2014年12月31日水曜日

プッチーニ:オペラ『西部の娘』

プッチーニが1907年にアメリカを訪れたのがきっかけで作曲され始め、1910年に完成されたオペラ。

文字通り、アメリカの西部が舞台となっている。

主人公の酒場の娘ミニー(ソプラノ)、ミニーが愛する盗賊のラメルス(テノール)、ミニーを愛する保安官のランス(バリトン)をめぐる、恋の物語。

イタリアオペラの愛憎劇が、所をかえ、荒々しい西部開拓時代のアメリカで、再現される。

第2幕で、ミニーがラメルスを救うために、自分とラメルスを賭けにかけて、ランスと対戦する場面が印象的。

プッチーニは、すべてが、賭けによって決まるという西部のルールを、緊迫感のあるドラマティックな音楽で見事に表現している。

2013年10月のウィーン歌劇場での公演。ミニー役はニーナ・シュテンメ、ラメルス役はヨナス・カウフマン、ランス役はトーマシュ・コニーチュニー。

2014年12月6日土曜日

シマノフスキ:交響曲第2番

ポーランドの作曲家、カロル・シマノフスキが1909年に作曲した作品。

同時代の、リヒャルト・シュトラウスやスクリャービンの影響を受けているといわれる。

第1楽章はアレグロモルトだが、第2楽章は変奏曲で構成され、そのまま第3楽章に切れ目なく突入する、という自由な形式の交響曲。

曲の感じは、確かにシュトラウスらしさを感じるが、シュトラウスほどの、派手さというかいやらしさがなく、そのあたりが、シマノフスキの独自性なのか。

フィナーレでは、盛り上がりを見せるが、盛り上がり切らないままに、拍子抜けするように、パッと終わってしまう。

シマノフスキは、結構、淡白な性格だったのかもしれない。

ゲルギエフ指揮、ロンドン交響楽団の2012年10月のロンドンでの演奏から。

2014年11月24日月曜日

ベートーヴェン:ミサ・ソレムニス

ベートーヴェンが、その晩年、1823年に完成させたミサ曲。

ベートーヴェンは、以前にもミサ曲を作っているが、そちらが伝統的な宗教音楽の手法を使って作曲されていたのに比べ、このミサ・ソレムニスでは、宗教的な内容を踏まえながら、純粋な合唱音楽としての特徴も盛り込んでいる。

ワーグナーは、この曲を、交響曲として聞いていたという。

同時期に作曲された、交響曲第9番と共通する部分もあるが、こちらの方が合唱が主体であるため、より多彩な合唱の音楽を聞くことができる。

キリエ。単なる宗教音楽ではないぞ、という印象で始まる。

グローリア。ベートーベンらしい、ダイナミックな音楽。

クレド。壮大なフーガ。

サンクトゥス。アダージョなどが含まれる。

アニュス・デイ。男性バスの重々しいアダージョで始まる。フィナーレは、ベートーヴェンらしく壮大に終わるのかと思いきや、宗教音楽らしく、静かな祈りのまま終わる。

アーノンクール指揮、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団とオランダ放送合唱団による、2012年4月のアムステルダムでの演奏から。

2014年11月23日日曜日

ブルックナー:交響曲第1番

ブルックナーが、1866年に完成させた2番目の交響曲。この前に作曲された作品は、習作的なものと考えられている。

その後、何度か改定されている。

ブルックナーの音楽は、とにかく苦手だ。

第1楽章、アレグロ。いかにもブルックナーらしい、大仰で、けたたましい音楽。

第2楽章、アダージョ。静かな音楽でほっとしていると、ところどころで、ホルンが雄叫びをあげる。

ブルックナーよ、せめて、アダージョくらいは、最後まで静かにしていてくれないか。

第3楽章、スケルツォ、シュネル。

スケルツォ?出だしが、まるで第1楽章の始まりのように壮麗だ。

第4楽章、フィナーレ、運度的に、火のように。

”火のように?”

文字通り、出だしは火のように始まる。相変わらず、フィナーレも壮大だが、さすがに、まだ第1番ということだからだろうか?

ブルックナーにしては、おとなしい終わり方。

うーん。やっぱり、自分がブルックナーのことが、どうも好きになれない、ということを再確認したような演奏だった。

小泉和裕指揮、九州交響楽団による、2014年9月アクロス福岡シンフォニーホールでの定期演奏会から。

エルガー:交響曲第1番

エルガーが、1907〜1908年にかけて作曲した、最初の交響曲。

4つの楽章からなるが、循環形式をとっており、冒頭の主題が、何度も登場する。

第1楽章の主題は、エニグマ変奏曲を連想させる。

第2楽章は、勇壮な音楽でダイナミックに始まる。穏やかな音楽と、勇壮な音楽が繰り返される。

第3楽章と切れ目なく演奏される。ゆっくりとして、穏やかな、夢見心地にさせるような美しいアダージョ。

2014年6月のNHK交響楽団の定期公演から。指揮は、ウラディーミル・アシュケナージ。

シベリウス:組曲『恋人』

シベリウスが、自らの合唱用の曲を元にして、管弦楽団用に、1911年から1912年にかけて編曲したもの。

恋人、恋人たちのそぞろ歩き、別れ、という3つの曲から構成されている。

冒頭から、シベリウス独特のロマンチックな音楽が展開される。

ダイナミックな北欧の大自然を連想させる、シベリウスの音楽とは、一味違っており、心に残る。

2014年6月のNHK交響楽団の定期公演から。指揮は、ウラディーミル・アシュケナージ。

ヒンデミット:交響曲『画家マチス』

ヒンデミットが、1933〜34年にかけて作曲した交響曲。

交響曲とあるが、同名のオペラからの素材から作り上げたもので、いわゆる古典的な交響曲とは、性格が異なっている。

画家マチスとあるが、近代フランスのアンリ・マチスではなく、マティアス・グリューネヴァルトという16世紀ドイツの画家のこと。

天使の合奏、埋葬、聖アントニウスの誘惑という3つの楽章からなっているが、グリューネヴァルトの代表作、イーゼンハイムの祭壇画の3つの絵の題名から取られている。

最初の2つの楽章は、静かな印象の音楽。第3楽章には、後年のシンフォニエッタを連想される、壮大な音楽が展開される。

ヒンデミットは、その後も、オペラからの音楽で交響曲を書いている。交響曲という音楽の形式を、古典派のようには考えていなかったようだ。

ズビン・メータ指揮、ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団による、2013年ミュンヘンでの演奏。

2014年11月22日土曜日

ブラームス:悲劇的序曲

ブラームスが、1880年に作曲した、管弦楽用の音楽。

ブラームスは、依頼された”大学祝典序曲”の作曲中に、この曲が陽気な曲であるから、それと対になる悲劇的な内容の曲を作ろうと、この悲劇的序曲を構想した。

曲自体は、ブラームスらしい重々しさはあるが、あまり悲劇性は感じられない。

この曲のモチーフは、この後に作曲する交響曲第3番に多く使われたという。

ズビン・メータ指揮、ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団による、2013年ミュンヘンでの演奏。

シューベルト:創作主題による8つの変奏曲

シューベルトが、1824年に作曲した、ピアノのための変奏曲。

冒頭のメロディは、いかにもシューベルトらしい。それが、次々と変奏されていく。

あまり有名な曲ではないが、じっくりと聞いていると、シューベルトの音楽世界が、次々と展開されていく。

マルタ・アルゲリッチとダニエル・バレンボイムによる、2014年4月19日、ベルリンのフィルハーモニーでの演奏。

モーツァルト:2台のピアノのためのソナタ

モーツァルトが、1878年11月にウィーンで完成させた曲。

当時のピアノの弟子だった、ヨーゼファ・バルバラ・アウエルンハンマーという女性と演奏するために作曲した曲。

モーツァルトは、ヨーゼファの容姿があまり優れず、あつかましい性格だったことから、女性としてはまったく興味がなかったらしいが、ピアノの技術は高く評価していた。

3つの楽章からなる。

第1楽章はアレグロ・コン・スプリート。モーツァルトらしい軽々なメロディにあふれた楽しい音楽。

第2楽章はアンダンテ。静かで内省的な音楽。モーツァルトの心の奥底が垣間見えるような奥深さを感じる。

第3楽章はモルト・アレグロ。第1楽章の明るさと、第2楽章の静かさと、2つの側面を併せ持つような音楽。

マルタ・アルゲリッチとダニエル・バレンボイムによる、2014年4月19日、ベルリンのフィルハーモニーでの演奏。

2014年9月21日日曜日

ロドリーゴ:アンダルシア協奏曲

ホアキン・ロドリーゴが、1967年にあるギター演奏家の一家からの依頼で作曲した、4つのギターと管弦楽のための協奏曲。

第1楽章のテンポ・ディ・ボレロは、この曲の題名であるアンダルシアの風景が目に浮かんでくるような、イメージにぴったりの曲。

第2楽章のアダージョは、明らかにアランフェス協奏曲の第2楽章をもとにして作られている。

第3楽章のアレグレットは、4つのギターと、オーケストラが交互に演奏し、音楽で会話をしているような構成になっている。

2014年6月の東京都交響楽団の公演。指揮は、大友直人。ギターは、荘村清志、他。

ロドリーゴ:アランフェス協奏曲

スペインのホアキン・ロドリーゴが、1939年に作曲したギターと管弦楽のための協奏曲。

第2楽章のアダージョがとりわけ有名。亡くなった我が子、病気の妻への思いから、悲しみの中での祈りのような音楽になっている。

第1楽章はアレグロ・コン・スプリート、第3楽章はアレグロ・ジェンティーレで、いずれも明るい感じの曲。それがよけいに、第2楽章の悲しさを強調している。

2014年6月の東京都交響楽団の公演。指揮は、大友直人。ギターは、荘村清志。

ロドリーゴ:ある貴紳のための幻想曲

ホアキン・ロドリーゴが、1954年に作曲した、ギターと管弦楽のための協奏曲。

伝統的な協奏曲のスタイルではなく、4つの楽章は、17世紀のスペインの作曲家の残した音楽をもとにした、それぞれ自由なテーマの音楽になっている。

いずれの曲も、伸びやかな感じの音楽で、スペインののんびりとした雰囲気が感じられる。

2014年6月の東京都交響楽団の公演。指揮は、大友直人。ギターは、荘村清志。

コルンゴルド:オペラ『死の都』

エーリッヒ・ウォルフガング・コルンゴルドが、1920年、弱冠23才の時に完成させたオペラ。

コルンゴルドの名を知る人はそれほど多くはない。モラヴィア地方で生まれ、ウィーンではモーツァルトの再来としてもてはやされ、若くして活躍していた。

ナチスの台頭を受けてアメリカに逃れてからは、ハリウッドの映画音楽の作曲を手がけ、戦争後にウィーンに戻ったが、ついに復活を遂げることはできなかった。

今日では、もっぱら、このオペラの作曲家として知られる。

ストーリーは、ローデンバックの自伝小説『死の都 ブリュージュ』をもとにしている。

妻マリーの死を受け入れられず、その幻を日々を暮らしている主人公のパウルと、亡き妻に瓜二つの踊り子マリエッタによる愛憎劇。

音楽は、どことなく、世紀末のウィーンの雰囲気を引きずっている。どうしても、リヒャルト・シュトラウスの音楽との共通性を感じてしまうが、シュトラウスほどには、モダンでもない。

2014年3月の新国立劇場の公演から。

2014年8月31日日曜日

ベートーヴェン:ヴァイオリンソナタ第10番

ベートーヴェンは、1803年の第9番から、しばらくヴァイオリンソナタを作らなかったが、1812年に久しぶりに、しかし最後となる10番目のヴァイオリンソナタを作曲した。

翌年の1813年には、交響曲第7番を完成させており、もっとも充実した時期の作品。

第1楽章は、アレグロ・モデラート。ト長調。

明るく、伸びやかな音楽。

第2楽章は、アンダンテ・エスプレッシーボ。変ホ長調。

瞑想するような、祈るような、そんな雰囲気の音楽。

第3楽章は、スケルツォ・アレグロ。ト短調。

第2楽章から続けて演奏される。スケルツォだが、それほどはじけずに、抑制されている感じ。

第4楽章は、ポコ・アレグレット。ト長調。

美しい主題が、様々な形で演奏され、最後はヴァイオリンとピアノが一体になって、フィナーレを迎える。

明らかに、それまでの9つのヴァイオリンソナタとは違っている。成熟された、という印象を受ける。

ザルツブルク音楽祭2012での演奏。ヴァイオリンはレオニダス・カヴァコス、ピアノはエンリコ・パーチェ。

ベートーヴェン:ヴァイオリンソナタ第9番

ベートーベンが、1803年に作曲した9番目のヴァイオリンソナタ。イ長調。

ルドルフ・クロイツェルに献呈されたために、クロイツェル、と呼ばれている。

ベートーベン自身は、この曲を、”ほとんど協奏曲のように、相競って演奏されるヴァイオリン助奏つきのピアノ・ソナタ”と呼んでいた。

当時は、まだヴァイオリンソナタにおけるヴァイオリンの役割は、あくまでもピアノの助奏であり、主役はあくまでもピアノだった。

この曲でベートーベンは、ヴァイオリンに、ピアノと同じ役割を与え、その2つの楽器の協奏曲を作ろうとした。

第1楽章は、アダージョ・ソステヌート、プレスト、アダージョ。イ長調。

緊張感のある音楽で、ヴァイオリンとピアノの協奏というよりは、対決といった感じ。

第2楽章は、アンダンテ・コン・ヴァリアツィオーニ。ヘ長調。

第1楽章の緊張から一気に解放され、穏やかな音楽で、冒頭の主題が、様々に変奏されていく。

第3楽章は、プレスト。イ長調。

すっかり仲直りしたヴァイオリンとピアノが、軽軽な音楽を楽しげに奏でる。

ロシアの文豪トルストイは、この曲に深い印象を受けて、小説『クロイツェル・ソナタ』を書いた。

そして、その小説に刺激され、ヤナーチェクは弦楽四重奏第1番を作曲している。

このベートーベンの記念碑的なヴァイオリンソナタから、様々な変奏曲が生まれている。

ザルツブルク音楽祭2012での演奏。ヴァイオリンはレオニダス・カヴァコス、ピアノはエンリコ・パーチェ。

2014年8月23日土曜日

スクリャービン:法悦の詩

ピアノ曲で知られる、アレクサンドル・スクリャービンが、1908年に完成させた、4番目の交響曲。一般的には、法悦の詩、として知られる。

原題は、フランス語で、Le Poème de l'extase。エクスタシーを法悦として訳しているが、静的な意味もあるらしい。

スクリャービンは、このころから、神秘主義思想に傾倒しており、この曲も神秘的な雰囲気が濃厚。

この曲には、決まった調整がなく、楽章も分かれていない。

ロリン・マゼール指揮、NHK交響楽団の2012年10月の演奏。

リヒャルト・シュトラウス:交響詩『ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら』

リヒャルト・シュトラウスが、1894年から1895年にかけて作曲した交響詩。

シュトラウスは、当初は、このテーマでオペラを作ることを構想していたが、最終的には、交響詩という形式に落ち着いた。

そのせいか、最初の有名なテーマは、”むかしむかし、あるところに・・・”を表し、クラリネットのコミカルなメロディは、ティルの笑い声であるなど、物語性に溢れた、多彩な音楽になっている。

新しい音楽を作ってやろうという、野心に燃えた、若きリヒャルト・シュトラウスを代表する曲の一つと行っていいだろう。

ウィーン・フィルによる、恒例のシェーンブルン夏の夜のコンサート2014から。指揮はクリストフ・エッシェンバッハ。

リヒャルト・シュトラウス:ブルレスケ

若きリヒャルト・シュトラウスが、1886年、24歳の時に作曲した、ピアノと管弦楽のための音楽。

章には分かれておらず、自由な構成で、ワルツ風の音楽、アダージョのような音楽、そしてシュトラウスらしいダイナミックな音楽が、次々に登場する。

ピアニストには、高度な演奏力が要求される。

ブルレスケとは、英語のバーレスクで、諧謔的な音楽のこと。

ウィーン・フィルのシェーンブルン夏の夜のコンサート2014から。ピアノはランラン、指揮はクリストフ・エッシェンバッハ。

リスト:交響詩『マゼッパ』

フランツ・リストが、1851年に作曲した交響詩。同じ名前のピアノ曲もある。

マゼッパとは、ヴィクトル・ユーゴの叙事詩のこと。ウクライナの英雄を描いたストーリーで、リストは、いたく感動して、そこからピアノ曲と、この交響詩を着想した。

音楽は、リストらしいダイナミックなもので、激しい戦闘や勝利を思わせる、勇壮な音楽になっている。

ウィーン・フィルのシェーンブルン夏の夜のコンサート2014から。指揮は、クリストフ・エッシェンバッハ。

ベルリオーズ:序曲『ローマの謝肉祭』

ベルリオーズが、1844年に作曲した管弦楽用の曲。

ベルリオーズは、『ベンヴェヌート・チェッリーニ』というオペラを作曲したが、成功しなかった。

しかし、その音楽にはよほどの自身があったのか、アリアの主題と、ローマの謝肉祭、の音楽をもとに、小さな序曲に仕立て上げ、題名も『ローマの謝肉祭』とした。

そのかいあってか、この曲は、短いということもあり、ベルリオーズの曲の中でも、最も演奏される機会の多い曲になっている。

ウィーン・フィルによる、シェーンブルン夏の夜のコンサート2014から。指揮は、クリストフ・エッシェンバッハ。

2014年8月17日日曜日

ベッリーニ:オペラ『夢遊病の女』

イタリアのシチリア島、カターニャ生まれのヴィンツェンツォ・ベッリーニが、1831年に発表したオペラ。

ベッリーニは、1801年生まれで、このオペラを発表したときは、わずか30歳だった。しかし、その3年後に、パリで亡くなっている。

結婚を間近に控えたアミーナは、夢遊病を患っており、そのせいで、ある夜に別な男性の部屋を訪れてしまい、婚約者から誤解されるが、最後はその誤解も解け、ハッピーエンドとなる。

夢遊病をテーマにした、珍しい内容のオペラ。

ソプラノのアミーナ役には、とりわけ高い歌唱力が求められる。最初の登場シーンから、いきなりハイテンションな歌い方が要求される。

アミーナ役は、マケドニア生まれのアナ・ドゥルロフスキ。この公演が評価され、その年の再優秀若手歌手に選ばれた。

第1幕の後半。夢遊病で伯爵の部屋を訪れていた所を、婚約者をはじめ村人に見つかってしまうシーン。怒り狂う婚約者エルヴィーノ、状況がよくわからず混乱するアミーナ、アミーナを批難する村人たち。

様々な思いが交錯して、それぞれの思いが、合唱で歌われるシーンは圧巻。

2013年6月のシュトゥットガルト歌劇場の公演。上記の他にも、数々の音楽賞に輝いた。

ハイドン:オペラ『月の世界』

フランツ・ヨゼフ・ハイドンが、1777年に作曲したオペラ。

ハイドンのパトロンであった、エステルナージ家の婚礼のために作られたオペラで、同家の歌劇場で初演された。

そのため、その後は長く演奏されず、ハイドンは、このオペラの曲を、他の曲にも活用している。

ストーリーは、娘の結婚を認めてくれない頑固な父を、娘の恋人の発案で、父親をだまして、月の世界を訪問したと思わせて、月の皇帝によって、その結婚を認めさせる、というストーリー。

父親は、だまされていたことを最後に知って激怒するが、やがて冷静になり、娘の結婚を認める。

婚礼の祝いに相応しい内容のオペラだが、そのエステルナージ家の結婚自体も、それに似たような背景があったのだろうか?

