼により1957年に作曲した作品。ともに映画音楽作りなどに携わっていた、早坂文雄に捧げられている。

レクイエムとあるが、ヨーロッパの伝統的なレクイエムの構成ではなく、自由な構成になっている。

ストラビンスキーがこの曲に注目したことから、武満徹の名が、アメリカで知られるきっかけになった。

不安を感じさせる弦楽の旋律や、激しい感情を表したような断続的な音楽など、武満徹の音楽の基本的な形が、ここではすでに提示されている。

2014年12月のNHK交響楽団の演奏から。指揮は、シャルル・デュトワ。

2015年4月12日日曜日

ブラームス:ドイツ・レクイエム

ブラームスが、1868年に完成させたレクイエム。7つの楽章からなる。

通常のレクイエムは、ラテン語の言葉に音楽をつけるが、ブラームスは、ルターのドイツ語約の聖書からの言葉を使って、このレクイエムを作り上げ、ドイツ・レクイエムとした。

そのため、キリエとか怒りの日、といった構成でなく、ブラームスの解釈による構成となっている。

詩の内容は、人間の生の儚さをなげき、神の偉大さをたたえ、死者の救済を祈っている。

ところどころ、ブラームスらしい重厚な音楽もあるが、全体的に、敬虔な雰囲気に包まれたレクイエムで、モーツァルト、ヴェルディ、ベルリオーズらのレクイエムとは、一味違った内容。

2012年9月のロイヤル・コンセルトヘボウ管定期公演から。指揮は、マリス・ヤンソン。

ベルリオーズ:レクイエム

ベルリオーズが、1837年に作曲したレクイエム。10楽章の構成。

合唱が400人というベルリオーズらしい大構成のレクイエムで、ベルリオーズは、大音量で観衆を圧倒しようとした。

怒りの日は、モーツァルトやヴェルディのような、激しいメロディではないが、オーケストラと合唱が一体となった、圧倒的な音量で、神の怒りを表現している。

全体的に、大きな音量ではあるが、音楽自体は抑制されて美しい、フランス音楽らしい、レクイエム。

2014年1月にパリのノートルダムでの演奏。指揮はグスターボ・ドゥダメル、演奏はフランス国立放送フィルハーモニー管弦楽団とシモン・ボリバル交響楽団、合唱はノートルダム大聖堂聖歌隊。