月を訪れる、というテーマのオペラであるため、いろいろな演出が可能。

2009年、ウィーンのアン・デア・ウィーン劇場で行われた公演は、アンノンクールの80歳の誕生日の前日に行われた。

地上の世界は、白を基調にしたシンプルなセット、月の世界は、黒を基調にしたSFチックなセット。その対比がとても効果的だった。

2014年8月15日金曜日

モーツァルト:聖体の祝日のためのリタニア

モーツァルトが、1772年に作曲した宗教音楽。

リタニアとは、”神よ憐れみたまえ(ミゼレーレ)”という内容の言葉を、誰かが先に唱えて、次に全員でそれを唱える、という形式。

曲の内容に限らず、あちらこちらに、”ミゼレーレ”という言葉が登場する。

Kyrie キリエ。

Panis vivus 活けるパン。パン、というテーマからだろうか、宗教音楽としては、実に生き生きとした音楽。

Verbum caro factum 肉となりしみ言葉。前の曲とはコントラストが激しい、経験的な音楽。

Hostia sancta 聖なるいけにえ。

Tremendum おそれおののき。後の、レクイエムに繋がるような物悲しいメロディ。

Dulcissimum convivium 甘みの聖体。

Viaticum 臨終聖体。

Pignus 保証。未来の栄光の保証よ、私たちを憐れみたまえ。

Agnus Dei 神の小羊。音楽は、穏やかに終わる。

2012年ザルツブルグ音楽祭での演奏は、アンノンクールの指揮、ウィーン・コンツェントゥス・ムジクスとアルノルト・シェーンベルク合唱団による演奏で、ザルツブルグ大聖堂で行われた。

モーツァルト:ミサ・ロンガ

モーツァルトが、1775年に作曲したミサ曲。モーツァルトは、何曲かのミサ曲を作っているが、これはそのうちの一つ。演奏される機会はあまりない。

キリエ。主よ憐れみたまえ。

グローリア。神の栄光を称える。

クレド。私は神を信じます。信仰宣言。

サンクトゥス。聖なるかな万物の神。

ベネディクトゥス。主からの使者が祝福されますように。

アニュスデイ。我らを憐れんでください。我らに平和を与えたまえ。

いわゆるモーツァルトらしい、はじけた感じはまったくなく、敬虔な印象の音楽。

2012年ザルツブルグ音楽祭での演奏は、アンノンクールの指揮、ウィーン・コンツェントゥス・ムジクスとアルノルト・シェーンベルク合唱団による演奏で、ザルツブルグ大聖堂で行われた。

ツィンマーマン:オペラ『兵士たち』

現代の音楽家、ベルント・アロイス・ツィンマーマンが、1964年に完成させたオペラ。

1957年にケルンのオペラ歌劇場から依頼を受けて完成させたが、あまりに構成が長大で、実演が不可能とされ、改訂している。

それでも、舞台もオーケストラも大規模なものが要求され、現在でも、上演される機会は少ない。

2012年のザルツブルグフェスティバルの公演は、まずその横長の舞台に驚かされた。

馬小屋をイメージしたような、横長の建物が舞台を左右にまたいでいる。その建物の上部には、ブランデンブルグ門の上にある馬のような像も見える。

ストーリーは、マリーという一人の性に奔放な女性に振り回される、兵士たち、姉、彼らの家族たちの物語。

そして、マリーにもその周囲にも、悲劇が訪れる。

すべての男は兵士、すべての女は娼婦、といったところだろうか。

音楽は、いわゆる現代音楽のオンパレードによるオペラ、といった感じ。

第4幕の始まりの、出演者たちによるコーラスは、とりわけエキセントリックな音楽で、この世の終わりを告げているかのようだ。

2014年8月14日木曜日

プーランク:スターバトマーテル

現代のフランスの作曲家、フランシス・プーランクが1950年に作曲した、スターバト・マーテル。

音楽は、現代音楽のような調和が崩れた音楽でなく、伝統的な、正統派の音楽。

友人の追悼のために企画され、最初は、レクイエムを意図していたが、途中から、スターバト・マーテルに変更したという。

そのせいか、もともとは、”神の怒り”のための音楽ではないか、と思われる激しい音楽も聴こえてくる。

2012年9月にパリで行われた、パーヴォ・ヤルヴィ指揮、パリ管弦楽団および合唱団の演奏。

ベートーヴェン:ヴァイオリンソナタ第8番

ベートーヴェンが、1803年に作曲した、3つのヴァイオリンソナタ、いわゆるアレキサンダーソナタの一つ。

第1楽章 アレグロ アッサイ。ト長調。

軽快な、歯切れの良い音楽。

第2楽章 テンポ・ディ・メヌエット、マ・モルト・モデラート、エ・グラッツィーゾ。変ホ長調。

静かで、内省的な情感に溢れ、哀愁に満ちた音楽。

第3楽章 アレグロ・ヴィヴィアーチェ。ト短調。

第1楽章と同様、軽快ではあるが、これまでにないユニークなメロディ。まるで、スケルツォのように聞こえる。

ザルツブルク音楽祭2012での演奏。ヴァイオリンはレオニダス・カヴァコス、ピアノはエンリコ・パーチェ。

ストラヴィンスキー:バレエ組曲『火の鳥』

ストラヴィンスキーが、バレエ・リュスのディアギレフからの依頼に基づいて、1910年に作曲したバレエ用の音楽。

ロシアの民話をテーマにした音楽で、本人によって、オーケストラがコンサートで演奏するために組曲としても編曲された。いくつかのバージョンが存在する。

聴いたのは、1919年版。

火の鳥の踊り、におけるダイナミックで緊張感のある音楽。

子守唄、における、ファゴットのユーモラスな音楽。

若き、ストラヴィンスキーの、多彩な音楽が楽しめる。

2012年9月、パーヴォ・ヤルヴィ指揮、パリ管弦楽団による演奏。


2014年8月10日日曜日

ロッシーニ:オペラ『絹のはしご』

ロッシーニが、1812年、20歳の時に作曲した、オペラ・ブッファ。

2組の男女が織りなす、軽いタッチの恋のコメディ。召使いのジェルマーのが、重要な役割を演じている。

絹のはしごとは、主人公のジューリアが、恋人が部屋に忍び込めるように用意しているはしごのこと。

2009年のロッシーニ・フェステイィバルでは、舞台の上に、舞台の様子を真上から見えるように鏡を配置し、観客が、はしごから見ているようにセットを見えるように、粋な演出がされていた。

主人公達が揃って、オペラ・ブッファのお約束の、コミカルな合唱を聴かせる。古き良きオペラ、といったところか。

ベートーヴェン:ヴァイオリンソナタ第7番

ベートーヴェンが、1803年に作曲し、ロシア皇帝アレキサンドル1世に献呈した、いわゆるアレキサンダー・ソナタの真ん中の曲。

第1楽章 アレグロ・コン・ブリオ。ハ短調。

緊張感に溢れ、劇的で、ダイナミックな音楽。

第2楽章 アダージョ・カンタービレ。変イ長調。

第1楽章の緊張を解くような静かな音楽で始まるが、後半は、不安定な、動きのある音楽になる。

第3楽章 スケルツォ、アレグロ。ハ長調。

短い、軽快なスケルツォ。

第4楽章 フィナーレ、アレグロ、プレスト。ハ短調。

中期以降のベートーヴェンらしい、深みのある音楽。終わり方も実に劇的。

一皮向けたような、そんな印象を与える、ヴァイオリン・ソナタ。

ザルツブルク音楽祭2012での演奏。ヴァイオリンはレオニダス・カヴァコス、ピアノはエンリコ・パーチェ。

ベートーヴェン:ヴァイオリンソナタ第6番

1803年に作曲され、ロシア皇帝アレキサンドル1世に献呈された、いわゆるアレキサンダー・ソナタのひとつ。

第1楽章 アレグロ。イ長調。明るく、伸びやかな音楽。

第2楽章 アダージョ・モルト・エスプレッシーボ。ニ長調。

物悲しく、文字通り感情豊かに演奏される、ヴァイオリンのメロディが、例えようもなく、美しい。

第3楽章 アレグレット・コン・バリアツィオーニ。イ長調。

軽快で、多彩な音楽が奏でられる楽章。

ザルツブルク音楽祭2012での演奏。ヴァイオリンはレオニダス・カヴァコス、ピアノはエンリコ・パーチェ。

ロッシーニ:オペラ『ブルスキーノ氏』

ロッシーニが20歳の時に作曲した、オペラ・ファルサ。

愛する女性と結婚するために、別人(ブルスキーノ氏の息子)になりすまそうとする若い男性と、その恋人や家族を巻き込んだコメディ。

序曲では、ヴァイオリンが、楽譜代を叩いて音を出す、というユニークな演奏が見られる。

最後は、すべての真実が明らかになるが、結婚が認められ、全てはハッピーエンド。

主人公の性格や、そのシーンごとに合わせて、見事に作曲されたロッシーニの音楽によって、2時間弱の短いオペラは、あっという間に終わってしまう。

現在では、ほとんど上演されないといわれる作品だが、イタリアのペーザロで行われた、2012年のロッシーニ・フェスティバルで上演された。

テアトロ・ソテラーネオという演劇集団による演出は、実にユニーク。

冒頭で、オペラ歌手や楽団員達が、公演のために集まってきて、着替えをして、オーケストラボックスに入ったり、舞台の配置に付いたりしてから、序曲が演奏される。

現代のイタリアの町並みの中で、昔の衣装を着たオペラ歌手達が、現代の観光客たちと絡みながら、オペラが演じられていく。

衣装や舞台を手がけたのは、ウルビーノ美術アカデミーの学生達。

何とも、印象に深く刻まれるような、素晴らしいオペラ公演だった。

2014年8月9日土曜日

ベートーヴェン:ヴァイオリンソナタ第5番『春』

ベートーヴェンが、1801年に作曲した、もうひとつのヴァイオリンソナタ。

あまりにも有名な、ベートーヴェンのヴァイオリンソナタ。その晴れやかなイメージから、春、という名前がついている。

第1楽章 アレグロ。ヘ長調。


これまでの、第1〜4番とは、全く違った音楽で、大きな飛躍が感じられる。

一体、この作曲家に何が起こったのだろうか?

第2楽章 アダージョ・モルト・エスプレッシーボ。変ロ長調。


第1番とはまるで違って、静かで、内省的な音楽。ピアノの音色の方が、より優っている。


第3楽章 スケルツォ、アレグロ・モルト。ヘ長調。


ピアノの軽快なスケルツォを、ヴァイオリンが追いかけて行く、短いながら、印象的な楽章。

第4楽章 ロンド、アレグロ・マ・ノン・トロッポ。ヘ長調。

ここでも主役はピアノ。ベートーヴェンは、この楽章で、ヴァイオリンの様々な弾き方と、その音色を試しているようにも思える。


ザルツブルク音楽祭2012での演奏。ヴァイオリンはレオニダス・カヴァコス、ピアノはエンリコ・パーチェ。

ベートーヴェン:ヴァイオリンソナタ第4番

ベートーヴェンが、1801年に作曲したヴァイオリンソナタの1曲。

第1楽章 プレスト。イ短調。


第1〜3番とは明らかに違い、ややダークな印象を受ける。ヴァイオリンの存在感も大きくなっており、ピアノと一体になっている。


第2楽章 アンダンテ・スケルツォーゾ・ピウ・アレグレット。アダージョ・コン・モルト・エスプレッショーネ。イ長調。


長調に戻り、明るく、穏やかな音楽。


第3楽章 アレグロ・モルト。イ短調。


再び、イ短調となり、音楽のイメージも、第1番とよく似ている。


短調と長調のバランスがとても素晴らしい。

ザルツブルク音楽祭2012での演奏。ヴァイオリンはレオニダス・カヴァコス、ピアノはエンリコ・パーチェ。

ベートーヴェン:ヴァイオリンソナタ第3番

ベートーヴェンが、1798年に作曲し、師のサリエリに献呈したヴァイオリンソナタの1曲。

第1楽章 アレグロ・コン・スプリート。変ホ長調。

明らかに、第1番、第2番とは違った印象。明るい音楽だが、より激しさ、力強さを感じる音楽。

第2楽章 アダージョ・コン・モルト・エスプレッショーネ。ハ短調。

非常に深みのある、奥深い印象のアダージョ。ピアノの音楽も美しい。

第3楽章 ロンド・アレグロ・モルト。変ホ長調。

軽快なロンド。終始、ピアノがリードして進行し、ヴァイオリンは、むしろ伴奏のようだ。

ザルツブルク音楽祭2012での演奏。ヴァイオリンはレオニダス・カヴァコス、ピアノはエンリコ・パーチェ。

ベートーヴェン:ヴァイオリンソナタ第2番

ベートーヴェンが、1798年に作曲し、師のサリエリに献呈したヴァイオリンソナタの1曲。

第1楽章 アレグロ・ビビアーチェ。イ長調。

文字通り、生き生きとした音楽。ピアノが軽快なメロディでヴァイオリンを先導している感じ。

第2楽章 アンダンテ・ピオ・トスト・アレグレット。イ短調。

静かな、物悲しい音楽。

第3楽章 アレグロ・ピアチェボーレ。イ長調。

ここでも、ピアノがヴァイオリンをリードしている。

アレグロだが、第1楽章ほど軽快ではない。そのあたりが、ピアチェボーレ、という言葉のニュアンスなのだろう。

ザルツブルク音楽祭2012での演奏。ヴァイオリンはレオニダス・カヴァコス、ピアノはエンリコ・パーチェ。

ベートーヴェン:ヴァイオリンソナタ第1番

ベートーヴェンが、1798年に作曲した、最初のヴァイオリンソナタ。師のサリエリに献呈している。

第1楽章 アレグロ・コン・ブリオ。ニ長調。

心が、晴れ晴れとするような、実に明るい音楽。

第2楽章 Tema con variazioni Andante con moto。イ長調。

明るさの中に、激しさが秘められた音楽。

第3楽章 ロンド アレグロ。ニ長調。

まるで、シューベルトのような明るいメロディラインが、とても印象的。

ザルツブルク音楽祭2012での演奏。ヴァイオリンはレオニダス・カヴァコス、ピアノはエンリコ・パーチェ。

2014年8月4日月曜日

ブリテン:シンフォニエッタ

ブリテンが、王立音楽大学に在学中、1932年に作曲した、小編成の管弦楽団のための音楽。

ブリテンというと、オペラや映画音楽など、ポピュラーな作曲家、というイメージが強いが、この音楽は、若い頃の作品のせいか、とてもモダンな音楽になっている。

クララ国際音楽祭2013での、マーラー・チェンバー・オーケストラによる演奏。

ショスタコーヴィチ:チェロ協奏曲第1番

ショスタコーヴィチが、1959年に作曲した、1つ目のチェロ協奏曲。

ショスタコーヴィチは、プロコフィエフのチェロ協奏曲第2番を聞いて、大きく触発されて、この曲を作った。

第1楽章 アレグレット。ショスタコーヴィチらしい、エキセントリックに満ちている。

第2楽章 モデラート、アタッカ。静かな音楽だが、複雑な音楽でもある。

第3楽章 カデンツァ、アタッカ。第2楽章からそのまま引き続き、演奏される。

第4楽章 アレグロ・コン・モート。再び、第1楽章のエキセントリックさが戻ってくる。

クララ国際音楽祭2013での演奏。指揮、テオドール・クルレンツィス。マーラー・チェンバー・オーケストラ。チェロは、スティーヴン・イッサーリス。

2014年8月3日日曜日

ファリャ:バレエ音楽『三角帽子』

ファリャは、バレエ・リュスを主催するディアギレフから、『スペインの庭の夜』のバレエ化をもちかけられたが、乗り気ではなく、代わりに、アラルコンの小説、三角帽子に音楽をつけることになった。

作曲は、1916年から1917年にかけて行われ、1919年に大幅な改編を行った。

バレエは2幕で構成され、音楽は13曲からなっている。

働き者で美人の粉屋の妻に、手を出そうとする代官が、最後はとっちめられる、というストーリー。

序奏で演奏されるテーマがとりわけ有名。最後の大団円の部分にも、その音楽が再び登場し、ハッピーエンドらしい、華やかなフィナーレを迎える。

フラメンコのような音楽は、まさにスペインらしい。

2014年5月のN饗の定期演奏会の演奏から。指揮は、ヘスス・ロペス・コボス。

クリストバル・アルフテル:第1旋法によるティエントと皇帝の戦い

1930年生まれで現役のスペインの作曲家、クリストバル・アルフテル。

そのアルフテルが、1986年に作曲した、同じく音楽家のパウル・ザッハーの80歳の誕生日のために書き下ろした曲。10分ほどの作品。

何とも不思議な題名だが、”第1旋法によるティエント”と”皇帝の戦い”という、それぞれ15世紀と17世紀のスペイン音楽の名前から、名付けられている。

その2つの作品からの音楽と、現代音楽らしい、不協和音的な音楽や、不安をかき立てるような音楽を組み合わせている。

中でも、弦楽器による、機械的な演奏の部分の音楽が、とりわけ印象的だった。

2014年5月のN饗の定期演奏会での演奏。指揮は、ヘスス・ロペス・コボス。

フランク:交響曲

フランクが、1886年から1888年にかけて作曲した、唯一の交響曲。

ベルリオーズの幻想交響曲ような、いわゆる循環形式になっており、第1楽章と第2楽章のテーマが、第3楽章にも再び登場し、フィナーレを迎える。

第1楽章の主題が印象的。

第1楽章 レント-アレグロ・ノン・トロッポ。静かに始まるが、次第にダイナミックな展開になる。

第2楽章 アレグレット。全体を通じて穏やかな内容。

第3楽章 アレグロ・ノン・トロッポ。

2014年5月のN饗の定期演奏会。指揮は、ガエタノ・デスピノーサ。

リヒャルト・シュトラウス:紀元2600年祝典曲

日本政府は、1940年(昭和15年)に紀元2600年を記念するために、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、ハンガリーに、祝典曲の作曲を依頼した。

ナチス政権のゲッペルスは、この曲をシュトラウスに依頼し、シュトラウスは、この曲をわずか8日間で書き上げた。

当時、シュトラウスは、オペラ:カプリッチョの曲を作曲中で、その合間の、やっつけ仕事だったようだ。

祝典曲らしく、パイプオルガンなども使った華やかさと、所々で、シュトラウスらしい、モダンな音楽も取り混ぜている。

海の情景、桜祭り、火山の噴火、サムライの突撃、天皇頌歌。という5つの表題が付けられているが、シュトラウスが自分で付けたものではない。

曲を後から聞いた、日本の関係者が、音楽の雰囲気から、そう名付けたのだろう。

内容は、アルプス交響曲とかなり似通っているという。日本での初演は、歌舞伎座で行われた。

2014年のN饗の定期演奏会での演奏。指揮は、ネーメ・ヤルヴィ。

リヒャルト・シュトラウス:祝典前奏曲

シュトラウスが、ウィーン・コンツェルトハウスのこけら落としのために依頼され、1912年に書き下ろした、管弦楽用のおよそ10分ほどの曲。

パイプオルガンを駆使して、文字通り、華やかなおめでたい曲になっている。

クライマックスの部分は、壮麗で、ワーグナーの音楽用にも聞こえるし、一部、薔薇の騎士の音楽のようにも聞こえる。

2014年4月のN饗の定期演奏会での演奏。指揮は、ネーメ・ヤルヴィ。

リヒャルト・シュトラウス:バレエ音楽『ヨセフの伝説』

シュトラウスが、1912〜14年にかけて作曲した、バレエ用の音楽。ディアギレフ率いる、オペラ・リュスからの依頼だった。

バレエのストーリーは、洗礼者のヨハネを、権力者の妻が誘惑しようとするが果たせず、その妻はヨセフを拷問するが、ヨセフは神に救われる、という聖書の物語。

どうみても、サロメのバレエ版のように思える。

しかし、音楽は、オペラと違ってバレエ用というだけあって、シュトラウスとしては、踊りのための音楽と割り切っていたらしい。

そのためか、サロメよりは、よりおとなしい感じの音楽になっている。

2014年4月のN饗の定期演奏会。指揮は、ネーメ・ヤルヴィ。

2014年7月29日火曜日

シベリウス:交響曲第2番

シベリウスが、1901年に完成させた、2番目の交響曲。シベリウスの交響曲の中では、最もポピュラーなもの。

実に聞き応えのある交響曲で、数ある交響曲の中でも、屈指の名曲。

第1楽章 Allegretto。

勇壮な第1主題と、ややコミカルな第2主題が展開され、複雑な構成。

第2楽章 Tempo andante,ma rubato - Andante sostenuto。

全体的に重々しい。金管楽器と打楽器が効果的に使われて、ダイナミックな音楽も展開される。

この交響全体の中心的な位置を占める。

第3楽章 Vivacissimo - Lento e suave - attacca。

第2楽章のダークな雰囲気が、そのまま引き継がれる。哀愁のある美しい主題も。

第4楽章 Finale.Allegro moderato - Moderato assai - Molt largamente。

第3楽章から続けて演奏される。

冒頭で、勇壮な主題が奏でられる。哀愁に満ちた、第2主題と展開され、壮大なフィナーレを迎える。

2014年4月のN饗の定期公演から。指揮は、ネーメ・ヤルヴィ。

スヴェンセン:交響曲第2番

ヨハン・スヴェンセンは、ノルウェーの作曲家にして、指揮者、そしてヴァイオリニスト。

ニールセンに大きな影響を与えたという。

この2番目の交響曲は、1874年に完成された。

第1楽章 アレグロ。

勇壮で、明るい音楽。

第2楽章 アンダンテ・ソステヌート。

第3楽章 間奏曲:アレグロ・ジュスト。

第4楽章 終曲:アンダンテ-アレグロ・コン・フォーコ。

勇壮な主題を中心に展開され、ドラマティックなフィナーレを迎える。

全体的に、穏やかな内容の音楽で、北欧の雄大な自然と調和するようなイメージ。

2014年4月のN饗の定期演奏から。指揮は、ネーメ・ヤルヴィ。


グリーグ:ペール・ギュント 組曲 第1番

グリーグが1875年に完成させた劇音楽を、1891年に組曲として編曲したもの。

イプセンが、自らのペール・ギュントの劇中音楽をグリーグに依頼したのがきっかけ。

第1曲 朝。

朝の清々しさを表した音楽。ペール・ギュント、といえば、まずこのメロディが浮かんでくる。

第2曲 オーセの死。

短い、静かな曲で、あっというまに終わってしまう。

第3曲 アニトラの踊り。

軽快なワルツ。ヴィオラやチェロが、ピチカートでワルツのリズムを奏でる。

第4曲 山の王の宮殿にて。

こちらも、第1曲と並んでポピュラーなメロディ。ボロディンなどのロシア音楽のような雰囲気。

2012年4月のN饗の定期演奏から。指揮は、ネーメ・ヤルヴィ。

モーツァルト:交響曲第39番

モーツァルトが、1788年に作曲した39番目の交響曲。この39番からの3つの交響曲を、モーツァルトの3大交響曲という。

第1楽章 Adagio; Allegro。

始め、陰鬱な重々しい音楽で始まるが、やがて、流れるようなメロディが聞こえてくる。

第2楽章 Andante con moto。

単純でシンプルな第1主題と、奥行きのあるある第2主題が、見事に展開される。

第3楽章 Menuetto。

メヌエットとは、こんな音楽のこと、といってもいい教科書的なメヌエット。

第4楽章 Allegro。

流れるような軽快な第1主題。最後は、突然に、意表をついたフィナーレを迎える。

2014年2月のN饗の定期演奏会から。指揮は、ネヴィル・マリナー。

モーツァルト:ピアノ協奏曲第22番

モーツァルトが、1785年に作曲した、22番目のピアノのための協奏曲。

第1楽章 Allegro 変ホ長調。

モーツァルトにしては、ちょっといけていない出だし。

しかし、ピアノの演奏が始まると、そんなことをすぐに忘れさせるほどの、美しいメロディがピアノによって奏でられる。

第2楽章 Andante ハ短調。

瞑想的な、透明感に溢れた音楽。宗教的な敬虔な気持ちにもさせられる。ファゴットとフルートの掛け合いも美しい。

特に、終わりの部分のピアノの音楽は、この上なく、甘美である。

第3楽章 Allegro 変ホ長調 ロンド形式。

一転して、シンプルだが、テンポに乗った、軽やかな音楽。フィナーレも、自然。

2014年2月のN饗の定期演奏会から。指揮は、ネヴィル・マリナー。ピアノは、ティル・フェルナー。


モーツァルト:交響曲第35番『ハフナー』

モーツァルトは、1782年にザルツブルグのハフナー家のために、2つのセレナーデを作曲した。翌年に、そのうちの1曲を交響曲に編曲したのが、このハフナー交響曲。

第1楽章 アレグロ・コン・スピリート。

モーツァルトらしく、いきなる出だしから音楽が跳躍しているイメージ。

第2楽章 アンダンテ。

いかにも、貴族向けの音楽。

第3楽章 メヌエット。

第4楽章 プレスト。

軽やかなフィナーレ。

2014年のN饗定期演奏会から。指揮は、ネヴィル・マリナー。

2014年7月28日月曜日

シベリウス:交響詩『四つの伝説』

シベリウスが、1890年代から1950年代にかけて、改作を繰り返した作曲し続けた、4曲からなる交響詩。

フィンランドの叙事詩『カレワラ』の中にある、レンミンカイネンという英雄にまつわる話を4つの交響詩にまとめたもの。

シベリウスは、当初、ワーグナーの指輪のようなオペラを構想していたが、やがて、リストの交響詩の方が、より自分の理想を形に出来ると考えを変えて、交響詩として作曲した。

第1曲:レンミンカイネンとサーリの乙女たち。

レンミンカイネンが一人の女性に恋し、二人が結ばれるまで。

終止、伸びやかな音楽が続く。

第2曲:トゥオネラの白鳥。

レンミンカイネンが、結ばれた女性と別れ、新しい女性を求めて旅立つ。新しい女性を得るための条件の一つが、白鳥を射ることだった。

オーボエの物悲しいソロから始まる。白鳥をイメージした、ハープの音も聞こえるが、全体を通してゆっくりとした、静かな音楽。

第3曲:トゥオネラのレンミンカイネン。

白鳥を追ったレンミンカイネンが、彼を憎む、盲目の羊飼いに、水蛇によって殺される。

レンミンカイネンの死が、シベリウスのダイナミックな音楽で表現されている。

第4曲:レンミンカイネンの帰郷。

母親の努力によって再生したレンミンカイネンが故郷に帰る。

英雄の復活と帰還を祝う、勇壮な音楽。

2014年2月のN饗の定期演奏会から。指揮は、尾高忠明。

シベリウス:ヴァイオリン協奏曲

1903年に作曲された、シベリウスの唯一のヴァイオリン協奏曲。

シベリウスは、若い頃ヴァイオリニストを目指しており、ウィーンフィルの試験を受けた経験がある。

一度改訂し、その最初の演奏は、指揮にリヒャルト・シュトラウス、ヴァイオリニストにはヨーゼフ・ヨアヒムという夢のようなコンビだったが、ヨアヒムからの評価は、今ひとつだったという。

それが、今では、ヴァイオリン協奏曲の中でも、屈指の名曲となっている。

第1楽章 Allegro moderato - Allegro molto - Moderato assai - Allegro moderato - Allegro molto vivace。

シベリウスは、この楽章の演奏を、”極寒の澄み切った北の空を、悠然と滑空する鷲のように”と支持したという。

その通りに、音楽は、とにかくストイック。一面の銀世界、激しい冬の嵐の中から、聞こえてくるような、そんなイメージの音楽で始まる。

そのダークな感じが、とにかく、堪らない。

第2楽章 Adagio di molto。

第1楽章ほどのダークさは無いが、静かな音楽。

第3楽章 Allegro ma non troppo。

ラテン音楽のような、民族音楽風の印象的な主題を、ヴァイオリンとオーケストラが奏でる。

2014年2月のN饗定期公演から。指揮は尾高忠明、ヴァイオリンは、ワン・ジジョン。

シベリウス:アンダンテ・フェスティーヴォ

シベリウスが、1922年に作曲した弦楽合奏曲。当初は、弦楽四重奏として作曲された。

フィンランドのある製作所の25周年の記念行事のために依頼されたのが、作曲のきっかけだった。

シベリウスは、この曲をいたく気に入り、自分でも度々演奏したという。

とにかく美しい弦楽曲で、同様のチャイコフスキーの弦楽セレナーデでも感じが似ている。

2014年2月のN饗の定期公演から。指揮は、尾高忠明。

2014年7月26日土曜日

ロッシーニ:オペラ『オリー伯爵』

ロッシーニが、フランスで暮らしていた、1828年に作曲したフランス語のオペラ。

十字軍の時代に、ロワーヌ川沿いのトゥレーヌに住んでいたといわれる、好色なオリー伯爵の伝説がベースになっている。

オリー伯爵が、美しいアデル公爵夫人をものにするために、キリスト教の行者に変装して近づくが、逆にだまされて、いっぱい食らわされる、というストーリー。

ロッシーニは、少し前に作曲した『ランスへの旅』が、戴冠式用で、限られた上演機会しか無かったために、いくつかの音楽を、このオペラにも使い回している。

アデル公爵夫人の美しいアリア、オリー伯爵とその小性によるお互いへのライバル心をむき出しにした二重唱、舞踏会での壮大な合唱など、ロッシーニの多彩な音楽を楽しめる。

2009年のロッシーニ・オペラ・フェスティバルの公演。主役のオリー伯爵は、中国生まれで、日本で音楽を学んだ石倚潔が演じている。

ヨハン・シュトラウス2世:オペラ『こうもり』

ワルツ王、ヨハン・シュトラウス2世が1874年にわずか6週間で書き上げたオペレッタ。

ストーリーは、ひょんなことで禁固刑を言い渡された男爵とその妻ロザリンデ、彼女に言い寄る男、小間使いの女性アデーレなどによって巻き起こされる、たわいのないコメディ。

それぞれ内緒で舞踏会に来た男爵、ロザリンデ、アデーレが、騒動を巻き起こす。

それが、シュトラウスの美しいウィーンオペラの調べによって、最高のオペレッタとして仕上げられた。

出演者には、歌唱力はもとより、観客を笑わせる演技力も要求される。

第2幕で、ハンガリーの伯爵夫人に扮したロザリンデが、自分がハンガリー人であることを証明するために歌う、ハンガリー民謡のチャールダーシュが、美しく、楽しい。

その第2幕のもうひとつのハイライト、雷鳴と電光で、出演者全員が音楽に合わせて踊るシーンは圧倒的。この公演でも、しばらく拍手が鳴り止まなかった。

第3幕の最後、この茶番劇を企んだファルケ博士が、すべては自分の復讐”こうもりの復讐”だったことを告げて、男爵がロザリンデに誤って、すべては丸く収まる。

男爵は言い訳に、”すべては酒の中の王、シャンパンのせいなのさ”と嘯いてみせる。

大晦日に起こった出来事が描かれているので、ウィーンでは年末恒例のとして上演される。

カルロス・クライバーによる1986年のミュンヘンのバイエルン州立歌劇場での公演。

クライバーは、このオペレッタを、ウィーン歌劇場では一度も指揮を行っていない。

かつては、オペレッタは格が低いということで、ウィーン歌劇場では演奏されていなかった。その伝統を頑に守っていた。

2014年7月20日日曜日

リヒャルト・シュトラウス:オペラ『ばらの騎士』

リヒャルト・シュトラウスの代表的なオペラで、フィガロの結婚と並んで、私が最も愛するオペラ作品の一つ。

シュトラウスは、それまでサロメ、エレクトラなどの前衛的なオペラを作っていた。

この作品では、モーツァルトのフィガロの結婚をもとにして、もっとポピュラーでありながら、しかも、前衛的な音楽を取り混ぜた、独自のオペラ作品を目指した。

脚本は、当時のウィーンを代表する作家、ホフマンスタール。これ以上、望むべくも無いコンビが、音楽史上における屈指の名作オペラを作り上げた。

作曲した時期は、1909年から1910年にかけて。すでに、ヨーロッパの秩序は、崩れかけていた。

第1幕では、元帥夫人マリー・テレーズとオクタヴィアンとの、愛とすれ違いが奏でられる。

幕の最後で、マリー・テレーズは、オクタヴィアンに、自分がこれから年老いていくこと、そして、彼が、やがて自分から離れていくことを告げるが、オクタヴィアは、その言葉を受け入れられない。

第2幕の冒頭では、そのオクタヴィアンが、ばらの騎士として、ゾフィーと運命的な出会いをする。

その場面での2人の二重奏は、このオペラのハイライト。シュトラウスのメロディメーカーとしての才能が、いかんなく発揮される。

このオペラの悪役、オックス男爵のシーンでは、ウィーンのワルツのテーマが流れる。2幕の終了のシーンで、それが効果的に使われる。

ウィーンを代表する音楽が、オックス男爵の音楽に使われるというところに、シュトラウスのユーモア心が垣間見える。

第3幕では、そのオックス男爵がまんまと罠にはまるが、元帥夫人マリー・テレーズが登場し、彼女なりの結末をこのオペラにもたらす。

悪役のオックスが、壮大なウィーンオペラが奏でられる混乱の中に去り、残された3人の、終わりと始まりが演じられる。

数あるオペラ作品の中でも、このシーンほど美しいシーンは、他に思いうかべることが、実に難しい。

自分の愛人だった若いオクタヴィアンの愛が、若いゾフィーに移っていくことを、悲しく、しかし毅然と見送るマリー・テレーズ。

3人のそれぞれの感情が、ソプラノとメゾ・ソプラノの美しい歌で奏でられる。

マリー・テレーズが去った後に、オクタヴィアンとゾフィーが、自分たちの愛の未来を歌い上げる。

主要な登場人物、元帥夫人マリー・テレーズとオクタヴィア、ゾフィーと悪役のオックスの4人の人物の造形と、それを象徴する音楽が素晴らしい。

1994年、ウィーン歌劇場における、カルロス・クライバー指揮の伝説的な公演。とにかく配役が素晴らしい。

ソプラノの元帥夫人マリー・テレーズにフェリシティ・ロット、メゾ・ソプラノのアンネ・ソフィー・フォン・オッター、ソプラノのゾフィーにバーバラ・ボニー、バスのオックス男爵にクルト・モル。

全体の演出は、伝統的。今後のすべてのこのオペラの公演を評価するのに仕える、スタンダード的な公演だ。

2014年7月19日土曜日

バルトーク:ヴァイオリン協奏曲第2番

バルトークが1937年から1938年にかけて作曲した、2番目のヴァイオリン協奏曲。

生前には発表されず、死後、楽譜が発見されたもうひとつのヴァイオリン協奏曲第1番があり、その後、第2番となった。

バルトークらしい、民族舞曲のような音楽が数多く登場する。

その一方で、ヴァイオリンの演奏にも高度なテクニックが要求される。

2010年10月と11月に撮影されたリハーサル演奏から。ヴァイオリンは、ヴァレリー・ソコロフ。デイヴィッド・ジンマン指揮、チューリヒ・トーンハレ管弦楽団の演奏。

2014年7月12日土曜日

バルトーク:管弦楽のための協奏曲

バルトークが、1943年の作曲した、5つの楽章からなる協奏曲。

交響曲のような構成を持っているが、バルトークは、あくまでも、この曲をオーケストラの中の楽器同士の協奏曲と考えていた。

バルトークは、この時期、作曲への意欲を失っていたが、ボストン交響楽団の音楽監督、クーセヴィツスキーから作曲の依頼を受けて、自信の代表曲となる、この曲の作曲に取りかかった。

第1楽章 Introduzione(序奏)。Andante non troppo - Allegro vivace。

ショスタッコービッチの交響曲にありそうな印象的なメロディが主題になっている。伝統的な感じのする音楽。

第2楽章 Giuoco delle coppie(対の遊び)。Allegro scherzando。

木管楽器、金管楽器を中心としたスケルツォ。

第3楽章 Elegia(悲歌)。Andante non troppo。

ハープと吹奏楽器による幻想的な音楽で始まる。その後、オーケストラ全体で、悲劇的な印象の壮大な音楽が展開される。

第4楽章 Intermezzo interrotto(中断された間奏曲)。Allegretto。

ここでは、明らかにショスタッコービッチの交響曲第7番からの引用が奏でられ、それを自ら揶揄するような、コミカルな音楽が続く。

バルトークのユーモアのセンスが見事に発揮されている楽章。

第5楽章 Finale(終曲)。Pesante - Presto。

まるでネコの鳴き声のような、不思議なメロディが壮大なフィナーレとなって、終わりを告げる。

2011年12月、ブーレーズ指揮、パリ管弦楽団による演奏。ブーレーズ86才の指揮。

バルトーク:ピアノ協奏曲第2番

バルトークが、1930年から1931年にかけて作曲した2番目のピアノ協奏曲。

第1楽章は、弦楽器が全く使われていない。ピアノと打楽器、金管楽器などによる演奏。ピアノも打楽器的に扱われ、激しい印象。

第2楽章では、ピアノと弦楽器だけの演奏。今度は一転して、弦楽をベースにした静かな演奏。

第3楽章では、初めてすべての楽器での演奏、という珍しい構成を持っている。

全体を通じて、高度なピアノのテクニックが要求される。

2011年12月、パリでの演奏。ピアノは、ベルトラン・シャマユ、ブーレーズ指揮による、パリ管弦楽団との演奏。

ヤナーチェク:狂詩曲『タラス・ブーリバ』

ヤナーチェクが、ゴーゴリの作品を元に1918年に作曲した、3曲からなる標題音楽の組曲。

ヤナーチェクは、モラヴィア地方生まれのチェコ人だが、ロシアを中心とした、スラヴ国家の統一を、夢見ていた。

コサックの隊長、ブーリバの二人の息子の死と、ブーリバ本人の死が、3つの曲で描かれる。

第1楽章、アンドレイの死。

第2楽章、オスタップの死。

第3楽章、タラス・ブーリバの予言と死。

最後のブーリバの予言と死という音楽では、ヤナーチェクのオーケストレーションの素晴らしさが、より際立って表現されており、美しい。

2012年10月のトマーシュ・ネトピル指揮、パリ管弦楽団の演奏。

2014年7月4日金曜日

ロッシーニ:スターバト・マーテル

ロッシーニが、オペラ作曲家としては引退した後、1842年に作曲した、スターバト・マーテル。

スターバト・マーテルといえば、敬虔な音楽のボッケリーニのものが有名だが、ロッシーニのスターバト・マーテルは、まるでオペラ名曲集のような趣き。

はっきりって、あまり敬虔な気持ちを起こさせる内容ではない。

明らかに、自分のオペラ作品に似たメロディが登場するので、聞く人は、どうしてもロッシーニのオペラの方を思い出してしまう。

2011年のザルツブルグ音楽祭での演奏から。

ボッケリーニ版のスターバトマーテルの録音でも共演した、アンナ・ネトレプコとマリアンナ・ピッツォラートが、息のあった歌声を聴かせた。

2014年7月3日木曜日

ハイドン:交響曲第104番『ロンドン』

ハイドンが、1795年にロンドンで作曲したかけて交響曲のひとつ。

その中の代表的な曲で、”ロンドン”と呼ばれる。ハイドンにとって、最後の交響曲となった。

第1楽章、アダージョ−アレグロ。ファンファーレのような、壮麗な音楽がメインのパートになっている。

第2楽章、アンダンテ。静かな、穏やかな音楽。

第3楽章、メヌエット:アレグロ。こちらも、第1楽章のような壮麗な、堂々とした音楽。

第4楽章、フィナーレ:スピルトーゾ。軽快なフォナーレ。クロアチアの民謡風な音楽が使われている。

2011年のザルツブルグ音楽祭から。指揮はアントニオ・パッパーノ、聖チェチーリア国立音楽院管弦楽団による演奏。

2014年6月8日日曜日

メシアン:世の終わりのための四重奏曲

オリヴィエ・メシアンが、第2次世界大戦中の1940年、ドイツの収容所に収監されていた時に作曲した、ピアノ、ヴァイオリン、チェロ、クラリネットのための管弦楽曲。

8つのパートから構成されている。

1. 水晶の典礼 Liturgie de cristal

導入部のような、穏やかな音楽。

2. 世の終わりを告げる天使のためのヴォカリーズ Vocalise, pour l'Ange qui annonce la fin du Temps

最初の曲とはうって変わって、激しい、文字通りのこの世の終わりを告げるような音楽で始まり、やがて、静かな音楽になっていく。

3. 鳥たちの深淵 Abîme des oiseaux

クラリネットによる独唱。祈りを捧げるような敬虔な気持ちがする。

4. 間奏曲 Intermède

リズミカルな音楽。気分転換のようで、短いスケルツォのような音楽。

5. イエスの永遠性への賛歌 Louange à l'Éternité de Jésus

チェロとピアノによる演奏。

再び、静かな瞑想に導くような音楽。シンプルな音楽が延々と続くが、聴いているうちに、眠くなるというか、瞑想に導かれるようになる。

6. 7つのトランペットのための狂乱の踊り Danse de la fureur, pour les sept trompettes

一転して、狂乱の踊りの音楽。

7. 世の終わりを告げる天使のための虹の混乱 Fouillis d'arcs-en-ciel, pour l'Ange qui annonce la fin du Temps