公演の2日前に亡くなった、クラウディオ・アバドを追悼する公演となった。

2015年4月11日土曜日

シューマン:交響的練習曲

1834年から1837年にかけて、友人の作曲した曲の主題を元に作曲された、その主題と12曲の変奏曲からなる練習曲集。

スケールの大きな変奏曲であることから、交響的と言われる。

ダイナミックな曲もあり、内省にあふれた曲もあり、様々なパターンのピアノ音楽が楽しめる。

特に最後の変奏からドラマティックなフィナーレへの展開は素晴らしく、交響的という名前にふさわしい。

2014年3月、オペラシティーホールでの、アンドラーシュ・シフによる演奏。

シューマン:ピアノソナタ第1番

シューマンが、1833年から1835年にかけて作曲し、1836年に発表した最初のピアノソナタ。

4つの楽章からなる。

様々なピアノ小曲の後に発表した作品で、多くの構想を重ねたためか、シューマンの曲にしては、複雑な構造を持っているといわれる。

しかし、ところどころには、シューマンらしい、軽やかなメロディが聞こえてくる。

2014年3月、オペラシティーホールでの、アンドラーシュ・シフによる演奏。

カゼッラ:交響曲第3番

イタリアの作曲家、アルフレード・カゼッラが1939年から1940年にかけて作曲した、3番目の交響曲。

アメリカのシカゴ交響楽団に依頼によるもので、カゼッラはおよそ30年ぶりに交響曲を作曲した。

4つの楽章からなり、影響を受けた、マーラーやショスタコーヴィチのような音楽が数多く登場する。

第1,2楽章はマーラー風、第3,4楽章はショスタコーヴィチ風、といったところか。

2015年1月のNHK交響楽団の定期演奏会から。指揮はジャナンドレア・ノサダ。

ラフマニノフ:パガニーニの主題による狂詩曲

ラフマニノフが、1934年に作曲したピアノとオーケストラのための24の変奏曲。

パガニーニのラプソディーの中の主題を使って、独自の変奏曲を仕立てたもの。

ラフマニノフは、祖国のロシアを離れ、各地での演奏活動にも忙しく、なかなか曲を作ることができなかった。

この曲は、スイスのルツェルン湖のほとりの別荘で、ようやく作曲することができた。

第18変奏が特に有名だが、その前の17変奏のダークな雰囲気も、実にいい。

第7変奏には、パガニーニが悪魔が取引した、ということから、リストやベルリオーズも自分の曲に取り入れた、グレゴリオ聖歌の怒りの日のテーマが使われている。

2015年1月のNHK交響楽団の定期演奏会から。指揮はジャナンドレア・ノサダ。ピアノは、アレクサンダー・ロマンスキー。

2015年4月5日日曜日

ブラームス:交響曲第2番

ブラームスが1877年に作曲した2番目の交響曲。

第1番を完成させるのに20年かけたブラームスだが、この第2番はわずか4ヶ月で完成させている。

第1楽章、アレグロ・ノン・トロッポ。

冒頭のホルンの伸びやかなメロディが、まるで、スイスあたりの高原の朝を想像させる。そして、自然なながれで主題へと誘って行く。

全体の半分近くを占める長い楽章だが、終始、穏やかに展開していく。

第2楽章、アダージョ・ノン・トロッポ。

哀愁のあるメロディで始まり、ブラームス独特の重厚な音楽が展開される。

第3楽章、アレグレット・グッラティオーソ。

クラリネットの伸びやかな音楽で始まるが、やがて軽快な音楽に変わっていく。

第4楽章、アレグロ・コン・スピリート。

それまで伸びやかで穏やかな印象だった音楽が一変して、ダイナミックでスピーディーな音楽になる。

続いて現れる主題が、実にドイツ音楽らしいというか、ブラームスらしい。

そして、怒涛のフィナーレを迎える。ブラームスの交響曲の中でも、最もドラマティックなフィナーレだろう。

2013年1月、ドレスデン国立歌劇場での演奏。ドレスデン国立管弦楽団、指揮クリスティアン・ティーレマン。

2015年4月4日土曜日

カールマン:オペレッタ『チャールダーシュの女王』

ハンガリーで生まれ、オーストリアで活躍した、エメリッヒ・カールマンが作曲し、1915年にウィーンで作曲されたオペレッタ。

侯爵家の若者エドウィンと歌手シルヴァの恋物語。

身分の違いから、一度は離れ離れになった恋人が、やがて再開し、結ばれるというたわいのないハッピーエンドの恋物語。

しかし、それが美しいメロディと、素晴らしいオーケストラと歌手によって演じられると、時代を超えて人々を楽しませるエンターテインメントになる。

オペレッタという芸術の素晴らしさを、これほどよく表す作品は、他にないだろう。

チャールダーシュ。いわゆるハンガリー地方の音楽がふんだんに盛り込まれている。

エメリッヒ・カールマンは、ブタペストのフランツ・リスト音楽アカデミーで音楽を学んだ。同窓には、コダーイやバルトークがいる。

コダーイやバルトークが、ハンガリーの民族音楽をもとに、新しい音楽を作り出して行ったが、カールマンは、自分の才能がポピュラー・ソングに向いていることに気づき、この素晴らしい作品を世に送り出した。