美しい音楽が、激しい不協和音によって中断される。それが、虹の混乱 、ということなのだろう。

8. イエスの不滅性への賛歌 Louange à l'Immortalité de Jésus

ヴァイオリンとピアノによる演奏。

5番目の曲と対応している。いずれも、ピアノは、低音の伴奏に留まっているが、この単調な繰り返しが、ヴァイオリンの音色と相まって、人々を、敬虔な世界に導いていく。

この曲の初演は、収容所の中で行われた。メシアンは、自分の曲が、これほど人々に集中して聴かれ、またその内容が理解された事はなかった、と語ったという。

2011年のメシアン音楽祭での演奏。フランス、メイジュのラ・グラーヴ教会で行われた。

2014年6月2日月曜日

スメタナ:交響詩『わが祖国』

チェコの作曲家、ベドルジハ・スメタナが、1874年から1879年にかけて作曲した、管弦楽用の6つの交響詩による組曲。

第1曲:ヴィシェフラド。高い城、を意味し、プラハにある実際の城をイメージして作曲された。

吟遊詩人を表すハープの音で始まる。音程が一気に上がり、下がる部分は、そびえ立つ城を表現しているようだ。

第2曲:ヴルタヴァ。わが祖国を代表する曲。この第2曲だけが演奏されることもある。ドイツ語で言えば、モルダウ川。こちらの方が、よく知られている。

第3曲:シャールカ。チェコの神話に登場する女神の名前。この交響詩の中で、最も劇的な音楽。

第4曲:ボヘミアの森と草原から。表題とは、少し違ったイメージの、何といえない不思議なメロディで始まる。後半は、チェコの民族的な舞踏音楽が華やかに奏でられる。

第5曲:ターボル。南ボヘミアの都市の名前。中世の宗教改革において、フス派の拠点だった。

次のプラニークと合わせて、戦争で命を落としたフス派の人々を讃える内容になっている。そのせいか、戦争を感じさせる、勇壮な音楽が多い。

第6曲:ブラニーク。ボヘミアの中央にある山の名で、ここには、多くのフス派の人々が眠っているという。

最後は、フス派の人々を讃える、壮麗な音楽でフィナーレを迎える。

2010年4月、アムステルダムでの、アンノンクール指揮、コンセルトヘボウの演奏。

2014年6月1日日曜日

ブルックナー:交響曲第6番

ブルックナーが、1879年から1881年にかけて作曲した6番目の交響曲。

スイスのモンブランへの旅行で受けたインスピレーションをもとに作曲された。

第1楽章、マエストーゾ。アラビアのような主題の音楽が印象的。

第2楽章、アダージョ、きわめて荘重に。途中、マーラーのアダージョのような音楽があり、マーラーが、ブルックナーの影響を受けていたことがうかがえる。

第3楽章、スケルツォ、早くなく。ブルックナーによく登場するメロディで始まる。

第4楽章、フィナーレ、動きを持って、しかし速すぎないように。ブルックナーらしい終わり方。

1979年、ショルティ指揮、シカゴ交響楽団の演奏。

2014年5月24日土曜日

ショパン:ピアノ協奏曲第2番

ショパンが、1830年に完成させたピアノ協奏曲。第2番という番号がついているが、実際は、第1番より以前に完成された。

第1楽章、マエストーゾ。幻想的なピアノの調べが美しい。

第2楽章、ラルゲット。ほとんど、ピアノのソロと言ってもいいくらいで、オーケストラは、BGMとしてしか、用いられていない。

ゆっくりと奏でられる、ピアノの旋律が、ロマンチックで実に美しく、この協奏曲の最大の魅力。

第3楽章、アレグロ・ビビアーチェ。マズルカのようなピアノのメロディで始まる。ポーランドの民族音楽のピアノのメロディを、オーケストラが補足する、といった内容で、ここでもやはり中心はピアノ。

オーケストレーションのまずさがよく指摘される。ピアノ以外は、ショパンでなく、別な人間が作曲したとも言われている。

いずれにしろ、ショパンは、やはりピアノの作曲と演奏。

その意味では、この曲は、協奏曲とは呼べないだろう。

1975年のロンドン、88歳のルービンシュタインと、46歳のアンドレ・プレヴィン指揮ロンドン交響楽団による演奏。

モーツァルト:クラリネット協奏曲

モーツァルトが、1791年に作曲した、クラリネットのための協奏曲。

モーツァルトは、同じ年の12月に亡くなっており、協奏曲としては、モーツァルトにとって、最後の曲となった。

親しいクラリネット奏者、アントン・シュタードラーの演奏に触発され、彼のために作曲した曲。クラリネット五重奏曲も、シュタードラーのために作曲された。

クラリネットという楽器が持っている、音色の豊かさを、最大限に引き出している。

3つの楽章から構成されているが、第2楽章のアダージョが、とりわけ美しい。

1987年9月、ウィーンでの演奏。クラリネットはペーター・シュミードル。バーンスタイン指揮、ウィーンフィル。

プロコフィエフ:3つの子供の歌

プロコフィエフが、1936年から1939年にかけて作曲した、小さな3つの歌曲。

同じ時期に、プロコフィエフは、ピーターと狼、を作曲しており、その素材として作曲したのかもしれない。

おしゃべり。おしゃべりな好きな子供、文字通り、たわいもないおしゃべり。中に、日本語、という言葉も登場する。

快い歌。私はみんなが好きなキャンディー。というこちらも子供っぽい歌。

最後は、子豚。庭で楽しく遊び回る子豚を見たい子供が、子守りの女性にたしなめられる、という内容。

歌は、ペーター・シュライアー。ピアノはルドルフ・ブッフビンダーによる、1972年の演奏。

モーツァルト:交響曲第38番『プラハ』

モーツァルトが、1786年に完成させた、38番目の交響曲。

プラハで『フィガロの結婚』が大ヒットし、自らプラハを訪れ、フィガロを指揮した際に、同じく演奏されたのがこの交響曲だった。

プラハの訪問に合わせて作曲した曲ではないようだが、そうした経緯から、プラハと呼ばれている。

通常は4つある楽章が、メヌエットに相当する楽章がなく、3つしかない。

同じ時期に作曲された、『フィガロの結婚』からの音楽が、いたるところで使われている。

1971年、ウィーン楽友協会での、ラファエル・クーベリック指揮、ウィーンフィルの演奏。

モーツァルト:ピアノ協奏曲第23番

モーツァルトが、1786年に完成させた23番目のピアノ協奏曲。

モーツァルトのピアノ協奏曲の中でも、屈指の名曲。

第1楽章アレグロは、ピアノとオーケストラが完全に一体となっている。

第2楽章のアダージョは、短いが、静かで印象的な、モーツァルトの数あるメロディの中でも、屈指のものの一つ。

第3楽章アレグロ・アッサイは、一転して、ピアノの流れるような旋律が、オーケストラを引っ張る。

1976年4月、ウィーン楽友協会、マウリツィオ・ポリーニのピアノ、カール・ベーム指揮、ウィーンフィルの演奏。

2014年5月20日火曜日

モーツァルト:ピアノ協奏曲第19番

モーツァルトが、1784年に作曲した、19番目のピアノ協奏曲。

この年に、モーツァルトは、何と、6曲のピアノ協奏曲を作曲している。すべて、自分のレパートリー用に作曲した作品。

第1楽章のアレグロ・ヴィヴァーチェは、モーツァルトらしいメロディが満載。

第2楽章のアレグレットは、何とも言えない美しさをたたえた楽章。モーツァルトの数ある美しいメロディの中でも、屈指の美しさを誇る。

第3楽章のアレグロ・アッサイは、一転して、軽快な流れるようなロンド。

1976年4月に行われた、ピアノ、マウリツィオ・ポリーニ、カール・ベーム指揮、ウィーンフィルによる、ウィーン楽友協会での演奏。

2014年5月17日土曜日

シューベルト:弦楽五重奏曲

シューベルトが、1828年、亡くなる2ヶ月前に作曲した弦楽五重奏曲で、シューベルトの遺作でもある。

ヴァイオリン2台に、ヴィオラと2台のチェロ、という珍しい構成になっている。低音部分の多彩な展開を狙ってのことだろう。

4つの楽章からなり、第2楽章は、映画のBGMなどによく使われている。

全体でおよそ1時間と長く、交響曲のような、どっしりとした構成になっている。

2002年、ザルツブルグのモーツァルトウィークにおける、ギドン・クレーメルとクレメラータ・バルティカによる演奏。

この演奏は、弦楽五重奏ではなく、弦楽合奏版での演奏だった。

モーツァルト:弦楽五重奏曲第3番

モーツァルトが、1787年に作曲した3番目の弦楽五重奏曲。

同じ頃、弦楽五重奏曲第4番も作曲しており、いずれも、モーツァルトの全盛期の名曲の一つと言われている。

第1楽章 Allegro。バイオリンと他の楽器が会話するように始まる。

第2楽章 Andante。穏やかな美しい音楽。

第3楽章 Menuetto. Allegretto。ゆったりとした川の流れのような優しい音楽。

第4楽章 Allegro。覚えやすい軽快なメロディが印象的。

ヴァイオリンとビオラがそれぞれ2台ずつ。1つのヴァイオリンとビオラが、掛け合いでメロディを奏でて、それを別のヴァイオリンとビオラが、伴奏で支える。

弦楽五重奏曲だからこそできるそうした音楽を、モーツァルトはこの曲の中で巧く活用している。

2002年のザルツブルグ音楽祭でのウィーン弦楽六重奏団の演奏。

プロコフィエフ:弦楽四重奏曲第2番

プロコフィエフが、戦時中に、カバルディノ・バルカル自治共和国に疎開していた時に作曲した、2番目の弦楽四重奏曲。

その地方の民族音楽の要素を、沢山取り入れて作られ、民族色に溢れた音楽になっている。

いきなり、不協和音の音楽で始まるが、徐々に民族音楽的な内容になっていく。

冒頭の不協和音も、そうした音楽の影響を受けていることが、聴いていくうちに次第に明らかになってくる。

2012年、フランスのナントで行われたフォルジュルネでの、パヴェル・ハース四重奏団の演奏。

2014年5月11日日曜日

オルフ:カルミナ・ブラーナ

カール・オルフが、1935年から1936年にかけて作曲した、管弦楽と合唱のための曲。

19世紀の初めに、バイエルンにあるベネディクトボイエルン修道院で、13世紀に書かれた100枚以上の羊皮紙が発見されて、そこには300篇以上の詩が含まれていた。

オルフは、それらの詩から、春の詩、酒場での詩、愛の詩などテーマで24篇の詩をを取り上げて、このカンタータを作曲した。

カルミナ・ブナーラとは、ボイエルンの歌という意味。

運命の女神を讃える、ダイナミックな最初と最後の音楽が、とりわけ有名。

詩の内容は、決して高尚なものではなく、民衆の生活や、自然な感情を歌っている。

2014年1月のNHK交響楽団の定期演奏会での演奏。指揮は、ファビオ・ルイージ。合唱は、東京混声合唱団、他。

オルフ:カトゥリ・カルミナ

カール・オルフが、1930年に作曲、1943年に改編した、合唱用の曲。オルフは、これを、劇的演技、と呼んでいた。

古代ローマの詩人、ガイウス・ヴァレリウス・カトゥルスの詩が元になっている。

その内容は、”その乳房を触りたい”などといった、古代のおおらかな時代の愛の詩。

オルフは、そうした古代の雰囲気を表現するため、この曲を、合唱と4台のピアノと打楽器だけの構成にしている。

2014年1月のNHK交響楽団の定期演奏から。指揮は、ファビオ・ルイージ。合唱は、東京混声合唱団。

2014年5月10日土曜日

ブルックナー:交響曲第9番

ブルックナーは、1887年、第8番を完成させた後に、この交響曲に取りかかり、第1楽章から第3楽章までは完成させていたが、死ぬまでに完成させることができなかった。

ブルックナーは、昔から、あまり好きな作曲家ではなかった。これまで、少し毛嫌いしていたが、最近は、ようやく聴いてもいいかな、と思えるようになってきた。

第1楽章、荘重に、神秘的に。

ブルックナーらしい、ダイナミックな音楽と、田園的なのびやかな音楽という、対照的な主題が展開される。

第2楽章、スケルツォ。軽く、快活に - トリオ、急速に。

スケルツォにしては、かなりダークな激しい音楽が奏でられる。

第3楽章、アダージョ。遅く、荘重に。

ワーグナーを思わせる音楽のオンパレード。

この日の演奏は、ノヴァーク版だったので、第4楽章はなし。

2014年1月、NHK交響楽団の定期演奏、指揮はファビオ・ルイージ。

デュティユー:チェロ協奏曲「遥かなる遠い世界」

フランスの作曲家、アンリ・デュティユーが、ロストロポーヴィッチの委嘱により、1970年に作曲したチェロのための協奏曲。

デュティユーは、1918年に生まれ、2013年に亡くなった現代の作曲家だが、前衛的な音楽とは距離を置いて、伝統の中に、新しさを求め続けた。

この曲は、ボードレールの『悪の華』にある、髪、という詩にインスピレーションを得て作曲された。

謎、まなざし、うねり、鏡、賛歌、と題された5つの楽章から構成されている。

現代の音楽らしく、全体の基調は、不安を感じさせる音楽。最後の賛歌は、ダイナミックなフィナーレを迎えるが、この当たりは、伝統的なものを感じる。

2013年12月のNHK交響楽団の定期演奏会での演奏。チェロは、ゴーティエ・カプソン。指揮は、シャルル・デゥトワ。

ラヴェル:クープランの墓(管弦楽版)

ラヴェルが、1917年に完成させたピアノ用の同名の曲を、自ら1919年に管弦楽版に編曲したもの。

ピアノ版では、6つのパートから成り立っているが、この管弦楽版では、フーガとトッカータを除いている。

”墓”という部分は訳の間違いで、”〜のために”というのが正しいようだ。

ラヴェルは、晩年、18世紀のフランスの古典音楽に傾倒しており、その時代の作曲家、クープランへのオマージュとして、この曲を構想した。

しかし、その間に、第1次世界大戦への従軍や、母親の死亡などが重なり、曲の内容は、レクイエムのようなものになっていった。

若い頃の、印象派主義的な華麗な音楽ではなく、そうした面影は少し残しつつ、古典の香りがする、独特な音楽になっている。

プレリュード、フォルラーヌ、メヌエット、リゴドン、という4つの曲から構成されている。

特に、メヌエットの音楽は美しい。

フォルラーヌは、北イタリアの古典的舞踏曲、リゴドンは、フランドル地方の古典的舞踏曲と、ローカル色に溢れた内容。

2013年12月の、NHK交響楽団の定期演奏会での演奏。指揮は、シャルル・デゥトワ。

2014年5月7日水曜日

モーツァルト:ピアノ協奏曲第20番

モーツァルトが、1784年に作曲した、20番目のピアノ協奏曲。モーツァルトは、この年、だけで、6曲も作曲している。

第1楽章 アレグロ・ヴィヴァーチェ。モーツァルトらしい、伸びやかな音楽だが、第2主題は、少し暗い感じで、ハッとさせられる。

第2楽章 アレグレット。哀愁を帯びた美しい音楽。フルートが、ところどころで、実効果的に使われている。

第3楽章 アレグロ・アッサイ。これまで控えていたピアノテクニックを一気に披露する、といった感じの内容。

ピアノとオーケストラが、会話をしながら、メロディを作り上げていく、両者が一体となったピアノ協奏曲。

1976年4月、ピアノ、マウリツィオ・ポリーニ。カール・ベーム指揮、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏。

2014年5月6日火曜日

ショスタコービッチ:交響曲第8番

ショスタコービッチが、第2次世界大戦中の1943年に作曲した、8番目の交響曲。スターリングラード包囲戦による戦死者への追悼が、そのきっかけになっている。

前の交響曲第7番が、ヒトラーの侵攻に対して、国民を鼓舞するような勇ましい内容だったのに比べ、こちらは追悼ということもあり非常に暗い内容になっている。

第1楽章は、Adagio - Allegro non troppo - Allegro - Adagioという複雑な構成。30分ほどあり、この曲全体の半分ほどを占めている。

アダージョということもあり、冒頭から暗い陰鬱な、しかし印象的な主題で始まる。どことなく、マーラーの交響曲を連想させる。

第2楽章は、Allegretto 。スケルツォとなっており、ショスタコービッチ独特のダークなコミカルなタッチで展開される。

第3楽章は、Allegro non troppo。ヴァイオリンの規則的な小刻みな演奏の合間に、いろいろな楽器が、ファンファーレのような、間の抜けた音楽を奏でる、ということを繰り返すだけの楽章。

でも、その不思議な音楽は、一度聴いたら、二度と忘れることは出来ないだろう。

ショスタコービッチの音楽を最も象徴するような内容。

第4楽章は、Largo パッサカリア。静かな、陰鬱な音楽で、第1楽章のよう。

第5楽章は、Allegretto - Adagio - Allegretto。ファゴット、クラリネットなどが効果的に使われ、静かながら、明るい曲調で始まる。

やがて、音楽は、不安な要素を含みながら、ダイナミックな大音響に到達した後、静かで複雑な音楽に変わり、そのまま消え入るように終わる。

2011年9月、スイスのルツェルンで行われた、アンドリス・ネルソンス指揮、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の演奏。

シチェドリン:オペラ『死せる魂』

ロシアの作曲家、ロディオン・シチェドリンが1976年に作曲したオペラ。原作は、ゴーゴリの同名の小説。

死せる魂とは、死んだ農夫のこと。帝政ロシアでは、地主は死んだ農夫の人頭税も払う必要があった、ということをヒントに、ゴーゴリが、当時のロシアの状況を、批判的に織り込みながら書いた小説。

ゴーゴリは、ダンテの神曲をモデルにこの本を書いたという。

主人公のチチコフは、その死んだ農夫の名義を買い取ることで、一儲けをしようとロシア中を放浪する。

その際に出会った様々な人や場面が、シチェドリンの多彩な音楽で表現されていく。

チチコフの使用人であるセリファンが、所々で歌う、中央アジア風の悲しい歌が、とても印象的。

2011年12月のロシア、サンクトペテルブルクのマリインスキー劇場の公演。指揮は、ヴァレリー・ゲルギエフ。

アンコールで、作曲家のシチェドリンも登場し、会場から大きな喝采を浴びていた。

2014年5月5日月曜日

チャイコフスキー:序曲『1812年』

チャイコフスキーが、1880年に作曲した、演奏会用の序曲。

チャイコフスキーは、あまりこの曲の作成には乗り気でなかったという。

内容は、ナポレオンに対するロシアの勝利を祝った内容で、フランスの国歌、ラ・マルセイエーズが登場したり、演奏によっては、実際の大砲を使ったりと、親しみやすい曲。

皮肉にも、今では、チャイコフスキーを代表する曲の一つになっている。

1993年6月に行われた、ベルリンのヴァルトビューネの野外コンサートの演奏。指揮は小澤征爾、演奏はベルリンフィル。

リムスキー=コルサコフ:序曲『ロシアの復活祭』

ニコライ・リムスキー=コルサコフが、1888年に作曲した、演奏会用の序曲。5人組と呼ばれた同士、ムソルグスキー、ボロディンに捧げた曲になっている。

リムスキー=コルサコフが、子供の頃に経験した、ロシアの復活祭の様子が、陽気な音楽で綴られている。

有名な、シェヘラザードと同じ年に作られた曲で、同じような雰囲気を感じさせる。

15分ほどの短い曲で、フェスティバルなどの冒頭に相応しい曲。

1993年6月に行われた、ベルリンのヴァルトビューネの野外コンサートの演奏。指揮は小澤征爾、演奏はベルリンフィル。

2014年5月4日日曜日

LFJ2014 ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番

ラ・フォルジュルネ・オ・ジャポン2014。私の最後のプログラムは、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番。

ピアニストは、ボリス・ベレゾフスキー。どうも、このベレゾフスキーとは、妙に縁がある。

ここ7年くらい、フォルジュルネに通っているが、毎年という訳ではないが、また、ベレゾフスキーのプログラムを選んでいるというわけでもないのだが、よく彼の演奏を聴いてきた。

今年は、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番。

2014年、ロシア、ソチの冬のオリンピックがあり、浅田真央というフィギュアスケーターが、多くの人の記憶に残るような素晴らしい競技をし、その時に使った曲が、このラフマニノフの協奏曲第2番の第1楽章だった。

そのせいもあってか、5,000人を収容するホールは、ほぼ満席の盛況だった。

最初の曲は、同じラフマニノフのヴォカリーズ。ドミトリー・リスの指揮、ウラル・フィルハーモニー管弦楽団の演奏。こちらも、このフォルジュルネでは、すでにお馴染みの顔だ。

ラフマニノフが1912年に作曲したピアノ曲を、後に自ら管弦楽用に編曲したもの。ラフマニノフらしい、哀愁に満ちたメロディ。

続いて、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番。

ラフマニノフを代表するこの曲は、第1楽章、まるでロシアの大地から地響きのように聞こえてくる、そんなことを感じさせる音楽で始まる。

第2楽章は、哀愁に満ちた美しい主題で、かつて、ポピュラーソングにも使われたことがある。

第3楽章にも、中央アジアの音楽のような、印象的な主題が登場するが、この楽章は、ややまとまりに欠ける印象がある。

3つの楽章とも、美しい主題、ダイナミックなオーケストレーション、そして高度なピアノテクニックを有しており、文字通り、完璧なピアノ協奏曲だ。

ボリス・ベレゾフスキーの演奏は、会場内に映された大きな映像で、その細かい指さばきまで観察することが出来た。

完全に自分のレパートリーにしているベレゾフスキーは、ダイナミックな演奏を披露したが、所々、指揮者やオーケストラの方を振り向いては、音楽の進行を確認している。

リハーサルが十分に行えなかったのだろうか?ベレゾフスキーの、その外観から受ける雰囲気とは違った、繊細な一面を、垣間みたような気がした。

演奏が終わった後の大歓声の中、アンコールには、リストの愛の夢。これも、浅田真央のプログラムに使われた曲。明らかに、それを意識した選曲だった。

通常、ピアニストがアンコール曲に選ぶのは、譜面を必要としない、自分が得意とする曲だが、何と、ベレゾフスキーは、譜面を持って登場した。

譜面を見ながら、まるで学校の試験を受けるように、慎重に演奏する姿が、実に印象的だった。

LFJ2014 ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第11番、第7番

ラ・フォルジュルネ・オ・ジャポン2014。次のプログラムは、ベートーベンの中期の2つの弦楽四重奏曲。

最初の第11番は、ベートーヴェンが1810年に作曲し、ベートーヴェン自らが、この曲に、Quartetto serioso、と名付けている。

第3楽章に、Allegro assai vivace ma serioso、という指定がある。しかし、第3楽章だけではなく、全楽章が重々しい感じがする。

次に演奏されたのは、1806年に完成された、第7番。いわゆる、3つのラズモフスキー協奏曲の最初の曲。こちらは、第11番と違い、明るい雰囲気に満ちている。

ベートーヴェンは、生涯にわたり、弦楽四重奏曲を作り続けた。

最初の6つの作品を、1801年に発表した後、久しぶりに作曲したのが、この3つのラズモフスキー協奏曲だった。

この2つの弦楽四重奏曲は、いわゆる中期に分類され、ベートーヴェンの”創作の森”といわれる時期に当たり、交響曲でいえば、第3番の英雄から、第6番の田園などが作られた。

いずれの作品も、チェロが重要な役割を演じている。単に、ヴァイオリンによる主題を下から支えるのではなく、自ら主題を奏で、第1ヴァイオリンに引き継ぐ楽章が多い。

従来の弦楽四重奏曲のルールにとらわれず、新しい形式を模索するベートーヴェンの姿勢が強く感じられる。

演奏は、プラジャーク弦楽四重奏団。1972年にチェコのプラハで結成され、ベテランの4人で構成される。

その丹念な演奏は、まるで交響曲のような、堅牢な2つの弦楽四重奏曲を、ほぼ満席に近い、観客の心の中に、しっかりと届けていた。

LFJ2014 リスト:十字架への道

今年で10年目を迎える、ラ・フォルジュルネ・オ・ジャポン。

はっきりと記憶してはいないが、初めて訪れたのは、3年目くらいだろうか?

このところは、毎年、春のゴールデンウィークに欠かせない楽しみの場となっている。

最初のプログラムは、リストの、十字架への道。リストが、1878年から1879年にかけて作曲した宗教曲。

オルガンと独唱、合唱のための曲だが、今回は、オルガン部分をピアノに代えての演奏。

キリストが、死を宣告され、十字架に背負い、ゴルゴダの丘に登り、死刑にされ、墓に横たわるまでを、14の場面で描いている。

歌詞は、ドイツ語で歌われる。シンプルな歌詞なので、配られた歌詞カードと、日本語訳で、意味を確かめながら、落ち着いて聴くことが出来る。

Jesus cadit. イエスは倒れる。という言葉が何度も表れ、全体の基調を形作っている。

リストの、祈るような音楽が、心の奥にしみ込んでくる。

ピアノは、ジャン=クロード・ペヌティエ。ヤーン=エイク・トゥルヴェ指揮による、ヴォックス・クラマンティスの合唱。

ヴォックス・クラマンティスのメンバーは、皆、スコアを持っていた。興味深かったのは、そのうちの何人かが、紙のスコアではなく、iPadを持っていたことだった。

マーラー:交響曲第10番

マーラーが、1910年から作曲を始めたが、完成することなく、マーラーは翌年に死亡した。第1楽章のみ、ほぼ完成といえる状態だった。

残された譜面から、多くの作曲家が完成させた、数々のバージョンが存在する。

マーラーは、ある時期以降、この交響曲の作曲を完全に止めてしまった。完成させる意図は、なかったのかもしれない。

第1楽章、アダージョ。陰鬱な出だし、マーラーの他の交響曲で聴いたことがあるようなメロディが続く。

第2楽章、スケルツォ。いろいろな音楽が登場しては、消えていく。

第3楽章、プルガトリオ(煉獄)。マーラーは、煉獄もしくは地獄(インフェルノ)、と譜面に書き、後半部分を線で消している。

妻のアルマに対する批難の言葉が譜面に書かれていたというが、アルマが、マーラーの死後、その部分を削除してしまった。

アルマは、建築家のグロピウスと不倫状態にあり、マーラーは、煉獄にいる気分になっていたのかもしれない。

しかし、音楽は、決してそれほど悲惨なものではない。

第4楽章、スケルツォ。出だしは、大音響でマーラーらしい。第1楽章に使われてもおかしくない構成。

第5楽章のフィナーレは、ドラムとバスの低温で重々しく始まる。浄化されるような、美しい幻の旋律が続く。

2011年、オランダ、アムステルダムのコンセルトヘボウでの、インバル指揮、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の演奏。クックによる補筆完成版を使用。

ラヴェル:弦楽四重奏曲

ラヴェルが、1902年から1903年にかけて、わずか27歳の時に作曲した弦楽四重奏曲。師のガブリエル・フォーレに献呈された。

第1楽章は、ラヴェルらしい幻想的な、不協和音のような、宇宙から降り注いできたような、不思議な音楽。

第2楽章は、ピチカートが多用される。おそらく、ハープのような音感を出したかったのだろう。

いろいろなテンポのメロディが登場し、第1楽章の主題のような音楽も現れる。

第3楽章は、緩やかな音楽。中国の音楽のような、東洋的なメロディ。ヴィオラがリードする印象的なパートがある。

第4楽章は、それまでの雰囲気とはうって変わって、激しい始まり。第1楽章の主題と同様の音楽が登場し、フィナーレを迎える。

2000年、ザルツブルグのモーツァルテウムでのハーゲン四重奏団による演奏。

2014年5月2日金曜日

ファリャ:バレエ音楽『恋は魔術師』

ファリャが、1914年から1915年にかけて作曲したバレエ用の音楽。その後、何回か改訂している。

1915年版は、ヒネタリア(ヒターノ気質)と名付けられている。

第1場と第2場に分かれており、死んだ男の亡霊に苦しむ女性が、ヒターノの女性による魔法で救われ、現在の恋人と幸せになる、という物語。

死んだ男の亡霊、ヒターノの女性、というミステリアスな雰囲気を、ファリャは多彩な音楽で表現している。

2013年、フランスのナントで行われたフォルジュルネから。ジャン=フランソワ・ハイザー指揮、ポワトゥ・シャラント管弦楽団による演奏。独唱はアントニア・コントレラス。

アントニア・コントレラスによる、朗読と歌唱によって構成されていた。

ファリャ:ベティカ幻想曲

ファリャが、1919年に完成させた、ピアノ用の曲。

ベティカとは、ラテン語で、古代ローマ時代にアンダルシア地方を表す地名だった。

文字通り、幻想的な雰囲気に包まれた曲。

スペインの民謡や、フラメンコの音楽を連想させ、短いながら、一度聴いたら忘れられない深い印象を残す。

2013年のフランス、ナントのフォルジュルネの演奏。ピアノは、ジャン=フランソワ・ハイザー。

ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第13番

ベートーヴェンは、1825年に弦楽四重奏曲第13番を作曲したが、最後の第6楽章のフーガがあまりにも難解すぎて、満足に演奏できる演奏者もなく、理解できる人も少なかったので、1826年の11月に、その部分だけを、より穏やかな内容の第6楽章を作曲した。

現在では、その構成を、弦楽四重奏曲第13番と読んでいる。

この第6楽章は、完成品としてではないが、ベートーヴェンが作曲した最後の音楽になっている。ベートーヴェンは、この後、ベットから起き上がれなくなってしまい、翌年に亡くなっている。

その置き換えられた第6楽章は、Allegro。前のフーガとは違った、軽やかな明るいメロディ。

ベートーヴェンの作った最後の音楽としては、あまりに普通、という印象もあるし、逆に、最後の境地は、このような穏やかなものだったのかもしれない、とも思える。

2012年5月、ベルチャ四重奏団による、ウィーンのコンチェルトハウスでの演奏。

ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第16番

ベートーヴェンが、1826年に作曲した、16番目の弦楽四重奏曲。弦楽四重奏曲としてだけでなく、他の形式も含めて、最後の完成曲となっている。

いろいろな、楽章構成を模索してきたベートーヴェンだが、この最後の曲では、伝統的な4つの楽章になっている。

しかも、第3楽章以外は、すべてヘ長調。

第1楽章は、Allegretto。終始穏やかな音楽だが、最後の終わり方が唐突に感じられる。

第2楽章は、Vivace。生き生きとした、若々しい音楽。

第3楽章は、Lento assai, cantante e tranquillo。静かに、瞑想するような音楽。

第4楽章は、 Grave ma non troppo tratto — Allegro。

"Der schwer gefaßte Entschluss"という言葉が譜面に書かれている。直訳すれば、難しく広範囲に渡る決断、という意味で、どんな決断なのかが、いろいろと解釈されている。

冒頭は、重々しく始まり、激しい感情を爆発させたような感じになり、その後は、アレグロの軽快な音楽に変わる。

不協和音のような、耳に少々不快な音楽も表れる。

2012年5月、ベルチャ四重奏団による、ウィーンのコンチェルトハウスでの演奏。

2014年4月27日日曜日

ファリャ:交響的印象『スペインの庭の夜』

ファリャが、パリ滞在中の1909年から、スペインに帰国した1915年にかけて作曲した曲。

始めは、ピアノ用の曲を作ろうとしたが、献呈するつもりだったピアニストからのアドバイスを受けて、最終的にはピアノ協奏曲のような形式となった。

構成は、ヘネラリーフェにて、はるかな踊り、コルドバの山の上にて、という3つの部分から構成されている。

あきらかに、ドビュッシー、ラヴェルなどからの影響が感じられる。

それにしても、”交響的印象”とは良く言ったもので、何でもどこかのジャンルに分類したがる、音楽界の悪い傾向が、良く表れている。

2013年、ナントで行われたフォルジュルネの演奏から。ピアノは、ルイス・フェルナンド・ペレス。管弦楽は、ジャン=ジャック・カントロフの指揮、シンフォニア・ヴァルソヴィア。

ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第15番

ベートーヴェンが、1825年に完成させた、ヘ短調の弦楽四重奏曲。

ベートーヴェンは、1824年にはこの曲のスケッチを書き上げていたが、途中、死の危険を伴う病気をし、奇跡的に回復した。

当初は、古典的な4楽章の構成だったが、第3楽章に、その回復を神に感謝した音楽を加えて完成させた。

第1楽章は、Assai sostenuto - Allegro。冒頭に、静かな音楽が置かれ、続いて、アレグロの音楽となる。

第2楽章は、Allegro ma non tanto。耳に心地よい、軽快な明るい音楽。

第3楽章は、"Heiliger Dankgesang eines Genesenen an die Gottheit, in der lydischen Tonart" Molto Adagio - Andante。

リディア旋法による、病より癒えたる者の神への聖なる感謝の歌。と題された、特別な楽章。

自分の苦しい病を表したようなアダージョと、そこから回復した喜びを表すようなアダージョで構成され、それが繰り返される。

リディア旋法とは、教会旋法の一つで、この楽章全体が、教会音楽のように、敬虔な雰囲気をたたえた音楽になっている。

第3楽章は、Alla Marcia, assai vivace。第3楽章の敬虔さを振り払うかのような、明るく軽快な音楽。

第4楽章は、Allegro appasionata - Presto。哀愁を帯びたメロディで始まる。次第に、音楽は文字通り、激情的になっていく。

この曲は、第3楽章を除いて、イ短調、イ長調、イ長調、イ短調、というベートーヴェンにしては実にシンプルな構成になっており、全体としてのまとまりを感じる。

2012年5月、ベルチャ四重奏団による、ウィーンのコンチェルトハウスでの演奏。

ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第14番

ベートーヴェンが、1826年に完成させた、14番目の弦楽四重奏曲、嬰ハ短調。7つの楽章から成り立っている。


第1楽章は、Adagio ma non troppo e molto espressivo。13番につづいて、ここでも第1楽章がアダージョになっている。静かな始まり。
人生の哀愁を感じさせ、とても神妙な気持ちへと誘われる。日常の世界から、一気にこの弦楽四重奏曲の世界の中に、引きずり込まれてしまう。
第2楽章は、Allegro molto vivace。こちらの方が、よっぽど弦楽四重奏曲の始まりのよう。明るく、軽快な音楽で始まる。その後は、実にいろいろと変化していく。
第3楽章は、Allegro moderato - Adagio。
第4楽章は、Andante ma non troppo e molto cantabile - Più mosso - Andante moderato e lusinghiero - Adagio - Allegretto - Adagio, ma non troppo e semplice - Allegretto。
印象的な主題による、6つの変奏。ピチカートなども使われ、多彩な音楽。
第5楽章は、Presto。
第6楽章は、Adagio quasi un poco andante。静かで美しい音楽。
第7楽章 Allegro。いきなり、ベートーヴェンらしい、ショッキングなテーマが登場して、ビックリする。
最後の終わり方は、唐突な感じがする。いわゆる、これで終わり!、という感じの音楽ではない。
2012年5月、ベルチャ四重奏団による、ウィーンのコンチェルトハウスでの演奏。

ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第13番『大フーガ』

ベートーヴェンが、1925年に完成させた、13番目の弦楽四重奏曲、変ロ長調。

6つの楽章を持っているが、初演では、最後の楽章のフーガについて、演奏がうまくいかず、ベートーヴェンが後にこの部分を書き換えたため、2つのバージョンが存在する。

第1楽章は、Adagio, ma non troppo - Allegro。アダージョで始まる珍しい楽章。すぐに、印象の深いアレグロのメロディが現れる。その後は、この緩急が繰り返えされる。

第2楽章は、Presto。いろいろな、イメージ的な音楽が登場するが、あっという間に終わってしまう。息抜きのような楽章。

第3楽章は、Andante con moto, ma non troppo. Poco scherzoso。アンダンテでありながら、少しスケルツォ、とこれまたユニークな楽章。ベートーヴェンは、多くの試みを、この第13番で行おうとしたようだ。

第4楽章は、 Alla danza tedesca. Allegro assai。ドイツ舞曲風に。ウィーン舞曲とは、少し違った感じ、ということだろうか?これも、じつに短い。

第5楽章 Cavatina. Adagio molto espressivo。有名なカヴァティーナ。

第6楽章は、Overture. Allegro fuga。不協和音のような音も聞こえてきて、かなり革新的な音楽。

交響曲第9番の歓喜の歌と同じような音楽。晩年のベートーヴェンが追い求めた音楽の、一つのパターンだったのだろう。

続いて、バッハのフーガのような静かな厳かな雰囲気になり、その後は、再び複雑な音楽になる。

2012年5月、ベルチャ四重奏団による、ウィーンのコンチェルトハウスでの演奏。

2014年4月26日土曜日

ボーイト:オペラ『メフィストーフェレ』

アッリーゴ・ボーイトは、作曲家としてよりは、ヴェルディの『シモン・ボッカネグラ』、『オテロ』、『ファルスタッフ』などの台本作家として、知られている。

作詞家や作家としてキャリアをスタートさせたボーイトは、オペラ作曲家になることを目指しており、1868年にこの『メフィストーフェレ』を完成させたが、初演が大失敗してしまったことから、その後は、オペラの台本作家として活躍した。

しかし、この『メフィストーフェレ』をその後も改訂し続け、今日では、立派なオペラ作品として上映されている。

ボーイトは、ワーグナーの信奉者で、この作品もワーグナーの影響が強いと言われているが、正直言って、ワーグナーの音楽とは比べものにならない。

ストーリーは、ファウストそのもので、それを悪魔のメフィストーフェレの立場から描いている。

2008年、イタリア、シチリア島のパレルモのマッシモ劇場での公演。

冒頭と最後のセットが同じで、冒頭でのメフィストーフェレの神への挑戦と、最後の敗北との対比の演出が面白かった。

ロッシーニ:オペラ『チェネレントラ』

1817年に初演された、ロッシーニのオペラ・ブッファ。他の作品もそうだが、この作品もわずか3週間で仕上げてしまったという。

いわゆるシンデレラのストーリーを、いくつかの部分を変更しているが、前妻の子が、後妻のいじわるな兄弟と理解のない父親によって、不幸な生活を送っており、最後は、王子様によって救われる、という基本的な部分は、そのまま活かされている。

1981年に、映像化されたもので、映像でありながら、舞台的な要素も取り入れており、素晴らしい演出。指揮はクラウディオ・アバド、ミラノ・スカラ座のスタッフによる作品。

主役のメゾ・ソプラノ、アンジェリーナを、フレデリカ・フォン・シュターデが演じているいるが、ルックスが美しく、いかにも性格の良さそうなそのキャラクターが、見事にはまっている。

ロッシーニの美しい音楽と、素晴らしい映像の演出、最高の出演者が揃って、オペラということを忘れさせてしまうくらいの、見事なエンターテインメントになっている。

2014年4月19日土曜日

ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第12番

ベートーヴェンが、第11番を完成させたのち、14年ぶりに、1825年に完成させた、弦楽四重奏曲、変ホ長調。

第13番、第15番とともに、ロシアのガリツィン公爵という人物からの注文に応じて作られた弦楽四重奏曲。

実に多くの変調が行われ、古典的でありながら、実に多彩な内容になっている。

第1楽章は、Maestoso - Allegro。マエストーゾ、という実に重々しい始まりだが、やがて、アレグロの美しいメロディが現れる。

シンフォニーにありそうな、ダイナミックな音楽が登場し、この弦楽四重奏曲のただならなさが、感じられる。

第2楽章は、Adagio, ma non troppo e molto cantabile。最初に、静謐な主題のメロディが提示され、これが様々に変奏されていく。

最後の方は、あまりにも繊細で音が小さい。注意して聞かないとわからない。

第3楽章は、Scherzando vivace - Presto 。前半は、典型的なスケルツォだが、後半、突然イメージが変わって、おもしろい。

第4楽章は、Finale。ベートーヴェンのイメージを裏切らない、非常に激しい調子の音楽が所々に聞こえる。

2012年5月、ベルチャ四重奏団による、ウィーンのコンチェルトハウスでの演奏。

ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第11番『セリオーソ』

ベートーヴェンが、1810年に作曲した、11番目の弦楽四重奏曲、ヘ短調。

みずから、この曲に、セリオーソとなつけている。

ベートーヴェンは、この曲を完成させた後、14年もの間、弦楽四重奏曲は、1曲も作っていない。

第1楽章は、Allegro con brioこの曲の副題のように、シリアスな出だし。あっという間に終わってしまう。

第2楽章は、Allegretto ma non troppo第1楽章よりも長く、じっくりと聞かせる。

第3楽章は、Allegro assai vivace ma seriosoここに、セリオーソ、と付けられている。冒頭に、印象的なメロディが現れる。まるで運命のテーマのように展開される。