その音楽はまったく違う方向を目指したが、いずれも、フランツ・リストの抱いた夢を引き継いだ音楽の巨匠になった。

2014年のレスデン・シュターツカペレのジルベスター・コンサートから。演奏会形式で行われた。指揮はクリスティアン・ティーレマン。

ソプラノにアンナ・ネトレプコ、テノールにフアン・ディエゴ・フローレス、という2大スターの共演となった。

ベートーヴェン:交響曲第7番

ベートーヴェンが1811年〜1812年にかけて作曲した、7番目の交響曲。

第1楽章、ポコ・ソステヌート - ヴィヴァーチェ。第3番や5番のような激しさは姿を消し、完成された音楽。

第2楽章、アレグレット。途中の木管楽器による不思議な雰囲気の音楽が、実に素晴らしい。アラブの音楽のように聞こえる。

第3楽章、スケルツォとトリオ。聴いているこちらの気分までウキウキとしてくるような、軽快なスケルツォ。

このあたりで、この交響曲は、どんな極地にまで、私達を連れて行ってしまうのだろうか、と空恐ろしくなってくる。

第4楽章、アレグロ・コン・ブリオ。それまでやや抑え気味だった、ベートーヴェンのエキセントリックな側面が一気に爆発し、そのままフィナーレを迎える。

ベートーヴェンの9つの交響曲の中でも、最も完成度の高い交響曲。文字通りの、完璧な交響曲だ。

2008年のベルリンフィルのヨーロッパ・コンサートから。指揮は、サイモン・ラトル。

ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲第1番

ドイツの作曲家、ブルッフが1864年から1866年にかけて作曲した、1番目のヴァイオリンのための協奏曲。

ブルッフは、この他にも2つのヴァイオリン協奏曲を作曲したが、この1番ほどはポピュラーにはなっていない。

第1楽章、アレグロ・モデラート。悪魔的な魅力を持つ、ダイナミックなロマン派らしい音楽。

第2楽章、アダージョ。オーケストラの重厚なアダージョに、ヴァイオリンの伸びやかな音楽が重ねられて、美しい。

第3楽章、アレグロ・エネルジコ。第1楽章、第2楽章に比べると、少し聴き劣りがする。古典派的な音楽。

2008年のベルリンフィルのヨーロッパ・コンサートから。指揮は、サイモン・ラトル。ヴァイオリンは、ワディム・レーピン。



ストラヴィンスキー:3楽章の交響曲

ストラヴィンスキーが、1942年〜1945年にかけて作曲した、3つの楽章からなる交響曲。

最初は、管弦楽のための協奏曲として構成されたため、3つの楽章になっているようだ。

第1楽章は、ピアノとオーケストラの協奏で、明るい感じの音楽。

第2楽章は、短く、ピアノは演奏されない。ハーブの繊細な音楽が印象的。

第3楽章は、再びピアノが登場。ストラヴィンスキーらしいエキセントリックな音楽でフィナーレを迎える。

2008年のベルリンフィルのヨーロッパ・コンサートから。指揮はサイモン・ラトル。

コダーイ:組曲『ハーリ・ヤノーシュ』

ハンガリーの作曲家、コダーイが作曲し、1926年に初演されたオペラから、6つの曲を抜粋し、自ら組曲にしたもの。

オペラの内容は、ほらふきのハーリ・ヤノーシュが主人公の冒険物語。

ハンガリーの民族音楽を収集し続けたコダーイ。この作品にも、そうしたハンガリーの田舎の雰囲気を感じさせる、数多くの音楽が奏でられる。

2曲目のウィーンの音楽時計、という音楽は、ある美術番組の冒頭に使われて、おなじみのメロディー。

とにかくどの音楽も、美しくて、豊潤で、しかも楽しい。

この曲を聴いたら、誰もが一遍に、コダーイのファンになってしまうことだろう。

2014年のベルリンフィルのジルベスターコンサートから。指揮は、サイモン・ラトル。

ラモー:組曲『華やかなインド』

ジャン・フィリップ・ラモーは、17〜18世紀に活躍した、フランス・バロック時代の作曲家。

オペラとバレエがいっしょになった作品の音楽を集めた組曲。

インドとあるが、トルコやアメリカなども登場する。悪い異国趣味に溢れた内容。

音楽は文字通り華やかで、いかにもバロック音楽という感じ。

2014年のベルリンフィルのジルベスターコンサートからの演奏。指揮は、サイモン・ラトル。

2015年3月22日日曜日

ハイドン:オラトリオ『四季』

ハイドンが、1801年に完成させたという、39曲からなるオラトリオ。

一曲一曲が、実に情感豊かに作られていて、オペラに勝るとも劣らない、素晴らしい魅力を持っている。

イギリスの詩人、ジェームス・トムソンの詩に基づく、四季の様々な情景が、美しい音楽で奏でられる。

春の訪れ、畑での種まき、暑い夏、夏の嵐、収穫の秋、秋の狩猟、雪と氷の厳しい冬、神への感謝・・・

日本人の感性とは、一味違った、四季の情景が、様々なバリエーションの音楽で表されていて、興味深い。

2013年のザルツブルグ音楽祭から。指揮はニコラウス・アーノンクール、演奏はウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、ウィーン国立歌劇場合唱団。