第4楽章は、Larghetto espressivo-Allegro agitatoここでも、シリアスに始められるが、次々といろいろなメロディが、現れては消えて行く。

最後には、急にテンポが変わり、明るくなり、まあ、悩んでも仕方ないさ!と終わる感じ。

2012年5月、ベルチャ四重奏団による、ウィーンのコンチェルトハウスでの演奏。

ファリャ:スペイン民謡組曲

ファリャは、この曲をピアノ用に作ったが、その後、いろいろな人が、他の構成用に編曲している。

いずれもスペインらしさを感じさせる、コミカルな、あるいは物悲しい7つの音楽で構成されている。

フィナーレは、とくにエモーショナルな雰囲気が濃厚で、実に印象的。

2013年2月にフランスのナントで行われた、ラ・フォルジュルネでの演奏。ヴァイオリンは、パトリツィア・コバチンスカヤ。

文字通り、体全体を使い、豊かな表情をともなったコバチンスカヤの情熱的な演奏は、ビジュアル時代に相応しい。

ラヴェル:左手のためのピアノ協奏曲

ラヴェルが、1929年から1930年にかけて作曲した協奏曲。第一次世界大戦で、右手を失ったピアニストのために作曲した。

印象派、と言われるラヴェルだが、この曲を作るに当たっては、過去の同様な曲を研究したという。

20分ほどの曲で、切れ目なく演奏される。

オーケストレーションは、何となく、ボレロに似ている。

2013年2月にフランスのナントで行われたラ・フォルジュルネでの演奏。ピアノは、ボリス・ベレゾフスキー。

2014年4月13日日曜日

ポール・デュカス:交響詩『魔法使いの弟子』

ポール・デュカスが1897年に作曲した、管弦楽曲。

ポール・デュカスは、完璧主義者で、多くの曲を作りながら、今日では、13作品しか完成作品として伝わっていない。

ゲーテが、古代ギリシャのルキアモスの詩をもとに作ったバラード、がテーマになっている。

まだ魔法が巧く使えない、魔法使いの弟子が、うる覚えの魔法を使い、収拾がつかなくなり、最後は、老師に助けられる、という話。

映画『ファンタジア』で利用されたこともあり、実に、親しみやすい音楽。

ナントのフォルジュルネ2013から、ジャン=ジャック・カントロフ指揮、シンフォニア・ヴァルソヴィアの演奏。

ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第10番

ベートーヴェンが、1809年に作曲した、変ホ長調の弦楽四重奏曲。

第1楽章で、ピチカートが多用されるところから、ハープ、という名前が付けられている。

第1楽章は、Poco Adagio-Allegro。始まりは、実に静かだが、次第に、いろいろな動機が表れて来て、実に自由な雰囲気の楽章。

第2楽章は、Adagio ma non troppo。優しい音楽が、聞く者の心を、包み込んでいくような、美しいメロディーで始まる。

第3楽章は、Presto-Piu presto quasi prestissimo。運命交響曲のような、緊張感に溢れたメロディが実に印象的。

第4楽章は、Allegro con Variazioni。1つの主題が、6つに変奏される、というベートーヴェンにしては珍しい楽章。

2012年5月、ベルチャ四重奏団による、ウィーンのコンチェルトハウスでの演奏。

ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第9番

ベートーヴェンが、1806年に作曲したハ長調の弦楽四重奏曲。いわゆるラズモフスキー四重奏曲の第3番になる。

第1楽章は、Introduzione, Andante con moto-Allegro vivace。重々しい出だしの後、軽快な第1主題が演奏される。その雰囲気は、交響曲の趣がある。

第2楽章は、Andante con moto quasi Allegro。静かで、悲しみを誘う、陰鬱な音楽。

第3楽章は、Menuetto, Grazioso。穏やかな曲調で始まるメヌエット。

第4楽章は、Allegro moltoだが、第3楽章から切れ目なく始められ、まるで、第3楽章が急にテンポアップしたように錯覚する。曲調は早くなり、軽快な音楽になっていく。

2012年5月、ベルチャ四重奏団による、ウィーンのコンチェルトハウスでの演奏。

2014年4月12日土曜日

マーラー:交響曲第6番『悲劇的』

マーラーが、1903年〜1904年にかけて作曲した、6番目の交響曲。

第2番から第5番までは、歌曲が組み込まれていたが、この第6番には含まれていない。

第1楽章は、アレグロ・エネルジコ・マ・ノン・トロッポ。その悲劇的という題名からくるイメージとは違って、勇壮な行進曲風の主題で始まる。

続いて、ロマンチックで情感に溢れた主題が登場し、この2つの主題が展開されて行く。

第2楽章はスケルツォ。重々しい感じで始まるが、やがてマーラーらしいコミカルな内容に。

第3楽章は、アンダンテ・モデラート。哀愁に満ちあふれた、濃密な旋律。次第にクライマックスに続いて行く、その展開が素晴らしい。

第5番のアダージョは有名だが、この第6番の第3楽章も、それに劣らず、実に美しい。

第4楽章は、アレグロ・モデラート。冒頭で、ダイナミックなファンファーレが鳴り響く。30分ほどの長大な内容で、この楽章が、一つの作品のようだ。

最後は、物悲しいファンファーレで終了する。このことから、悲劇的と呼ばれたのだろう。

2010年10月、オランダのアムステルダム、コンセルトヘボウでの、ロリン・マゼール指揮、ロイヤル・コンサルトヘボウ管弦楽団の演奏。

リヒャルト・シュトラウスの生涯 第V部 辞世のうたー去りゆく古き良きヨーロッパ

2014年の東京・春・音楽祭。リヒャルト・シュトラウスをテーマとしたマラソン・コンサートもいよいよ最後。第V部は、シュトラウスの晩年の曲を中心とした構成。

最初の曲は、メタモルフォーゼン。オリジナルでは、23の独奏弦楽器のための習作のための、ということになっているが、ここでは、レオポルト編曲による、弦楽七重奏版で演奏された。

この曲は、第2次世界単線の末期、1945年4月、ドイツの降伏の直前に完成された。

とにかく暗い音楽で、聴いているうちに、こちらの気分がだんだんと悪くなってくるくらいに、暗い。

およそ30分くらいの曲だが、余りの曲の暗さに、20分くらいすぎた頃から、会場内には、”まだ終わらないか?”という無言の雰囲気が漂ってくる。

演奏が終了した時の拍手には、”ようやく終わった。終わってくれて、ありがとう!”という気持ちがこもっているように感じられた。

シュトラウスは、ヒトラーのナチス政権下において、帝国音楽院の総裁を務めていた。そのため、戦後はナチスへ協力した罪を問われ、裁判にかけられ、結局は無罪となったが、高齢のこともあり、その後はあまり表立った活動は行わなくなった。

メタモルフォーゼンとは、変容、あるいは複数の変奏という意味だが、それは音楽的な意味よりは、シュトラウス自身の気分的な意味合いが強いのかもしれない。

ドイツは、連合国軍による度重なる空襲で荒廃しきっていた。ミュンヘン、ドレスデン、そしてウィーンといった名だたる歌劇場は、その空襲で破壊された。

当時すでに80歳を超えていたシュトラウスは、自分の死と、ドイツの死を目の前にし、瞑想と、そのいずれの復活をも、この曲を通して願ったの知れない。

メロディは、終止暗いが、時折、明るさを取り戻しそうになるが、それもつかの間、すぐに、悲しい世界に戻ってしまう。

演奏は、ウェールズ四重奏団、佐々木亮(ヴィオラ)、門脇大樹(チェロ)、池松宏(コントラバス)。

後で、CDでオリジナルのより大きな構成での演奏を聴く機会があったが、このコンサートで聴いたほど、暗さは感じなかった。この小編成だったからこそ、あの音楽が生み出されたのだろう。

続いて、その暗い不雰囲気を、少し中和するかのような、ソプラノの横山恵子による、あおい、という歌曲。これは、シュトラウスの最後の作品。

1948年11月に書かれ、シュトラウスは、その翌年の9月に85歳で亡くなっている。

続いては、その死より半世紀前の1894年に作られた、4つの歌から、メゾソプラノの加納悦子のよる、憩え、わが魂。シュトラウスが2番目のオペラが失敗したことで、落ち込んでいた時の曲で、やや暗い内容。

そして、有名な歌曲、4つの最後の歌。安井陽子と横山恵子がそれぞれ2曲づつを歌った。

シュトラウスは、この珠玉の作品を死の前年の1948年に作っている。人生の、ある地点に到達した心境が、そのまま音楽として溢れ出ているようだ。

最後は、再び、ばらの騎士から、オペラの終盤に歌われる、私が誓ったことは。

元帥夫人は、若い愛人のオクタヴィアンとの愛をあきらめて、オクタヴィアンとゾフィーとの愛を祝福する。オクタヴィアンは、元帥夫人への後ろめたさに躊躇しながらも、すでに気分はゾフィーとの愛に移っている。そして、ゾフィーは、そうした事情を全く知らず、ただただ、オクタヴィアンとの愛を純粋に喜び、歌う。

この3人の感情が、シュトラウスの悲しくも美しい音楽で表現され、例えようもない、素晴らしい音楽世界を生み出す。

このオペラを初めて目にし、耳にした時の感動が、再びよみがえる。

音楽と、物語が、これほど融合した作品は、他にそう簡単に見つけられるものではない。オペラという芸術作品の、ひとつの頂点がそこにある。

偉大な作曲家でありながらも、実に複雑な人生を歩んだ、リヒャルト・シュトラウスという人物をテーマにした、このコンサート・シリーズの最後に相応しい曲だった。

リヒャルト・シュトラウスの生涯 第IV部 オペラ作曲家として

2014年、東京・春・音楽祭の、リヒャルト・シュトラウスをテーマにしたマラソン・コンサート。第IV部は、いわばハイライトとも言える、オペラ作品を中心としたプログラム。

リヒャルト・シュトラウスというと、やはりオペラの作曲家というイメージが強い。

シュトラウスのオペラの中でも、飛び抜けた人気を誇る、ばらの騎士から「ワルツ」。ヴァルターズが、ヴァイロリンとピアノ用に編曲したバージョン。ヴァイオリンは、成田達輝。ピアノは津田裕也。

いわゆるウィーンワルツ。生粋のウィーンっ子にしか出せないと言われる、独特のワルツのリズム。成田は、かなりがんばっているように思えたが、やはり、どこか違う、と感じてしまう。

1905年に初演され、大ヒットしたサロメからは、オペラのハイライトで演奏される、7つのヴェールの踊り。ジンガーがピアノ用に編曲したもの。

当時の前衛的な音楽と、古典的な音楽を組み合わせた難曲を、津田裕也は見事に弾き熟した。

(参考)リヒャルト・シュトラウス:オペラ『サロメ』

1841年に初演されたカプリッチョからは、弦楽六重奏曲版による序曲。ウェールズ四重奏団と佐々木 亮(ヴァイオリン)、門脇大樹(チェロ)による演奏。

同じく、カプリッチョから、クラウスの編曲による舞曲。成田達輝(ヴァイオリン)、奥泉貴圭(チェロ)、津田裕也(ピアノ)による演奏。

そして再び、ばらの騎士からの歌曲、だれも知らない。メゾソプラノは加納悦子。

元帥夫人が、若い愛人のオクタヴィアンと甘い夜を過ごした後で歌われる歌。よくよく考えてみれば、かなりきわどい内容の歌だ。

当時のウィーンの有閑マダムたちは、それと同じような経験をしている人もいたろうし、それを憧れる人もいたであろう。それぞれの思いを、この歌から感じたに違いない。

そしてこの曲は、実は、最後の第V部にもつながっている意味を持っている。

1927年に初演され、不評だったエジプトのヘレナからは、第二の新婚初夜!魅惑的な夜、をソプラノの横山恵子で。

最後は、1916年に初演された、ナクソス島のアリアドネから、ソプラノの安井陽子による、偉大なる王女様。

このオペラでは、悲劇と喜劇を同時に演じる、というユニークな演出が採られている。

(参考)リヒャルト・シュトラウス:オペラ『ナクソス島のアリアドネ』

この第IV部は、シュトラウスのオペラから、前半は踊りにまつわる曲、後半は、愛の情事にまつわる曲を集めて構成する、という凝った内容だった。

リヒャルト・シュトラウスの生涯 第III部 時代の寵児となった、若き天才音楽家

東京春祭マラソン・コンサート、リヒャルト・シュトラウスの生涯の第III部は、時代の寵児となった、若き天才音楽家、と題して、1880、1890年代の作品を中心とした構成。

最初は、1882年、18歳の時に作曲した、13 管楽器のためのセレナードという曲のピアノ・ソロ版。シュトラウスは、生涯、セレナードはこの1曲しか作らなかった。ピアノは、津田裕也。

続いて、同じ頃に書かれたチェロ・ソナタから第3楽章。チェロの演奏は、奥泉貴圭。

そして、次はこの第III部のハイライトとも言える、もうひとりのティル・オイレンシュピーゲル。

オーケストラ用に作曲された、交響詩『ティル・オイレンシュピーゲルの愉快な いたずら』を、ハーゼンエールが、ヴァイオリン、コントラバス、ク ラリネット、ファゴット、ホルンの小編成用に編曲したもの。

編成は小さいが、原曲の持つ、コミカルな魅力は健在、十分に楽しめる。

1895年に発表した、この『ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら』に代表される交響詩によって、シュトラウスは、一気に時代の寵児になった。

同時期のウィーンでは、マーラーがダイナミックな構成の交響曲を発表していた。

時代の変化の中で、音楽を楽しむ人々は、古典主義やロマン主義に変わる、新しい、時代の変化に応じた、大胆な音楽を求めるようになったのだろう。

そして、最後は、万霊節、ツェチーリエ、愛の神、ダリア、献呈、冬の夜、なんと不幸な男だろう、たそがれの夢、の8つの歌曲。

そのうち、ソプラノの安井陽子が最初の3曲を、メゾ・ソプラノの加納悦子が、後半の5曲を歌った。

ドイツの歌曲というと、もっと大人しく、静かなものかなあ、と想像していたが、意外にも、シュトラウスの歌曲は、情熱的なものが多かった。

2014年4月9日水曜日

ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第8番

ベートーヴェンが1806年に作曲した、いわゆるラズモフスキー協奏曲の第2番にあたる、第8番ホ短調。

第1楽章は、Allegro。冒頭のメロディが、実に印象的。短調らしい、悲しくも激しい音楽。

第2楽章は、Molto Adagio。静かで内省的な調べ。ベートベーンは、星のきらめきをイメージして、この楽章を作った、といわれているが、真冬で寒さの厳しい夜をイメージでもしたのだろうか?

第3楽章は、Allegretto。出だしのメロディは、これまた印象的。この楽章の一部は、ロシア風で、後に、リムスキー=コルサコフ、チャイコフスキー、ラフマニノフらが引用している。

第4楽章は、Presto。これまでの陰鬱な雰囲気を吹き飛ばすかのような、軽快な出だし。この主題を転換させ、コンパクトにフィナーレを迎える。

2012年5月、ベルチャ四重奏団による、ウィーンのコンチェルトハウスでの演奏。

2014年4月7日月曜日

ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第7番

ベートーヴェンが、1806年に完成させた7番目の弦楽四重奏曲。ヘ長調。

ロシアのウィーン公使だった、アンドレイ・ラズモフスキーに依頼され作曲した3つの弦楽四重奏曲の最初の曲。そのため、この3つの弦楽四重奏曲は、ラズモフスキー四重奏曲と呼ばれている。

すでに、ベートーヴェンは、交響曲第4番を発表しており、独自の音楽世界を確立していた。

第1楽章は、Allegro。複雑な始まり方で、初期の6つの弦楽四重奏曲とは、全く別物であることがよくわかる。

チェロが主題を奏でて、後から第1ヴァイオリンがそれを引き継ぐなど、第1ヴァイオリンがリードするというよりは、4つの楽器が一体となっている。

第2楽章は、Allegretto vivace e sempre scherzando。チェロが弦を弾いて始まるという、これまた変わった始まり方。

途中でも、弦を叩く程度で小さな音を出した後で、いきなり激しく弾いたりと、エキセントリックなベートーヴェンの特徴がよく表れている。

第3楽章は、Adagio molto e mesto - attacca。実に静かな楽章。途中、ピチカートなども使われ、いろいろなことを試みている。

第4楽章は、Theme Russe, Allegro。第3楽章の最後に、短い第1ヴァイオリンのカデンツァの後に間断なく始まる。ロシアの民謡風のメロディが表れる。

最後は、終わりそうでなかなか終わらない。ようやく最後になって、”これで終わるよ”という感じでフィナーレを迎える。

ベートーヴェンのしつこい性格が、表れているようにも思えた、

2012年5月、ベルチャ四重奏団による、ウィーンのコンチェルトハウスでの演奏。

2014年4月6日日曜日

モーツァルト:ピアノ協奏曲第20番

モーツァルトが、1785年に完成させた、20番目のピアノ協奏曲。ニ短調。単調の協奏曲は、この20番と24番のみ。

第1楽章はアレグロ。モーツァルトの華やかなイメージとは違った、重々しいダークなメロディで始まる。

第2楽章はロマンツェ。この音楽は、モーツァルトが作曲した数多の音楽の中でも、おそらく屈指の名曲だろう。まるで、天上の音楽のようだ。やや悲しげに変化していく、展開部も自然で、美しい。

第3楽章はロンド・アレグロ・アッサイ。天上の世界から、厳しい現実の世界に一気に引き戻されたような、そんな気分にさせられる出だし。

ニ短調からニ長調に変化し、陰鬱に始まったこの単調の協奏曲も、最後は、モーツァルトらしい、明るく壮麗なフィナーレを迎える。

ピアノは、ウィーンを代表するピアニスト、ルドルフ・ブフビンダー。ファビオ・ルイージ指揮、NHK交響楽団の2014年1月の演奏。

マーラー:歌曲集『子供の魔法の角笛』

マーラーが、1892年から1901年にかけて、作曲した歌曲集。

マーラーは、そのうちのいくつかの曲を、交響曲2番、3番、4番の一部として採用しているので、聴いていると、”あっ!これはどこかで聴いたことがあるぞ!”ということが何度かある。

詩の部分は、ルートヴィヒ・アヒム・フォン・アルニムとクレメンス・ブレンターノが収集したドイツの民衆歌謡の詩集から採られている。

歌詞の内容は、ドイツの民衆の生活感に溢れた内容。悲しい話した、残酷な話も含まれている。

マーラーは、そうした詩の内容を、自分の持つメランコリックな、あるいはダイナミックな音楽で、よりその性格が際立つように、作曲している。

2010年2月、アメリカ、オハイオ州、クリーブランドのセヴェランス・ホール。指揮はピエール・ブーレーズ、クリーヴランド管弦楽団の演奏。メゾ・ソプラノは、マグダレーナ・コジェナ、バリトンは、クリスティアン・ゲルハーヘル。

リヒャルト・シュトラウスの生涯 第II部 イノック・アーデン

東京春祭マラソン・コンサートの第II部。テーマは、イノック・アーデン。

シュトラウスは、ある舞台俳優の要請により、イギリスの詩人、テニスンの詩、イノック・アーデンをもとに、メロドラマ、という作品を、1897年に作り上げた。

ピアノのスケッチをBGMにして、詩を朗読するというもので、オペラとも、歌曲とも違っている。

詩の内容は、実に悲しい物語だ。

貧しい漁船で生まれ育った2人の少年と1人の少女。イノックは、立派な青年に成長し、幼なじみのアニーと結婚する。生まれた子供のために、一旗揚げようと、外洋航海の船員となるがその船が無人島に難破してしまう。

アンネは、イノックは死んだものとあきらめ、やさしく支えてくれるフィリップと再婚し、子供も生まれたが、奇跡的に救助されたイノックが村に戻ってくる。

全てを知ったイノックは、アニーと我が子を愛するがゆえに、自ら身を引き、一人で寂しく息を引き取る。

冒頭に、重苦しい、悲しげなメロディがピアノで奏でられる。この音が、物語全体の基調を表している。

詩の朗読は、元NHKアナウンサーの松平定知。ストーリーは悲しい内容だが、感情を最小限に抑えて、淡々と語る。それが、物語の悲しさを、より一層引き立てている。

ピアノ演奏は、清水和音。

ピアノの登場する場面は、思った以上に少なく、場面の切れ目に登場して、その場面の雰囲気を伝える程度に留まっている。

全体としては、朗読劇であり、シュトラウスは、その朗読がより効果的に伝わるように、BGMとしての音楽を作ったのだろう。

リヒャルト・シュトラウスの生涯 第I部 誕生ー激動の人生の幕開け

毎年、3月末から4月の上旬にかけて、上野を中心に開催される、東京・春・音楽祭。その音楽祭の中で、マラソンコンサートが行われる。

1つのテーマで、午前11時から、およそ1時間のプログラムが、5つ行われる。最後のプログラムは午後7時から行われ、午後8時頃に終了する。文字通り、マラソンだ。

今年のテーマは、リヒャルト・シュトラウス。2014年は、1864年生まれのシュトラウスの生誕150周年にあたる。

シュトラウスといえば、ばらの騎士に代表されるオペラ、映画、2001年宇宙の旅にも使用されたダイナミックな交響詩の作曲家というイメージがある一方で、ナチス政権に協力したことで裁判にもかけられたりと、一言では言い表すことの出来ない、複雑な人物。

生涯にわたる音楽を、多彩な演奏家の音楽で楽しみながら、その複雑な人物像を探る、興味深い体験だった。

その第I部は、誕生ー激動の人生の幕開けと題して、4つの曲が演奏された。

最初の曲は、仕立屋のポルカ(ピアノ・三輪郁)。何と、6歳の時の作品だという。

リヒャルト・シュトラウスの父、フランツ・シュトラウスは、ミュンヘンの宮廷楽団でホルンを演奏していた。モーツァルトやハイドンの音楽を愛し、リストやワーグナーの音楽には、否定的だったという。

そのフランツによる、ホルンのためのノクターン。そして、リヒャルトが、父フランツの60歳の誕生日を記念して作ったホルン協奏曲第1番。いずれも、日橋辰朗。

ホルンの演奏は、この日、予定していた演奏者が急病で、急遽代行した日橋辰朗。日橋は、もともと第III部のみ出演の予定だったが、この第I部でも、ホルンの演奏を務めることになった。

もともと、レパートリーのひとつではあったろうが、さすがに緊張していたのだろう。演奏が終わった後の、ホッとしたような表情が印象的だった。

ホルンというと、けたたましいファンファーレや、勇壮な音楽で使われることが多いが、ソロで聴くと、どこかユーモアがあって、伸びやかな音で、純粋に、その音質を楽しむことが出来た。

最後は、オーボエ協奏曲 ニ長調。演奏は、東京都交響楽団の首席オーボエ奏者の広田智之。

オーボエは、音質が高すぎず、低すぎず、バランスのとれた楽器で、多彩な音を表現できる楽器だということが、その演奏から感じられた。

ホルンとオーボエというと、シュトラウスの華やかなイメージとは、一見結びつかないので、いずれも新鮮だった。

2014年4月5日土曜日

ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第6番

ベートーヴェンの初期の6つの弦楽四重奏曲の1つ。1800年に作曲したロ長調の弦楽四重奏曲。

これまでの5つの曲とは、全く違った印象をもっており、ある意味で、この初期のセットの一つの到達点と言えるのかもしれない。

第1楽章は、Allegro con brio。出だしは、ヴァイオリンの軽快な音楽で始まる。これまでの5曲とは全く違った雰囲気。

第2楽章は、Adagio ma non troppo。文字通りのアダージョ。ゆったりとした音楽。第1楽章との対比も鮮やか。

第3楽章は、Scherzo, Allegro。これまた第2楽章とはうって変わって、激しく軽快な音楽。あっという間に終わってしまう。

第4楽章は、La Malinconia, Adagio - Allegretto quasi Allegro。メランコリック、という名の通り、憂鬱な音楽で始まる。”苦悩するベートーベン”というイメージにピッタリの曲。人生の不条理に苦しんでいるような出だしは、やがて軽快なアレグレットによって引き継がれる。

2012年5月、ベルチャ四重奏団による、ウィーンのコンチェルトハウスでの演奏。

ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第5番

ベートーヴェンの初期の弦楽四重奏曲のうちの1曲。1800年頃に作曲された。イ長調。

第1楽章は、Allegro。古典的な雰囲気が漂う。

第2楽章は、Menuetto。ベートーヴェンは、通常は第2楽章にスケルツォを置くが、ここでは、伝統にならってメヌエットを置いている。穏やかな音楽。

第3楽章は、Andante cantabile。静かな、落ち着いた気分にさせる、美しいメロディが、様々に展開されていく。チェロが全体をリードする部分があると、すぐその後で、ヴァイオリンが答えるように、楽器の構成が凝りに凝っている。最後には、行進曲のような華々しい音楽が登場し、この楽章自体が、独立した音楽のようだ。

第4楽章は、Allegro。同じアレグロだが、第1楽章とは全く違った印象で、面白い。

2012年5月、ベルチャ四重奏団による、ウィーンのコンチェルトハウスでの演奏。

ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第4番

ベートーヴェンが初期に作曲した6つの弦楽四重奏曲の1つ。この第4番は、1800年に作曲したと言われている。

ハ短調は、いわゆる運命交響曲と同じ調整で、ベートーヴェンにとっては、特別なものだった。

第1楽章は、Allegro ma non tanto。出だしのテーマは、実にドラマティックで、悲劇性を感じさせる。続く第2テーマは、穏やかで、冒頭の激しさを忘れさせるが、再び第1テーマが現れ、聞く者を混乱させる。

第2楽章は、Scherzo,Andante quasi Allegro。スケルツォとありながら、アンダンテ、少しアレグロ、という変わった楽章。

第3楽章は、Menuetto Allegretto。スケルツォの後にメヌエットを置くというのは、当時は斬新だったようだ。短い構成だが、めまぐるしく調が変化する。

第4楽章は、Allegro。冒頭のメロディは、キレがあって実に印象的。このメロディは、最後にも登場し、フィナーレを迎える。

2012年5月、ベルチャ四重奏団による、ウィーンのコンチェルトハウスでの演奏。

2014年4月2日水曜日

ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第3番

ベートーヴェンが、1798年に作曲した最初の、ニ長調の弦楽四重奏曲。他の5曲の弦楽四重奏曲とともに発表され、そこでは、第3番とされた。

第1楽章は、Allegro。穏やかなメロディと、軽快なメロディが織り交ぜられている。第1番、第2番と同じようなメロディも登場する。

第2楽章は、Andante con moto。冒頭の音楽は、一度聴いたら忘れられない、強烈な印象を残す。

第3楽章は、再びAllegro。どこか懐かしいような、さわやかなメロディ。これもまた、美しい。スケルツォというほどには、くだけていない感じ。

第4楽章は、Presto。リズム感のある、軽快な音楽。

2012年5月、ベルチャ四重奏団による、ウィーンのコンチェルトハウスでの演奏。

2014年4月1日火曜日

ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第2番

ベートーヴェンが、1798年から1800年にかけて作曲した、最初の6つの弦楽四重奏曲の一つ。ト長調。実際には、第3番、第1番に続いて3番目に作曲したと言われる。

第1楽章は、Allegro。冒頭のテーマが、繰り返し登場し、展開される。

第2楽章は、Adagio cantabile。カンタービレ、歌うように。その通りに、ヴァイオリンが静かなメロディを歌い、他の3つの楽器は、それをサポートする感じ。

第3楽章は、Scherzo. Allegro。いわゆるスケルツォだが、アレグロとついているせいか、少し趣があるスケルツォ。

第4楽章は、Allegro molto quasi presto。出だしのテーマは、音は違うが、テンポは第1楽章と同じ。ベートーヴェンの細かい計算が伺える。

2012年5月、若いメンバーが揃った、ベルチャ四重奏団による、ウィーンのコンチェルトハウスでの演奏。

2014年3月31日月曜日

ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第1番

後世に、多大な影響を与えた、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲。その第1番から6番までは、28歳だった1798年から1800年の2年間に集中的に作曲された。

この6曲は、必ずしも、この番号の順に作曲されたものではないようだ。

この1800年という年には、交響曲第1番も完成させており、ベートーヴェンにとっては、エポックメーキングな年だった。

当時、ベートーヴェンは、ウィーンでロプコヴィツ伯爵という人物の援助で音楽活動に励んでいた。この6つの弦楽四重奏曲は、この人物に捧げられている。

第1楽章は、Allegro con brio。冒頭のメロディが印象的で、全体的に明るい曲。

第2楽章は、Adagio affettuoso ed appassionato。第1楽章とはうってかわって、静謐な、静かで、厳かな音楽。終盤にかけて、文字通り、情熱的になっていく。完成度が高く、まるで、一篇の短編小説のようだ。

第3楽章は、Scherzo: Allegro molto。再び、雰囲気変わって、軽快なスケルツォ。

第4楽章は、Finale: Allegro。再び第1楽章のメロディが表れる。

2012年5月、若いメンバーが揃った、ベルチャ四重奏団による、ウィーンのコンチェルトハウスでの演奏。

2014年3月22日土曜日

ヴェルディ:オペラ『ファルスタッフ』

ヴェルディが、80歳を目前にした1893年に作曲した28作目のオペラで、これが最後のオペラになった。

ヴェルディは、喜劇のオペラでは、名作を残しておらず、それがずっと心残りだったのだろう。脚本家のボイートに、台本を進められ、ついに重い腰を上げた。

原作は、シェークスピアの『ウィンザーの陽気な女房たち』。ヘンリー4世の騎士として勇名を馳せたが、今はブクブクと太ってしまった騎士ファルスタッフを、ウィンザーの陽気な女房たちがやりこめる、という喜劇。

知恵のある女性達が、男性達をギャフンと言わせる、というストーリーで、その後の数多くのドラマ、映画などの原型になっている。

歌とストーリーが完全に一体化しており、歌のためにストーリーが中断する、というそれまでのオペラの常識を打ち破った、と言われている。

観客は、純粋に、ファルスタッフがだまされていく様子を、美しい音楽に乗せて、楽しむことが出来る。

最後に、出演者全員が舞台に登場して、”人生は、すべてが冗談”。”理性なんてあてにならない”。”誰もが、だますことを考えている”。と歌う部分が、何といっても圧巻。

それが、ヴェルディが80歳直前に作った、最後のオペラである、ということと合わせて、いろいろと感慨深く感じられ、喜劇でありながら、思わず、ジンときてしまう。

2011年10月、パルマのテアトロ・ファルネーゼでの、パルマ王立歌劇場管弦楽団及び同合唱団による演奏。指揮は、若いアンドレア・バッティストーニ。

2014年3月21日金曜日

マーラー:交響曲第2番『復活』

マーラーが、1888年から1894年にかけて作曲した2番目の交響曲。

1894年に亡くなった、指揮者としての師である、ハンス・フォン・ビューローへ捧げられた曲であるが、ビューローの死の以前から、葬礼、という題名が付けられていた。

第1楽章は、緊張感を感じさせる低い弦の音で始まる。続けて、葬礼のような音楽。

マーラーは、第2楽章を始めるまでに、5分ほどの時間を空けるように指示している。第2楽章では、第1楽章とはうって変わって、静かな落ち着いた内容。

第3楽章は、スケルツォ。木管楽器の、不思議で印象的な音楽で始まる。その後は、民族音楽風なものなど、いろいろなメロディが登場する。

第4楽章は、歌曲集『子供の不思議な角笛』からの月光という曲が使われている。

第5章は、マーラーお得意の大音響で始まる。途中から、ホルンによって導かれる主題が、実に美しい。この交響曲の核になっているメロディだ。

そして、”必ずよみがえるだろう”という言葉で始まる合唱。クロプシュトックの賛歌『復活』とオーケストラが見事に調和し、クライマックスへ向かっていく。

20代で初めて耳にして、最も好きなクラシックの曲になった。その後、一体、何回この曲を聴いてきたのだろう。その度に、新たなことを思い、発見する。

”お前をかつて打ち砕いたものが、お前を神のもとに連れて行くだろう”

Was du geschlagen, zu Gott wird es dich tragen!

この最後の部分を、冷静な気持ちで聴くことは、私には、決して出来ないだろう。

これからも、折に触れて、耳にしていきたい曲だ。

マリス・ヤンソンス指揮、バイエルン放送交響楽団及び同合唱団による、2011年5月の演奏。ソプラノのアニヤ・ハルテロスが、素晴らしかった。

2014年3月16日日曜日

メンデルスゾーン:交響曲第4番『イタリア』

メンデルスゾーンが、1831年から1833年にかけて作曲した交響曲。

名前の通り、1830年から1831年にイタリアを旅行し、ローマで謝肉祭や、法王の就任式などを見た印象をもとに作曲された。

第1楽章は、出だしから、軽やかな弦の旋律が美しい。最もメンデルスゾーンらしいメロディといっていいだろう。

第2楽章では、一転して、哀愁のこもった音楽で始まる。

第4楽章には、ローマ地方のサルタレロという舞曲が引用されている。

メンデルスゾーンは、自分が経験した経験から、常に音楽のヒントを得て、それをもとに多くの曲を作曲している。いわゆる天才型の音楽家で、文字通りの音楽能を持っていたのだろう。

2014年1月、水戸での水戸室内管弦楽団の演奏。指揮は、ナタリー・シュトゥッツマン。

メンデルスゾーン:序曲『フィンガルの洞窟』

メンデルスゾーンが、1830年に作曲した、およそ10分程度のオーケストラ向けの小品。

メンデルスゾーンが、スコットランドを旅行した際に、ヘブリディース諸島のスタファ島のフィンガルの洞窟を訪れ、その時のインスピレーションをもとに作った曲。

メンデルスゾーンの音楽的なセンスをよく表すエピソードだ。

音楽は、印象的な主題が、次々と展開されていく。

2014年1月、水戸での水戸室内管弦楽団の演奏。指揮は、ナタリー・シュトゥッツマン。

ベルリオーズ:テ・デウム

ベルリオーズが、1848年から1849年にかけて作曲した、宗教音楽。レクイエムと並んで、ベルリオーズの代表的な宗教音楽。

ベルリオーズは、当初、ナポレオンを讃えるために、この曲を構想したという。第7曲の行進曲は、その名残が残っているのかもしれない。

それ以外の6つの曲は、壮麗な賛美歌と、敬虔な雰囲気の静かな祈りの2つの形式で構成されている。

音楽は、いかにも宗教音楽といった感じ。レクイエムよりは、オーソドックスなイメージがした。

2013年12月、NHKホールでのN饗の演奏。指揮は、シャルル・デゥトワ。

プーランク:グローリア

プーランクが、亡くなる4年前、1959年に作曲した合唱形式の宗教音楽。ミサ曲の中のグロリアだけを取り出している。

サティとともに語られることが多いプークランだが、パリに暮らす、敬虔なカトリックの両親の元で生まれたせいで、数多くの宗教音楽を残している。

音楽は、敬虔な雰囲気を漂わせる部分もあるが、プーランクらしい、現代的な側面も多く、教会関係者からは、あまり評判が良くなかったという。

特に、最後の第六曲は、プーランクらしい、何と言うか、宇宙的な不思議な音楽。プーランクにとっては、それが、宗教的な音楽を意味したのかもしれない。

2013年12月、NHKホールでのN饗の演奏。指揮はシャルル・デゥトワ。

ブラームス:ヴァイオリンとチェロのための協奏曲

ブラームスが、1887年に作曲した、ヴァイオリンとチェロのための協奏曲。

当初は、交響曲第5番として構想していたが、諸般の事情から、珍しい、ヴァイオリンとチェロのための協奏曲という形式に落ち着いた。

第1楽章の冒頭の第1主題が、実に印象的。この曲が、交響曲として意図されていたことがよくわかる。

途中、ヴァイオリンが奏でる、デモーニッシュなメロディも、実にいい。

第2楽章はアンダンテ。緑が広がる、のどかな農村の風景を思い浮かべたくなる、穏やかな音楽で始まる。

第3楽章は、ヴィヴァーチェ・ノン・トロッポで、まさしく、ヴィヴァーチェという感じ。軽やかにリズミカルに、チェロとヴァイオリンの音が奏でられていく。

1982年9月、ウィーン楽友協会での演奏。指揮はバーンスタイン、ヴァイオリンはクレーメル、チェロはマインスキー、という夢の共演。オケは、勿論、ウィーン・フィル。

2014年3月9日日曜日

ハイドン:チェロ協奏曲第2番

ハイドンが、1761年から1790年まで、エステルハージ家に使えていた時代に書かれた、いくつかのチェロ協奏曲の一つ。

典型的な、古典派の音楽。あるいは、貴族のために書かれた、憩いのための音楽。

第1楽章は、アレグロ・モデラート。明るく爽やかで、初夏の晴れた日の朝のような雰囲気。

第2楽章は、アダージョ。テンポはゆっくりになるが、爽やかさは変わらない。

第3楽章は、アレグロ。朝の爽やかさに誘われて、お庭の散歩に出た、とでもいった感じの曲。

何も考えずに、単純に、美しい音楽を楽しめる。

1975年11月、ロンドンのヘンリー・ウッド・ホールでの、ロストロポーヴィチとアカデミー室内管弦楽団による演奏。

プッチーニ:オペラ『ジャンニ・スキッキ』

プッチーニが、1918年に作曲した、3部作の最後にして、3つの中で最も有名なオペラ。

というより、『私のお父さん』で有名なオペラ、といった方がいいかもしれない。

ダンテの神曲に登場する、ジャンニ・スキッキという人物についての話を、想像を豊かに膨らませたストーリー。

娘の恋人の父親の遺産を巡り、知恵物のスキッキが、娘のためにひど肌脱ぐが、最後は、ちゃっかりと、自分がその遺産のほとんどを手に入れてしまうという、痛快コメディ。

『私のお父さん』は、スキッキの娘が、恋人の苦境を救うために、父親に助けてほしいと訴える場面で歌われる。

”助けてくれないと、アルノ川に飛びこんじゃうから!”