2015年3月7日土曜日

ブリテン:戦争レクイエム

イギリスの作曲家、ベンジャミン・ブリテンが、1961年に完成させたレクイエム。

第2次世界大戦でドイツの空襲によって崩壊した、コヴェントリー大聖堂の復旧に合わせて作曲された。

ブリテンは、戦争が始まると従軍を拒否し、アメリカに逃れていた。

ブリテンは、3人のソリストに、ソ連、ドイツ、イギリスの有名なオペラ歌手を揃えて初演しようとしたが、連戦真っ只中であったため、ソ連はそのオペラ歌手の出国を拒否し、その夢は実現しなかった。

全体的に、キリエ、怒りの日、アニュス・デイ、リベラ・メなどの伝統的なレクイエムの形式を持っているが、途中途中に、イギリスの詩人、ウィルフレッド・オーエンの詩が挟み込まれている。

それらのオーエンの詩は、自身が体験した第1次世界大戦がテーマになっており、このレクイエム全体が、戦争に対するブリテンの考え方を表明したものになっている。

音楽は、前半はモダンな現代音楽のようで、後半のアニュス・デイ以降は、情感にあふれたオーソドックスなものになっている。

2013年のザルツブルグ音楽祭での演奏。指揮はアントニオ・パッパー、演奏と合唱は聖チェチーリア国立音楽院管弦楽団及び同合唱団、ソプラノはアンナ・ネトレプコが務めた。

2015年2月21日土曜日

ブラームス:交響曲第4番

ブラームスが1884年から1885年にかけて作曲した、4番目の、そして最後の交響曲。

第1楽章。Allegro non troppo。哀愁に満ち溢れた重厚なブラームスらしい音楽。終わりは、実に劇的で、これで交響曲全体が終わってしまったような印象を受ける。