その歌のあまりの素晴らしさに、スキッキも、重い腰を上げるという部分がミソ。プッチーニは、自分の歌に、絶対の自信を持っていたのだろう。

2008年3月、ミラノのスカラ座の公演。指揮は、リッカルド・シャイー。

スキッキ役はレオ・ヌッチ。ベルディのオペラには欠かせないバリトンだが、その高い演技力は、このスキッキ役にもピッタリ。

プッチーニは、3部作で、最初の『外套』では悲劇を、真ん中の『修道女アンジェリカ』では宗教劇を、そして最後の『ジャンニ・スキッキ』では喜劇を配している。

通常は、一本のオペラを見るのと同じ時間で、3つの趣向の違ったオペラを楽しませる、というプッチーニの発想は、実に面白い。

マンネリ化したオペラの世界に、少し変化をもたらしたかったのかもしれない。

プッチーニ:オペラ『修道女アンジェリカ』

プッチーニが、1917年に作曲した、いわゆる3部作の2番目にあたるオペラ。

プッチーニは、3部作の中でも、とりわけこの作品に愛着を感じていたようだが、その意図に反して、3つの作品の中では、最も評判が悪かった。

道ならぬ恋に落ち、子供を授かりながら、結婚できず、修道院に入った女性、アンジェリカが、我が子が幼くして病に倒れたことを知り、絶望して自殺するが、最後は、聖母マリアによって救われる、というストーリー。

登場人物が全て女性という、珍しいオペラ。

2008年3月、ミラノのスカラ座の公演。指揮は、リッカルド・シャイー。

アンジェリカ役のソプラノ、バルバラ・フリットリは、上品な雰囲気で、修道女がピッタリと合っていた。

プッチーニ:オペラ『外套』

プッチーニのオペラ、三部作の最初に上演されるオペラ。

1913年に、プッチーニがパリでロングランで上演されていた、ディディエ・ゴルドの舞台劇を見て感銘を受けて、オペラ化したもの。

ストーリーは、パリのセーヌ川で運送業を営む、船主のミケーレ(バリトン)、その妻のジョルジェッタ(ソプラノ)、船で働く若い男のルイージ(テノール)の三角関係が軸になっている。

毎日の厳しい生活に疲れたジョルジェッタは、自分と同郷のルーイジに惹かれていく。パリのどん底の環境の中で、二人が故郷を思い出して歌う部分は、切なさが漂う。

観客は、この二人の関係に同情してしまう。

一方で、ミケーレは、今では日々の仕事に追われているが、かつてのジョルジュエッタとの、美し愛の日々を思い出して、バリトンで、悲しく歌う。

しかし、最後は、二人の密会の現場を待ち伏せしたミケーレが、ルイージを絞め殺す、というショッキングな展開を迎える。バリトンとテノールの対決は、聞き応えがある。

プッチーニは、パリの貧しい労働者の暮らしを背景に、3人の思いを、ソプラノ、バリトン、テノールの美しい歌声に歌わせる。

2008年3月、ミラノのスカラ座の公演。指揮は、リッカルド・シャイー。

ヤナーチェク:シンフォニエッタ

ヤナーチェクが晩年になって作曲した、オーケストラのための、管弦楽曲。シンフォニエッタとは、小さめの交響曲、とでもいった意味だろうか。しかし、その内容は壮麗だ。

冒頭のトランペットを中心とした、金管楽器のよるファンファーレが印象的。一度聞いたら、二度と忘れられない。

初演は、1926年で、ヤナーチェクが亡くなる、2年前だった。

元々は、軍隊のために作曲したようで、冒頭のファンファーレは、その名残だという。

5つのパートから成り立っており、所々に、ヤナーチェクらしい、フォークロアな、美しいハーモニーが散りばめられている。

それぞれのパートには、当初、標題が付けられていた。いずれも、ヤナーチェクが住んでいたブルノという町の、城、修道院、広場、市役所など。

最後は、冒頭のファンファーレが繰り返され、終了する。

2012年、ヤナーチェクにゆかりの深い、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団のニューイヤーコンサートから。指揮者は、チェコ出身のイルジー・ビエロフラーヴェク。

ボッケリーニ:スターバト・マーテル

ルイジ・ボッケリーニが、1781年に作曲した、スターバト・マーテル。

このテーマでは、多くの作曲家が曲を作っているが、ボッケリーニの曲は、哀愁と憂いを帯びていて、そうした中でも、屈指の名曲と言っていいだろう。

ボッケリーニは、ハイドンとほぼ同時代の人物で、イタリア生まれだが、長くスペイン王家の宮廷音楽家だった。同じ時に、宮廷画家を勤めていたのが、ゴヤだった。

演奏は、アンサンブル・アウロラ。ソプラノはジェンマ・ベルタニョッリ。

このジェンマ・ベルタニョッリの歌が、とにかく素晴らしかった。

サン=サーンス:ヴァイオリン協奏曲第3番

サン・サーンスが、1880年に完成させた、3番目のヴァイオリン協奏曲。

有名なヴァイオリニスト、サラサーテに捧げられている。

ロマン主義を代表する、ヴァイオリン協奏曲と言われているが、同時に、華麗なフランス音楽の側面も持ち合わせており、バランスのとれた曲になっている。

第3楽章は、冒頭のカデンツァからの導入が聞き所。第1、2楽章とは全く違った、ダイナミックな展開になる。

2008年1月、ヴァイオリンは、ユリア・フィッシャー、マティアス・ピンチャー指揮、ユンゲ・ドイツ・フィルハーモニー管弦楽団の演奏。

2014年2月23日日曜日

リヒャルト・シュトラウス:オペラ『アラベラ』

リヒャルト・シュトラウスが、1929年から1932年にかけて作曲したオペラ。台本は、ウィーン世紀末を代表する作家、ホフマンスタール。

シュトラウスは、当初、『薔薇の騎士』のようなオペラを目指したが、ホフマンスタールの台本は、少し色合いが違った話だったため、両者の間には、完成までにギクシャクした関係があったという。

そのホフマンスタールは、このオペラの完成を見ることなく、1929年に亡くなってしまった。

ストーリーは、ウィーンの落ち目の伯爵家が、美しい娘を使って復活を願い、紆余曲折がありながら、最後は、男やもめのハンガリーの大地主と結ばれるというもの。

全体的な流れは、『薔薇の騎士』と似ているが、比べてしまうと、やはり『薔薇の騎士』の方が華やかな作品に仕上がっている。

第1幕と第2幕は、世紀末ウィーンの退廃的なウィーン貴族の生活が強調されて、やや興ざめするが、第3幕では、ある事件をきっかけに、一気に愛のテーマが全面に出て、シュトラウスの美しい音楽と相まって、感動的なフィナーレを迎える。

こまかくストーリーを見ていくと、さすが、ホスマンスタール。ウィーン貴族の実態がよく描けている。

主人公の伯爵の美しい娘、アラベラの妹、ズデンカは、いつも男の服装をしていて、自分が恋している男性からは、男と思われているが、この二人は最後には結ばれる。同性愛的な雰囲気が伺える。

落ち目の伯爵家のアラベラは、最後は、ハンガリーの大地主と結ばれるが、これは、オーストリア=ハンガリー帝国を象徴しているのだろう。

『薔薇の騎士』ほどの華やかさはないが、玄人好みのオペラ、といったところだろうか。

2012年5月のウィーン国立歌劇場での公演。指揮は、フランツ・ウェルザー=メスト。

2014年2月15日土曜日

ロッシーニ:オペラ『マティルデ・ディ・シャブラン』

ロッシーニが1821年に作曲した32作目のオペラ。若くして引退したロッシーニの作品の中では、湖上の美人、ランスへの旅などとともに、後期のものに含まれる。

女性嫌いで、粗暴な城主、コッラディーノが、美しい女性マティルデに心を奪われ、最後は、彼女の前に跪く、という、ロッシーニらしい、たわいのないストーリー。

ロッシーによる、場面場面に応じた素晴らしい音楽を、単純に楽しめる。

今から見れば、たわいのないストーリーだが、検閲制度の厳しい時代にあっては、どうしても、このような、当たり障りのない、恋愛もの、になってしまうのだろう。

最後に、暴君を跪かせたマティルデが、その勝利を高らかに歌い上げる。

”女性たちは、勝つために、支配するために生まれてきた!”

ある意味では、どんな政治劇よりも、過激で、真実を含んでいる内容、と言えるのかもしれない。

2012年、イタリアのペーザロでのロッシーニ・オペラ・フェスティバル2012での演奏。

コッラディーノ(テノール)役のフアン・ディエゴ・フローレスは、現在、その甘いマスクと抜群の歌唱力で、最も人気のあるテノール歌手の一人。

チャイコフスキー:オペラ『チェレヴィチキ』

チャイコフスキーが、1885年に作曲したオペラ。一度、1874年に鍛冶屋のヴァクーラとして完成させたオペラを、改作した。

チェレヴィチキとは、舞踏会で履く、豪華な靴のこと。幼なじみのオクサーナから、結婚の条件としてチェレヴィチキを求められたヴァクーラが、それを手に入れ、オクサーナと結婚する、というストーリー。

ゴーゴリの初期の作品、ウクライナ説話集『ディカーニカ近郷夜話』の中の『降誕祭の前夜』という話がベースになっている。

女性の母親が、魔女で、魔法を使い、村中の様々な男達を虜にしていく様子が楽しい。

第3幕では、エカテリーナ女王の宮殿で、美しいバレエと、コサックダンスが登場し、見る物を楽しませる。

第4幕の冒頭で、愛する恋人を待つオクサーナと、彼女の恋人の母親との二重唱の、哀愁を帯びたメロディーが、実に美しい。

文字通り、歌あり、踊りあり。ウクライナの農村の暮らしと、エカテリーナ女帝の宮殿の対比も面白く、エンターテイメントとしての出来が素晴らしい。

しかし、これまでは長く演じられず、知られざるオペラと言われていたという。

2009年11月の英国ロイヤルオペラの公演。

2014年2月10日月曜日

ストラヴィンスキー:バレエ音楽『ペトルーシュカ』

ストラヴィンスキーが、1910年から1911年にかけて作曲したバレエ音楽。はじめは、ピアノ用に構想していた曲だという。

1910年の火の鳥、1913年の春の祭典、という有名な2つの間に挟まれており、過激なその2作に比べると、大人しい音楽になっている。

物語は、魔術師の魔法で命を吹き込まれた、3つの人形。ペトルーシュカ、バレリーナ、ムーア人が、謝肉祭のお祭りで巻き起こす騒動を描いている。

第1部の中の、ロシアの踊り(Dansu Russe)が特に有名。

第3部のバレリーナの踊り(Danse de la Ballerine)のパートにも、印象的なメロディが登場する。

第4部の冒頭の、オーケストラが揃って奏でる音楽も、実に美しい。

主人公の3人の踊り以外にも、農夫やジプシーの踊りの部分もあり、それぞれの音楽が個性的で、オーケストレーションの巧みさと合わさり、聞く者を決して飽きさせない。

ストラヴィンスキーが、バレエ音楽の中で追求しようとしていたことが、よくわかる気がする。

1911年のオリジナル版と、ストラヴィンスキーが古典主義的な音楽を書くようになってからの1947年版がある。

ロリン・マゼール指揮、ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団による、ミュンヘンでの2012年9月の1911年版の演奏。

ラヴェル:ピアノ協奏曲

ラヴェルが、1929年から1931年にかけて作曲した、唯一のピアノ協奏曲。作品としては、最後から2番目となる作品。

第1楽章は、アレグラメンテ(明るく、楽しげに)。何とも不思議な出だしで、一気に聞く物の心を鷲掴みにする。

ジャズのような、ラヴェルの出身、バスクの民族音楽のような、音楽。

ジャズの音楽と、ハープの奏でる幻想的な音楽が交差する。

第2楽章は、アダージョ・アッサイ。雰囲気は一転して、静かな、哀愁に満ちた音楽が続く。

第3楽章は、プレスト。現代音楽らしい、慌ただしい音楽で、一気にフィナーレを迎える。

3つの楽章が、全く違った個性を見せ、魔術師といわれるラヴェルの魅力が詰まった作品。

ピアノはアリス=紗良・オット、ロリン・マゼール指揮、ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団の2012年9月のミュンヘンでの演奏。

フォーレ:組曲『ペレアスとメリザンド』

ガブリエル・フォーレが、1898年に作曲した、戯曲用の音楽。正確には、フォーレは、骨子だけを作曲し、オーケストレーションは、弟子に任せた。

その後、その中から、5つの曲を選んで、組曲として編成した。

4番目のシシリエンヌ(シチリア舞曲)が特に有名。フォーレは、この曲をチェロとピアノの曲としても使っている。

全編、ハープが効果的に使われ、中世の童話の世界を、物悲しい、幻想的な音楽で表現している。

『ペレアスとメリザンド』という物語は、メーテルリンクが書いた戯曲で、中世の架空の国、アルモンドを舞台とした、ペレアスとメリザンドという二人の男女の、悲しい恋の物語。

フォーレのみならず、ドビュッシー、シベリウス、シェーンベルグなどが音楽を作っている。音楽家の創作意欲をかき立てる側面を持っている物語なのだろう。

2012年9月、ロリン・マゼール指揮、ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団のミュンヘンでの演奏。

2014年2月9日日曜日

ショスタコーヴィッチ:交響曲第15番

ショスタコーヴィッチが、1971年に作曲した最後の交響曲。

過去の自分の曲や、ロッシーニのウィリアム・テル、ハイドンの最後の交響曲『ロンドン』、ワーグナーのリングなど、他人の曲を、多く引用している。

第1楽章は、アレグレット。何とも言えない、この慌ただしい音楽は、いかにもショスタコーヴィッチらしい。

第2楽章は、アダージョからラルゴ。第1楽章とはうって変わって、沈鬱な印象で始まる。チェロの物悲しいソロが続く。そして、トランペットが悲しい音楽を奏でる。最後の方は、まるで消え入るような音楽。

第3楽章は、再びアレグレットだが、第1楽章とは、趣は大きく異なる。クラリネットの響きで、ややコミカルに始まる。

第4楽章は、アダージョからアレグレット。壮麗なオーケストレーションもあるが、最後のトライアングルや木琴の規則正しい、しかし寂しい、小さな音で、締めくくられる。

とにかく、複雑な、引用に満ちていて、ある意味で、ショスタコーヴィッチらしい交響曲。もしかしたら、実際の音楽を聴くよりも、楽譜を読んでいる方が、楽しめる交響曲なのかもしれない。

シャルル・デゥトワ指揮、NHK交響楽団の2013年11月の演奏。

ストラヴィンスキー:バレエ音楽『カルタ遊び』

ストラヴィンスキーが、アメリカン・バレエからの依頼で、1936年に作曲したバレエ用の音楽。

翌年の1937年に、ニューヨークのメトロポリタン歌劇場で自らの指揮で初演された。バレエの振り付けは、バランシンが行った。

ポーカーの三番勝負が行われるバレエで、音楽も3つのパート(ラウンド)から成り立っている。火の鳥のような前衛的な音楽ではなく、オーソドックスな内容の音楽。当時、ストラヴィンスキーは、古典的な音楽を中心に作曲していた。

各ラウンドの冒頭には、カードを配る共通の音楽が演奏される。

最後は、ハートとスペードが争い、ハートが勝利する、というストーリーになっている。

ダンサーは、トランプ1枚1枚に扮して、踊りを踊っていく。

シャルル・デゥトワ指揮、NHK交響楽団の2013年11月の演奏。

ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲第2番

ショスタコーヴィチが、ウクライナのヴァイオリニスト、ダヴィット・オイストラフの関連のお祝いに、1967年に作曲した、2番目のヴァイオリン協奏曲。

すでに、スターリンは亡くなっており、ショスタコーヴィチは、かなり自由に曲をかける状況になっていた。

第1楽章は、モデラート。出だしこそ、オーケストラが活躍するが、次第に、ヴァイオリンのソナタのような雰囲気になっていく。ダークな感じだが、しかし、メロディは物悲しく、美しい。

第2楽章は、アダージョ。第1楽章の雰囲気が、そのまま引き継がれ、ますますダークになっていく。果たして、これが還暦を記念する曲なのだろうか?

途中の、ヴァイオリンとホルンの掛け合いが面白い。

第3楽章は、アダージョ・アレグロ。長いカデンツァの後、ようやくオーケストラが合流し、この曲が協奏曲であった、ということを思い出させてくれる。

ヴァイオリンは、諏訪内晶子。トゥガン・ソヒエフ指揮、NHK交響楽団による、2013年11月の演奏。

リャードフ:交響詩『魔の湖』

ロシアの音楽家、アナトーリ・リャードフが、1908年か1909年に完成させた曲。

リャードフは、リムスキー=コルサコフに学び、将来を嘱望されていた。オペラ(シンデレラ)に取り組んだが、完成できず、その時のスケッチを晩年に短い曲にまとめたもの。

幻想的な音楽で、題名にピッタリ。

トゥガン・ソヒエフ指揮、NHK交響楽団による、2013年11月の演奏。

2014年1月28日火曜日

バルトーク:バレエ『中国の不思議な役人』(組曲版)

バルトークが、1918年から1924年にかけて作曲した、パントマイムのための曲。バレエのための音楽として紹介されることが多い。

パントマイムのストーリーは、不良少年たちが、少女をおとりに、中国の不思議な役人風の男を、殺して金を巻き上げようとするが、その男がなかなか死なない、というもの。

いきなり、不協和音のノイジーな音楽で始まり、不安をかき立てるような、いかにも現代音楽、という曲で構成されている。

サイモン・ラトル指揮、ベルリンフィルの2008年6月のエクサンプロヴァンス音楽祭での演奏。

ドヴォルザーク:ピアノ協奏曲

1876年に作曲された、ドヴォルザーク唯一のピアノ協奏曲。35歳の若き頃の作品で、荒削りな印象がある。

第1楽章は、独特な主題となるメロディーが特徴。ピアノとオーケストラが、その主題を互いに引き合う、といった感じの楽章。ドヴォルザークのオーケストレーションが冴えを魅せる。

第2楽章は、静かに始まる。途中で、ゴッドファーザーのテーマのようなメロディが登場する。

第3楽章は、軽快でリズミカルな、民族音楽風の出だしで始まる。様々なメロディーが登場し、やや混乱気味でもあるが、基本的な流れは同じ。

ピアノはアンドラーシュ・シフ。サイモン・ラトル指揮、ベルリンフィルの2008年6月のエクサンプロヴァンス音楽祭の演奏。

ブラームス:交響曲第3番

1883年の5月から10月にかけて作曲されたといわれる、ブラームスの3番目の交響曲。

第1楽章は、心にたまっていた感情が、一気に涌き上がるような、印象的なメロディーで始まる。基調としては、全体的に穏やかな楽調で、田園風景が思い浮かぶようだ。

第2楽章も、引き続き穏やかな基調が続く。ブラームス独特の、重厚な弦楽の響きが実に美しい。

そして、第3楽章では、一気に雰囲気が変わり、哀愁に満ちた、悲しげなメロディーで始まる。この世の中で、最も悲しみを誘う音楽のひとつ。

この音楽を本当に味わうには、ある程度の人生の経験を、経なければならないのではないか、と感じさせる。

第4楽章は、当初は、第3楽章の雰囲気を引きずりながら、次第に、壮大なクライマックスに盛り上がっていく。このスムーズな曲調の変化は、違和感が全くなく、スムーズで、さすが、ブラームス。

そして、最後は、再び穏やかな音楽に戻り、静かに、余韻を噛み締めるように終わりを迎える。

40分弱の短い交響曲だが、第1番や第2番に比べて、一段と成熟した交響曲に仕上がっている。

サイモン・ラトル指揮、ベルリンフィルによる、2008年6月のエクサンプロヴァンス音楽祭での演奏。

2014年1月4日土曜日

バッハ:クリスマス・オラトリオ

バッハが、1734年にクリスマス用に作曲したオラトリオ。

クリスマスから、1月6日までの間の6日間に演奏されるように、6つの部分、全64曲のカンタータから成り立っている。

歌詞の内容は、新約聖書の福音書などから採られている。

バッハは、このオラトリオを作曲したときは、現代のような独立した音楽家ではなく、教会で音楽監督として働いていた。

今日では、コンサートホールや大教会で、一流の音楽家によって演奏されるが、当時はもっと小規模な形で演奏されたのだろう。

2011年12月、デレスデンのフラウエン教会での演奏。指揮、クリスティアン・ティーレマン。演奏、シュターツカペレ・ドレスデンとドレスデン・フラウエン教会室内合唱団。

ヴェルディ:オペラ『オテロ』

ヴェルディが、1886年に完成させた、シェイクスピア原作のオペラ。

ヴェルディは、すでに晩年で、作曲への意欲を失いかけていたが、依頼者の巧みな誘いに、ついにこの曲を完成させたという。

我々は、この依頼者、リコルディに感謝すべきだろう。

第1幕の冒頭の嵐のシーンから、いきなりクライマックスを迎える。

オテロ、妻のデスデーモナ、イヤーゴ、カッシオの全ての主要なキャストが登場し、ダイナミックで緊迫感あふれるコーラスが、このオペラの不安な幕開けを告げる。

誰もが知っているストーリーと結末。だからこそ、この冒頭のシーンが活きる。観客は、この時点で結末を意識して、その後の展開をゆっくり楽しんでいくことになる。

実によくできているオペラだ。

2008年のザルツブルグ音楽祭から。指揮はリッカルド・ムーティ。