単独の楽章としては、数ある交響曲の中でも、もっとも素晴らしい音楽のひとつ。

第2楽章。Andante moderato。ホルンの伸びやかな音楽で始まり、様々な展開を見せた後で、最後は再びその音楽で終わりを迎える。

第3楽章。Allegro giocoso。勇壮な主題で始まる。

すでにこの時点で、この交響曲は、いったい、どの境地まで行ってしまうのだろう?と感じてしまう。

第4楽章。Allegro energico e passionato。初めは、それまでとは、少し変わった印象を受ける。

音楽が展開されて行くにつれて、この楽章自体が、複雑な構造をもっていることがわかってくる。

終わりは意外にあっさりとしている。もうこれで終わり?という感じ。

ブラームスは、自らの4つの交響曲の中でも、特にこの交響曲を気に入っていたというが、確かに納得。

ゲルギエフ指揮、ロンドン交響楽団による2012年12月のロンドンでの演奏。

シマノフスキ:ヴァイオリン協奏曲第2番

シマノフスキが、1932年から1933年にかけて作曲した2番目のヴァイオリン協奏曲。

シマノフスキにとっては、最後の管弦楽曲となった。

2つの楽章からなり、繊細なヴァイオリンの音楽が印象的。

ゲルギエフ指揮、ロンドン交響楽団による2012年12月のロンドンでの演奏。ヴァイオリンは、レオニダス・カヴァコフ。

シマノフスキ:交響曲第4番

ポーランドの作曲家、シマノフスキが1932年に作曲した4番目の交響曲。

ピアノとオーケストラによって演奏されるので、ピアノ協奏曲のようにもとれる。

第1楽章。Moderato - tempo commodo。不安な雰囲気の音楽で始まり、徐々にスケールの大きな音楽になっていく。

第2楽章。Andante molto sostenuto。ピアノの印象的な旋律で始まる。神秘的で静謐な音楽。

第3楽章。Allegro non troppo, ma agitato ed ansioso。第2楽章から切れ目なく演奏され、対照的なハイテンションな音楽。

シマノフスキは、この曲をタトラ地方というポーランドの山岳部の村に滞在中に作曲した。その地方の民族音楽の強い影響を受けているという。

ゲルギエフ指揮、ロンドン交響楽団による2012年12月のロンドンでの演奏。ピアノは、デニス・マツーエフ。

ロッシーニ:オペラ『ギョーム・テル』

1829年にパリで初演された、ロッシーニのオペラ。ウィリアム・テルという名前の方が、よく知られている。

スイスのオーストラリアからの独立の英雄、ウィリアム・テルの話を軸に、オーストラリアの王女とスイスの軍人との恋を絡めて描いた、4時間にわたる、大河ドラマのような内容の巨大なオペラ。

ロッシーニは、このオペラの後、しばらく音楽界から足を洗い、料理三昧の生活を楽しむようになった。

当時、イタリアはオーストラリアの支配下にあったために、この曲は政治的な影響をいろいろと受けた。

ロッシーニというと、セビリアの理髪師、泥棒かささぎ、オリー伯爵など、いわゆるどうでもいい恋の話のオペラばかり作っているイメージがあるが、このオペラでは、ベルディばりに、政治と恋が絡んだ、複雑な内容になっている。

引退を前にして、少しは硬派なオペラを作ってみたくなったのだろうか?

ロッシーニ・オペラ・フェスティバル2013での公演。主役のアルノルドは、売れっ子の・フアン・ディエゴ・フローレスが演じた。

2015年2月8日日曜日

シマノフスキ:交響曲第3番『夜の歌』

ポーランドの作曲家、カロル・シマノフスキが1916年に作曲した3番目の交響曲。

3つの楽章からなるが、切れ目なく演奏される。

第1楽章、モデラート・アッサイ。

第2楽章、ビビアーチェ・スケルツァンド

第3楽章、ラルゴ。

第1、3楽章は、合唱曲となっており、ペルシャの神秘的な思想を持つルーミーの詩、夜の歌、のポーランド誤訳がその歌詞になっている。

その詩に合わせるように、音楽も神秘的な音楽で、ドビュッシーやストラビンスキーのような雰囲気。

シマノフスキは、この曲を作る前にフランスなどを訪れ、そこで、オリエント文化に深い興味を持ったという。

2012年12月にロンドンで行われた、ゲルギエフ指揮、ロンドン交響楽団による演奏。

モーツァルト:クラリネット五重奏曲

モーツァルトが、1789年に作曲した、クラリネットと弦楽四重奏用の曲。

当時、クラリネットは、まだ登場したばかりの楽器だった。モーツァルトは、その楽器の特徴をすぐに把握して、この屈指の名曲を書き上げた。

第1楽章 アレグロ。クラリネット、というと必ず思い浮かぶ、有名なメロディ。

第2楽章 ラルゲット。

第3楽章 メヌエット。

第4楽章 アレグレット。

2000年、ザルツブルクのモーツァルテウムでの、クラリネットのザビーネ・マイヤーとハーゲン四重奏団による演奏。

2015年2月7日土曜日

モーツァルト:交響曲第41番

モーツァルトが、1788年に完成させた、いわゆる3大交響曲のひとつ。

ジュピターと呼ばれるが、モーツァルトが名付けたものではなく、その壮麗な音楽のイメージから、後世にそう呼ばれるようになった。

第1楽章、アレグロ・ビビアーチェ。

前奏もなく、いきなり主題の強烈な音楽が奏でられる。まるで広大な宇宙空間を感じさせる、スケールの大きい音楽。

第2楽章、アンダンテ・カンタービレ。

第3楽章、メヌエット。

最後は、メヌエットという言葉のイメージとは違った、壮大な音楽になる。

第4楽章、モルト・アレグロ。

軽快で、しかも壮麗。フーガは、このままいつまでも、続いていくのでないか、と錯覚してしまうほど、聴く人を陶酔させてしまう。

確かに、ジュピターという名にふさわしい。

2013年、ルツェルン音楽祭での、サイモン・ラトル指揮、ベルリン・フィルの演奏。

モーツァルト:交響曲第40番

モーツァルトが、1788年7月に完成させた交響曲。ト短調。モーツァルトの交響曲では、短調は珍しい。

いわゆる3大交響曲のひとつで、第39番は同じ年の6月に、第41番は8月に完成させている。

第1楽章、モルト・アレグロ。

あまりにも有名な第1主題のメロディー。軽やかながら、どこかに哀愁を感じさせる。

第2楽章、アンダンテ。

メロディー自体は、穏やかだが、緩急、音の大小などが所々で見られ、喜び、悲しみなど、この音楽を聴く人に、様々な感情を呼び起こす。

第3楽章、メヌエット、アレグレット、トリオ。

濃厚な、第1、2楽章のあとで、小休止を入れるような、楽章。

第4楽章、アレグロ・アッサイ。

一転して、軽やかな音楽。冒頭の哀愁を忘れさせ、喜びの中にフィナーレを迎える。

2013年のルツェルン音楽祭。サイモン・ラトル指揮、ベルリン・フィルの演奏から。

2015年1月12日月曜日

ワーグナー:オペラ『バルジファル』

ワーグナーが1865年から書き始め、1882年に完成させた、ワーグナー最後のオペラ。

その構想は、ローエングリンを作曲した頃からあったという。

中世のスペインを舞台にした、聖杯を守る騎士の物語がベースになっている。

全体的に重々しい音楽で、ワーグナーは自らこのオペラを、舞台神聖祝典劇と呼んで、拍手をすることを禁じたという。

主人公のバルジファルは、汚れなき愚者とされ、ニーベルングの指環のジークフリートを連想させる。

親のない子供が、世界に平和をもたらすというテーマは、まさにニーベルングの指環のテーマでもある。

バルジファルは、白鳥を射落としたものとして登場するが、これは、ローエングリンを連想させる。

第2幕で、魔法使いのクリングゾルがバルジファルを女性を使って誘惑するが、これは、タンホイザーのテーマとも共通する。

そうした観点では、このオペラは、ワーグナーの総決算、とも言える。

その他にも、いろいろな箇所に、ワーグナーの思想に裏つけられた様々な”記号”が登場し、そこからいろいろな解釈を生み出すことができる。

キリスト教を毛嫌いしていたニーチェは、このオペラを巡ってワーグナーを非難して、二人は決別することになった。

純粋で無垢な人間が聖杯を手にする、というプロットは、映画レイダースの最初のシリーズ”失われたアーク”のテーマにも影響を与えているのかもしれない。

2013年のザルツブルク・イースター音楽祭の公演から。

2015年1月3日土曜日

ドビュッシー:オペラ『ペレアストメリザンド』

ドビュッシーが完成させた唯一のオペラ。1893年から1901年にかけて作曲された。

原作は、メーテルリンクの同名の象徴主義を代表する戯曲で、ドビュッシーの他にも、フォーレ、シェーンベルク、シベリウスらが、この作品を音楽にしている。

ドビュッシーは、このオペラを、当時流行していたワーグナーのオペラへの批判として作った。

今日から見ると、アリア中心の伝統的なオペラではなく、出演者が歌うというより、セリフを喋るようになっており、ワーグナーの楽劇、とある意味では、よく似ている。

勿論、音楽自体は、ワーグナーの壮大で権力者が好みそうなものとは、全く異なっているが。

このドビュッシーの試みは、シェーンベルク、ヤナーチェク、バルトーク、メシアンなどに大きな影響を与えた。

物語の最後で、ゴロー(バリトン)は瀕死のメリザンド(メゾ・ソプラノ)に対して、ペレアス(バリトン)との間でいったい何があったのか、真実の告白を迫るが、メリザンドはそのまま息絶えてしまう。

真実は、決して明らかになることはない、というメーテルリンクのメッセージが、妙に心に残る。

エッセン歌劇場の2012年の公演から。光と闇を効果的に使い、余計な物を一切省いた、ストイックな舞台演出が印象的。